譲れない価値観の違いがわかるとき。
5年前の今日、震災が起きた。
それをきっかけに大切なものに気付いて、結婚を決めたカップルは少なくない。
逆に、お互いの価値観の違いに気付いて離婚を決めたカップルもまた、少なくなかった。
普段は知る機会のない、心の奥底に眠っていた価値観。
そんな価値観の違いは、それぞれの人生観の根っこみたいな、揺るぎないもののような気がする。
そこが大きくずれてしまっていたら、その溝を埋めるのはなかなか難しいのではないだろうか。
5年前の今日、私には半同棲中の彼がいた。
帰宅途中で偶然にも一緒になり、二人で私の家まで歩いて帰った。
帰宅後に彼は「心細いから今日はそばにいて欲しい」「出掛けるのはいいけれど、出来るだけ早く帰ってきてほしい」という私を、地震の影響で崩れた本や、水槽から溢れた水で荒れた部屋に一人残して、自分の家の確認と近所の知り合いの元へ顔を出すため、と言って出掛けて行った。
彼は結局そのままその知り合いと飲みに行き、朝方にかなり酔っぱらった状態で帰宅した。
私は繋がらない携帯を握りしめ、余震の中ですごく心細くて全く眠れない夜を過ごした。
そのときのことは彼と別れた直接の原因ではなかったけれど、今思えばその辺りから少しずつ、価値観の違いを感じるようになっていったのかもしれない。
普段は見えなかった心の奥底の価値観の違いが、顔を出した一日だったような気がする。
きっと、あの真っ暗だったひとりぼっちの夜に、心は擦れ違い始めたんだ。
普段は表に出てこないような価値観だからこそ、こういう機会にきちんと話しておくといいのかもしれない。
自分にとって大切なもの。
譲れない何か。
有事のときに、自分が何を守ろうとするのかを。
お互いのそんな価値観にズレがなければ、きっとその他の価値観なんて譲り合っていくらでもうまくやっていけるのではないか、という気もする。
まぁきっと、現実はそんなに簡単なものではないのだけれど。