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負けヒロインがくれた勇気


告白を受け入れてもらえることを勝ち、受け入れてもらえないことを負けと仮定すると世の中には勝ちヒロイン物語が溢れすぎている。

世の中には勝ちヒロイン物語が多すぎて成功しなきゃという強迫観念から人に気持ちを伝えることが怖くなってしまっていた。

しかし『負けヒロインが多すぎる!』は負けヒロインとその後をしっかりと描くことで成功するかどうかは分からなくても、それ以前に自分ができること、特に気持ちを伝えることが大切なんじゃないかと思わせてくれたのでとても勇気をもらえた。

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振り返ってみれば告白することがない人生だった。それは告白の必要性がなかったわけではない。告白する勇気がなかったのだ。臆病なだけなのに「別に好きではないから」「今の関係を壊したくないから」という言い訳で告白する勇気の欠如から目を背けていた。

学生時代好きになった人がいた。とても仲が良くて本当はお付き合いしたいと思っていたのに、お得意の「今の関係を壊したくないから」という言い訳で告白から逃げていた。

たまたま教室で二人きりになったあの日、私は告白できなかった。いつも通りに話をして、笑い合って、またねとさよならをした。告白するにはまたとない幸運な機会だった。

心の底には告白できなかった後悔としぼんだ勇気が同居していたのにそれから目を背けていた。「別に付き合いたかったわけではない」「今の関係で満足している」と。

それから時が経ち、別の人を好きになった。その人からたまたま告白されてお付き合いすることになった。この時も付き合いたいと心の底では思っていたのに告白からは逃げていた。

相手が勇気を出して告白してくれたおかげでお付き合いすることができた。その時はそんなことさえ考えもしなかった。本当は気づいていたのかもしれないが、告白できない自分の弱さを直視したくなかったのだと思う。

好きな人が自分を好きでいてくれるなんて奇跡はそうそう起こらない。その奇跡が数年続いたが結局その人とはお別れすることになった。

数年寄り添った人への気持ちの区切りの付け方はとても難しかった。結局時間が経ってその人との思い出が薄れてきたことで気持ちが変化していった。私はここでも自分の意志や行動を持って自分の気持ちに区切りをつけることができなかった。

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それから時間が経ち、別の人のことがとても気になっている。この人への気持ちにどう名前をつけていいか分からずに悶々としていた時に『負けヒロインが多すぎる!』という作品に出会った。

この作品は振られた人にスポットを当てている作品であり、告白すらできない私にとっては三人のヒロインがとても眩しかった。この作品は振られた人を嘲笑うような表現がなく、人に気持ちを伝えることの大切さとその勇気の偉大さを描いている。

最初は恋愛なんて私には関係ないと達観している温水くんに自己投影をしていたが、段々と小鞠ちゃんに感情移入していった。小鞠ちゃんの「好きになってよかった」というセリフが一番心に残っている。

部長が小鞠ちゃんを受け止めてくれたという点も大きいと思うのだが、そもそも自分のダメなところをダメだからと自己否定に走るのではなくそれを分かった上で相手に委ねられる強さがとても眩しかった。

「好きになってよかった」と言えるのはダメなところを受け止めてもらえただけではなくて自分自身も受け入れられたからなんだと思う。

小鞠ちゃんの自分の行動によって気持ちにけじめをつけようとする姿はとても強くて眩しかった。好きだった人を覚えていると辛いので忘れたいけど、忘れることで自分の中でその人の存在が薄くなっていくため寂しいという気持ちがとても共感できた。

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最近は、私と関わるとあなたに迷惑をかけてしまっているという加害妄想と傷つくことへの恐れのせいで深い人間関係を築くことから逃げていた。しかし『負けヒロインが多すぎる!』のおかげでこの気持ちに区切りをつけて前に進めそう。

私の言動や行動があなたにとって迷惑をかけていたらと考えすぎて何もできていなかったけれど、迷惑かどうかは相手が決めることだから相手のことを精一杯考えた上での言葉や行動なら過度に自分を卑下せずに素直に差し出してもいいのかなと思えてきた。

私たちは相手と分かりあうために話をするのだろう。話をしなければ相手のことを推測でしか理解できなくなってしまうから。伝えないまま勘違いされるよりは少しの勇気を持って伝えた方が気持ちにも関係にも区切りをつけて前に進めるんじゃないか、その少しの勇気を『負けヒロインが多すぎる!』は私にくれた。

気になっている人ときちんと話をしようと決意した。私の気持ちを伝えようと決意した。



私、負けヒロインになってくるよ!




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レオン
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