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門限 〜箱入り娘の戯言〜

私は両親に、それはもう大切に大切に育てられた。

当時はそれが当たり前だと思っていたので気づかなかったけれど、大人になってから振り返ると、結構な箱入り娘だったのだと気づく。高校生の頃の門限は18時。部活が終わってすぐに家に帰らなければいけない時間だった。部活がない日は、友達とマクドナルドやサーティーワンに行く余裕はあったけれど、いつも私が最初に帰らなければならなかった。

当時は(まだ男だったから)姉には門限がなかった。時間に対してうるさく言われない姉が羨ましくて何度か反発したことはあるけれど、「女の子だから。」と言われた。結局高校生の間、門限は変わらなかった。

高校3年生の夏、中学時代の同級生だったギャル風の友達と遊びに行った。何も悪いことはしていない。その子が男の子を2人呼んで4人で遊んでいただけだし、学校帰りの17時から2時間の、ただのカラオケだ。

19時に携帯に何度も電話がかかってきた。そして父親から「今すぐ帰ってこなければ家に入れない。絶縁する。」とまで言われて慌てて家に帰った。その日、父は私に1週間の外出禁止令を出した。

その頃は反抗期だったこともあり、言うことを聞く気もなかった私は、次の日(祝日だったような)も同じ女友達と遊びに行った。流石に夜までは気が引けたため、まだ明るいうちに家に帰ったのだが、いつもは仕事で昼間はいないはずの父親が家にいた。

父親は怒るとすぐに大声で怒鳴る人だった。そんな父が、怒るわけでもなく静かに言った。「もう、いい。」

自分の中で「しまった」という嫌な気持ちが残り、なんとなく気まずくなった。そこから門限を破ったことはない。20歳までは(流石に大学生になってから20時になったけれど)親のルールに従い門限は守っていた。

20歳すぎると、あれだけ門限門限とうるさかった親が嘘のように何にも言わなくなった。お酒も飲めるようになり、その開放感も合わせて、私は弾けた。大学近くで単身生活をし始めた友達の家に7、8人で集まり酒盛りし、そのまま雑魚寝して次の日二日酔いで大学に行く日々を繰り返した。家に帰るのはシャワーと着替えのためだけ。それも数週間続けると、案外飽きるものである。飽きてからは飲み会をしても、日付は超えても家に帰るようになった。


今、30歳を越えた私には、中学生の息子がいる。彼には門限を決めていない。

でも、学校が終わってから帰りが遅いと心配になる。友達と出かける際には行き先と、目的地に到着した時、そこから帰る時に必ず連絡を入れさせている。

連絡なく遅くなると注意する。息子は悪びれもせずに、「あー、うん。」と分かったのか分かっていないのか、とりあえず返事をする。

何をしているのか、疑っているわけではない。息子を信用していないわけではない。ただ、心配なのだ。事故や事件に巻き込まれてないか、自転車で転んではいないか。無事に着けたのか。

あの時、煩わしいと思っていた門限も言葉も、全ては親の愛なのだろう。両親もただ、心配だっただけなのだ。あの時はわからなかった重さが、今になって、親になってみて、初めてわかった。


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