【毎週ショートショート裏note】『新説なピン札』
「えー、この肖像画が描かれた手のひらサイズの皴1つない綺麗な紙。これはかつて通貨として使われていたのではないかと考えます!」
数年前出土された謎の紙。数千年前の地球で使われていたことは判明しているが、その用途については様々な説が唱えられていた。
おもちゃ説
絵画説
火をつけるための道具説
そして今日提唱された新説が貨幣説である。
「いいですか、みなさん。この数字を見てください。これが通貨の単位だと考えられます。数値が高いものほど、高い価値があるのです」
会場内は苦笑に包まれる。
学者は自身の説を熱心に説明しているが、そんな紙切に価値がつくわけがないと、呆れているものが多いようだ。
すべての説明を終えた後、学者に近づく1人の若者の姿があった。
「僕はあなたの説に心惹かれました。あなたの著書を買わせてください」
若者は学者の本を受け取ると、嬉しそうに会場を後にした。
残された学者の手には、丸くて綺麗な価値の高い石ころが握られていた。(420字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
*私は火をつけるための道具説を推しています。
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