2016.4.1 法と料理学会が発足
エイプリル・フール・ニュース04
この年のエイプリル・フール・ニュースは、法と料理に関する言及が目についたことで、思いついたものです。まず、M.マーガレット・マッキューン「料理の曖昧さ:メニュー解読のためのカノンに基づくアプローチ」 M. Margaret McKeown, Culinary Ambiguity:A Canonical Approach to Deciphering Menus, 51Harv. J. on Legis. 227, 2014という論文です。次に、森田修教授の「法と料理」法学教室422号1頁(巻頭言)があり、さらに、朝日新聞平成27年11月29日朝刊3面に掲載された長谷部恭男早稲田大学教授と杉田敦法政大学教授との対談で、長谷部教授が「憲法に限らず、法律の条文はレストランのメニューと同じで、解釈しなくても意味がわかるというのが原則です。」と述べているということもありました。そんなことを考えていると、そういえば、国会はthe Dietだなあと思い出したり、アメリカの立法に関する論文を読んでいるとsausageという言葉が出てくることがあるので、どういうことかなと思っていたら、”Laws are like sausages, which are better not to see them made." とビスマルク(一説にはマーク・トェイン)の言葉があるというのを見つけたりといったことがありました。もっとも、"Quote... Misquote" by Fred R. Shapiro in The New York Times (21 July 2008)によれば、法とソーセージについてのこのような言及は、University Chronicle. University of Michigan (27 March 1869)においてJohn Godfrey Saxeの言葉として出ていたものが最初で、ビスマルクの言葉ではないということです(英語版Wikiquote )。
鴨南蛮については、公正取引員会が鴨南蛮に鴨肉ではなく鶏肉を使っていることを問題としたことがあって、その時にテレビに出てきたお蕎麦屋さんが「たぬきにたぬきは入ってないし、きつねにきつねは入っていない」と言っていたのは憶えているのですが、具体的にどういうことだったのかは、調べたけれどよくわかりませんでした。
りょうぶ(令法)という木は、本当にあります。救荒植物であり、法令で植えるよう定められていたので、令法となったという語源についての話もあるようです。りょうぶは、私は皇居東御苑や八ヶ岳高原ホテルの庭などで見た記憶があります。
また、John F. Manning & Matthew Stephenson, Legislation & Reguration and Reform of the First Year, Journal of Legal Education, Vol. 65, No. 1, 45 (2015) ,at 45では、ハーヴァード・ロー・スクールでのLegislation and Regulationという科目をLeg-Regと学生が呼ぶということが紹介されていますが、この論文を含む同誌の特集では他の論文でもLeg-Regという略称を用いているので、アメリカではそれなりに定着しているようです。この点についてもヒントにしています。
それから、高利貸しと氷菓子については、野田秀樹さんの夢の遊眠社時代の芝居でのセリフにあったという記憶があるのですが、具体的な作品名とかセリフとかは忘れてしまっています。すみません。
ということで、今回も実際の人物や組織、団体とは一切関係がありません。しかし、この前説は、長すぎますね。麺類なら伸びちゃいます。
法と料理学会が発足
2016年4月1日
法と料理学会が本日創立総会を開き、正式に発足する。このような学会が作られるのは世界初ということで、関係者は熱気を帯びている。
法と料理という一見結びつきそうにもないものがどうしてこのように研究者を引き付けるのか。この学会の設立準備委員の一人である関阪大学の夏芽玖教授は、「法律はメニューのように分かりやすくあるべきだという、法律家のメニューに対する憧れがあるのです。」と指摘する。「だから、アメリカの連邦高裁判事のカニクリー・ムコロッケさんが書いた「法とメニュー」という論文がセンセーショナルだったわけです。この論文は、メニューにも解釈の余地があり、連邦最高裁判事のメニューについての解釈態度が、そのイデオロギーや立場よりもその判断に影響を与えていることを示すというものでしたが、この論文に刺激されて法学者が料理に目を向けるようになったのです。そして、その結果、研究するにたる豊かな食材を掘り当てたのです。」
我が国に世界で最初にこの学会ができたのにも理由があるという。天應大学の栃尾トメ教授によると、国会の公式の英訳がDietであるということや食育基本法第19条に「親子で参加する料理教室」ということばが出てくるなど、我が国は法と料理が密接に関連しているという下地があるからということである。この点、法と料理について熱心なフランスでも同様の動きがあるが、我が国が一歩先んじたことになる。
一方で、料理人からも法についての問題提起がなされている。たとえば、蕎麦屋を営む藪二八さんは「きつねにはきつねが入ってないし、たぬきにはたぬきが入っていないのに、鴨南蛮に鶏肉を使うと法律上問題となるのはなぜか」と問題提起をしている。
このように関係者の期待が高まっている学会だが、昨晩は関係者のレセプションが開かれた。レセプションでは、令法の蜂蜜を使ったスイーツと蜂蜜そのものがふるまわれ、出席者の評判を呼んでいた。外国人参加者に、この花の名前について、令はregulation、法はlegislationだと説明したところ、この蜂蜜をreg-leg honeyと呼ぶ参加者が出て、大いに盛り上がった。これを商標登録しようという声もあったが、アールとエルの発音の問題があり、我が国では困難だとする見方もある。
今日は、まず、ゲストとして招かれたフランクフルト大学のウインナー教授による講演「法律とソーセージ―ビスマルクは正しいか―」で幕を開ける。これは、「法律とソーセージは似ている。どっちも作るところを見ない方がいい」というビスマルク(一説には,マーク・トゥエインともいわれる)の言葉について、世界各国のソーセージ工場と議会を訪ねて実証的に研究した成果を発表するというものらしい。このほか、萬寿羽大学の田部泰教授の「不健康な食事をする権利―うまいものをおいしく食べるとまずいことになる人たちのために」、笊友理大学の双木剛也准教授の「高利貸しと氷菓子―利息制限法の氷菓への適用可能性」などの興味深い報告が並ぶ。また、老舗料亭山陰庖盛の佐藤俊夫料理長による「令法飯のおいしい炊き方」の講演もある。
今後の学会の動向が注目される。
(越 杏)