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【毎週ショートショートnote】『黒幕甲子園』

 ある小説投稿サイトで開催された『黒幕甲子園』。
 そこに投稿するために書いた私の小説を読み終えた彗李すいりは、神妙な面持ちで言った。

「先生、僕思ったんですけど」
「なに?」
「これって結局、黒幕だった犯人は黒幕ではなく、物語を書いた先生こそが真の黒幕だった。というメタ的なオチってことですよね?」
「うん。犯人は最後、自分が小説の中の一員であることに気づく。犯人はあくまでも作られたストーリー通りに動いていた人間だった。だから、作者の私が黒幕である。というオチだよ」
「本当にそうでしょうか?」
「というと?」
「だってこれ、読む人間がいなければ犯人は人を殺してないですよね?」
「え?」
 確かに…と言いそうになりすぐに否定する。
「いやいや、そもそも私が書かなければ、物語自体が存在してないからね?」
「でも先生、いつも言ってますよね? 小説は読まれてこそ完結する。って…僕が読んだからこそ、犯人は罪を犯した…。つまり読者の僕こそがこの小説の真の黒幕なんです」(425字)


たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
*へりくつ大好きなんで、彗李すいりくんにもっとへりくつをしゃべらせたかったんですが、文字数的に断念。
 しかし自分で書きながら、どちらが真の黒幕か分からなくなりました。

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