【毎週ショートショートnote】『非情怪談』
「なにこれ? あんたやる気あるの? もっと真面目にやってって言ってるよね? ただでさえ再生数落ちてきてるんだよ? 私たちのチャンネルがどうなってもいいっていうの!?」
またミオのヒスが始まった。
こうなると私には止めることができない。
「人の死期が視える目。って……ほんとありきたりすぎだからっ!」
そういってパソコンを床に叩きつけるミオ。さらに足で踏みつける。何度も、何度も。なんて非情なんだ。一番怖いのは『人間』というのはよく言ったものだ。
「夜9時までに違う話書いておいて!」
そう言い残し、部屋を去るミオ。
その背中を呼び止めようとして私は思い止まった。
『人の死期が視える目』
これは私が本当に持っている能力だ。たとえ私が9時までに違う話を書き終えたとしても、ミオがそれを見ることはもうない。
私はそれを彼女に伝えることもできたし、伝えれば避けることもできただろう。
だけど私は教えなかった。
なぜなら人間は、実に非情な生き物だからだ。(425字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
*そうなんです。やっぱりヒトが一番怖いんです。
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