エンドロール
「エンドロールは最後まで観る?」
「エンドロール?」
そう聞き返した。
「ちゃんとは見ないけど」
正直に答える。
「私、エンドロールがすごく好きなの」
部屋はまだ洗っていない食器に水滴が落ちる音が聞こえるくらい静かだった。
「私はどの映画も絶対エンドロールまで観るの」
「この映画にはとんでもないほどの人が力を出し合って私たちに届けられてる」
「ねぇ」
と彼女は続ける。
「私のことちゃんと理解してる?」
時間が止まっているような気がした。
「どれくらい?」
ピンチの時は女性の方がどっしり構えている、と嫌いな評論家気取りのタレントが言っていた。
「みんなに嫌われないように私は必死なの」
声は平坦なままだった。
「苦手な化粧も覚えた。笑顔も普段より多くして、本当は興味のないこともあるように振る舞う」
君は、と彼女は言う。
「君はわかってくれると思ってたんだけどな」
ようやく彼女は笑う。
声は。震えていたと思う。
「君は表面上と付き合えている自分が好きなんだと思うよ」
そうって彼女は部屋を去った。
その後ろ姿は夕日で照らされ綺麗で残酷な結末のエンドロールだった。