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 以下は、脱ステロイドを推奨する藤澤重樹医師による『9割の医者が知らない正しいアトピーの治し方』という本に書かれている内容です。

『ステロイドが一般の患者さんに使われ始めたのは1954年です。その頃、アトピーは子どもの病気であり、小学校に上がるまでには、その多くが自然に治っていました。成人のアトピー患者に至っては、ゼロだったわけではありませんが、ごくごくわずかに見られる程度でした』
 
『1940年、ニューヨーク大学皮膚科教授のサルツバーガー氏は、「アトピーは20歳以降には自然に治る病気」と論述しています。1946年にはアメリカでもっともメジャーな総合病院のメイヨー・クリニックの皮膚科部長のノーリンド氏が「35歳以降のアトピーの症例は稀である」と論文に記載しています』

 上記にあるサルツバーガーやノーリンドの論述は、ぼくが先に示した論文『The Natural History of Atopic Dermatitis.A20-Year Follow-Up Study』からのものと思われます。『9割の医者が知らない正しいアトピーの治し方』の参考論文・文献欄にこの論文のタイトルが書かれているためおそらく間違いありません。

 実際に、論文『The Natural History of ~』にはサルツバーガーやノーリンドの論述について以下のように書かれています(日本語訳は筆者が付記、以降同様)。

■Sulzberger mentioned spontaneous healing after the age of 20 years.
⇒ サルツバーガーは20歳以上で自然治癒することを述べた。
 
■Norrlind in his monograph on Besnier's prurigo stated that atopic dermatitis is rare after the age of 35 years; only 6% of his patients had the disease after this age.
⇒ ノーリンドはベニエ痒疹(※)に関する研究論文において、アトピー性皮膚炎は35歳で稀であると述べた。彼の患者の6%だけが、35歳以降もアトピーだった。
 
※アトピーという病名が名付けられる以前の呼び名。 ※は筆者が付記。

 要するに彼らは、「アトピーは大人になるまでに治る疾患」ということを唱えているわけですが、上記2つの論述は、『一般に、アトピー性皮膚炎の予後(経過)は曖昧な傾向がある』ということを説明するために列挙されている「さまざまな論述(さまざまな専門家の見解)」の中の一部に過ぎません。

 列挙されている「さまざまな論述」中には、実際には以下のようにサルツバーガーやノーリンドとは「異なる見解」もあるのです。

■Vowles and associates reported follow-up for 13 to 22 years in 84 cases of infantile eczema. They stated that 55% of the patients still had active disease at the age of 13 years and that 18% to 55% still had active disease at the age of 20 years.
⇒ Vowlesと彼の仲間は、乳児湿疹(※)84例を13〜22年間フォローアップし、その結果を報告。患者の55%が13歳でまだ活動的なアトピーを有しており、18〜55%は20歳で活動的なアトピーを有していると述べた。
 
■Meenan carefully followed up 42 patients who had had infantile eczema for 15 to 28 years. He stated that the disease of 58% cleared by the age of 8 years; that of 11%, between the ages of 15 to 21, and that of 31% had not cleared by the age of 28 years.
⇒ Meenanは乳児湿疹(※)を患っていた42人を15〜28年間注意深く追跡した。58%の人が8歳までに治り、11%は15歳から21歳に治り、31%の人は28歳でも治らなかったと述べた。
 
※乳児湿疹について、現在、一般的に「アトピー性皮膚炎との見分けは難しい」「乳児湿疹≒アトピー性皮膚炎である」「慢性化する乳児湿疹はアトピー性皮膚炎である」などいくつかの解釈を目にしますが、ここでは「乳児湿疹=アトピー性皮膚炎」と解釈して差し支えないと思われます。※は筆者が付記。

 上記は、「大人になってもアトピーが治らない人が相当数いる」ことを意味する論述です。このように、アトピーの予後(経過)に関する専門家の見解が曖昧かつ一致しない中で、「真実はどうなのか」を明らかにするためにあらためて調査(フォローアップアンケート調査)が行われたのですが、調査結果以前に、そもそも調査の対象となった方の中に、たくさんの大人の患者、それも入院を要するほど重症化した患者がいたのです。ステロイド外用薬が発明される前の時代に、です。

 藤澤医師はそのことには一切触れず、また、列挙されている論述の中からサルツバーガーとノーリンドのものだけを切り取って引用いるのですから、何が何でもアトピーを「昔は大人になるまでに治る疾患であった」ことに、「大人のアトピー=ステロイド外用薬の薬害である」ことにしたいのではと勘ぐってしまいます。

 以上のことから、『9割の医者が知らない正しいアトピーの治し方』という本のタイトルも含め、藤澤医師の主張は少々、暴論のように思えます・・・

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