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遠距離恋愛ができない理由

遠距離恋愛ができる人を無条件に尊敬してしまうくらい、私は遠距離恋愛に向いていないと思う。

極度の寂しがり屋で、会いたいときにすぐに会えない物理的な距離感に負けてしまうからなのかもしれない。
きっと、会えなくて寂しいときに、近くにいる他の誰かに優しくされたら、コロッと簡単にそちらに向かって転がってしまう気がする。

かつて、あと一歩で付き合うところまで来ていた人に、半年間待っていて欲しいと言われたことがある。

彼はスペインで料理の修行中で、日本にスペイン人の友達を連れての一時帰国中だった。
そんな彼と、私は傷心の一人旅に出た沖縄の離島で出会ってしまった。
連絡先も交換せずに翌朝には別々の島へ。

しかし、たまたま帰りの飛行機で一緒になり、連絡先を交換。
数日後に東京で再会する約束をした。
そんな出会いからはじまって、彼がスペインに戻る頃にはお互い言葉にはしないけれど、惹かれ合う状態になっていた。

そこからなんとなく曖昧な関係のまま、時差がある中でお互いの日常を文通のようにメールでやりとりする期間数ヵ月を経て、再度彼の日本帰国時に再会を果たした。
彼は一週間程度の日本滞在期間のほとんどを、私と過ごした。
そして、スペインに戻る前に「半年後には日本に戻るから、待っていてくれないかな?」と言う、遠回しの告白のような言葉を私に投げ掛けた。

そのときは確か4月の終わり頃で、半年後は秋の自分の誕生月だった。

指折り数えてその時期を確かめ、その期間を思うと、そのときの私にはあまりにも長く感じられて、その間会えないことが確定している彼を想い続ける自信がなかった。
不確実な口先だけの約束をしたくない真っ直ぐな私は「半年待てるかどうか、分からないな」とそのときの素直な気持ちを彼に伝えた。
彼はそんな私の気持ちを理解して受け止めて、半年後も同じ気持ちでいられたらいいね、と言うような言葉を残してスペインに戻っていった。

そこからも何度か、近況報告を文通のようなメールで交わした。

半年後、彼が日本に戻るころ。
私の隣には、別の男性がいた。
当時まだ20代だった私には、半年と言う期間は長くて、スペインはあまりにも遠過ぎた。

会いたいときにすぐに会える人。
文字だけでなくて、顔を見て、触れることができる人。
寂しいときや不安なときに、大丈夫だよって、しっかりと抱き締めてくれる人。

メールや電話や手紙では乗り越えられない、寂しさ。
寂しさに弱い私には、やっぱり遠距離恋愛は難しい気がする。
ただ、それを乗り越えられるくらい愛せる人に、まだ出会えていないだけなのかもしれないが。

あのとき、半年後の彼の帰国を待てていたとしたら。
そんなことを今でもたまに、想像してしまう。
だから、私は未だにスペインには少しだけ特別な感情を抱いていたりする。

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