【遊戯王】相剣電脳堺のすすめ
はじめに
この記事では、電脳堺に相剣を組み込んだ相剣電脳堺デッキについて紹介します。
相剣電脳堺は前回紹介した植物族デッキと同じく、構築しがいのあるデッキです。植物族デッキと違う点は、展開ルートがいくつもあり、かつ途中のドロー次第で最適な展開が変わってくるところで、展開ルートの開拓や座学をしながらデッキ調整しなければいけない難しさがあります。
純構築の電脳堺はテンプレートが完成されており、調整の余地がほとんどないデッキなのですが、相剣と組み合わせることで構築と戦略の幅が広がり、調整の余地が出てきます。また、相剣電脳堺は極めて高いデッキパワーを持つにもかかわらず、使い手が少ないため、考察記事などがあまり充実していません。まだまだ開拓の余地があるので、デッキ調整が好きなデュエリストにとっては腕が鳴るタイプのデッキだと思います。
これまでにない構築の相剣電脳堺を紹介していきます。
各テーマについての解説
ここからは相剣と電脳堺の特長などについて、個別に解説していきます。既にご存じの方は飛ばしていただいて差し支えありません。
相剣
実質的な1枚初動からレベル8, 10シンクロ(以降、シンクロをSと表記)をする幻竜族テーマです。1枚でレベル8Sに繋げられる上、S素材として墓地に送られた場合にドローができる莫邪や、相剣カードのサーチと次のターン以降の妨害を兼ね備えるレベル8Sの赤霄など、手数は少ないものの個々のカードバリューが異常に高いのが特徴です。
一見持久戦が強いように思えますが、龍淵でレベル10Sを出すためには相剣か幻竜族を手札コストにしなければならず、次ターンに展開するためのカードが手札に残らない場合が多いです。そのため、どちらかというと持久戦は不得手なデッキになります。
ただし、持久戦が弱くなる原因は全て龍淵にあります。もし龍淵の代わりに展開できるテーマと組み合わせることができれば、持久戦が得意なデッキに早変わりするでしょう。
また、相剣の基本展開は赤霄とバロネスが2体並ぶのが基本で、それ以上の展開は基本的にありません。この2体が並ぶ盤面は弱くはないのですが、最近はスプライトやP.U.N.K、斬機など、より高水準の展開系デッキが増えています。そのため、少なくとも勝つ目的で純相剣デッキを選ぶ意義はありません。
電脳堺
電脳堺は2-3枚初動で安定性に欠けるものの、11期でも通用する圧倒的な展開力と、3の倍数のシンクロとエクシーズで自在に盤面を解決するデッキです。テーマ内のモンスターはサイキック族と幻竜族で構成されており、緊急テレポートなどの種族サポートカードを採用できます。
テーマ内のモンスターは手札で効果を発動するので、スキルドレイン適用下でもある程度動けるという強みがあります。また、テーマ内の永続罠によって表側表示のカードを破壊できるため、制圧系の永続罠に対してモンスター効果を使わずに対処できることも強みの1つです。
基本的に何でもできるデッキで、明確に刺さる妨害札も少ないため、どんなデッキ相手でも安定した勝率を維持できるデッキです。しかし、手札事故率がかなり高いことが最大の弱点で、それに付随して手札誘発などの汎用カードも採用しづらいことが弱みです。
また、以下の要因によりEXデッキの採用カードがほぼ固定化されているため、採用カードの違いで個性を出しにくく、手の内が分かりやすい所も微妙な点です。
手札消費が激しいため、スターダスト・チャージ・ウォリアーなどの手札を増やすカードを採用する必要がある。
手札事故率を抑えるために、灼銀の機竜などの特定の状況で展開を伸ばせるカードを採用する必要がある。
EXデッキで採用できるカードのバリューが全体的に控えめなので、アーゼウスを出す前提でXモンスターが採用されることがほとんど。
相剣電脳堺について
相剣と電脳堺を混ぜる意味
相剣は展開力があまり高くないものの、初動安定性がかなり高い。一方、電脳堺は初動安定性にかなりの難があるものの、展開力は抜群。この2テーマは面白いほど特徴が真逆です。そして、どちらも幻竜族がテーマに組み込まれており、特に龍相剣現で電脳堺の幻竜族をサーチできるシナジーがあります。
このことから、相剣と電脳堺をうまく組み合わせられれば、高水準なデッキができあがる可能性があります。
相剣電脳堺についての詳細な考察は後ほどしますが、少し考えただけでも以下の利点やかみ合わせの良さが考えられます。
召喚権を使うのは相剣だけ。
3の倍数のS, X(エクシーズ)モンスターを扱える電脳堺に対し、相剣のレベル4チューナー・非チューナーを提供できるため、レベル7, 8, 10, 11Sを新たに採用できる。
相剣からの以下の展開により、電脳堺の展開につながる。
電脳堺からの展開でも、レベル9Sの幻竜星−チョウホウを破壊すると白の聖女エクレシアをサーチできるため、召喚権が余っていれば相剣の展開に移行できる。
新たに採用できるシンクロモンスターの例
レベル3, 6チューナー・非チューナーを用意できる電脳堺に対し、相剣のレベル4のチューナー・非チューナーを提供できることから、レベル7, 8, 10, 11Sを採用することができます。その中でも特に相剣電脳堺と相性が良いカードを紹介します。
純電脳堺に採用できるレベル6, 9, 12Sやランク3, 6, 9Xと比べると、以下のカードは頭一つ抜けた性能を持つため、EXデッキの質を高められます。
幻竜族のレベル7Sモンスターで、泰阿で龍相剣現を除外してレベルを1下げるか、電脳堺と相剣モンスターでレベル3, 4を並べることでシンクロできます。先行でも朱雀で破壊することによって相剣・電脳堺どちらの展開にも繋げられるため、テーマ間で高いシナジーを発揮できるカードです。
なお、永遠の淑女 ベアトリーチェを使ってEmトリック・クラウンや亡龍の戦慄-デストルドーをデッキから墓地に送ることで、電脳堺側の展開から召喚権を使わずに相剣の展開に移行できます。
相剣の展開の軸となる幻竜族レベル8Sモンスターです。龍相剣現をサーチし、そこから幻竜族の電脳堺モンスターのサーチに繋げられるだけでなく、サーチを使った後のターンから無効効果も使える強力なカードです。
相剣の後手の捲り札としてあまりにも優秀な幻竜族レベル8Sです。泰阿を素材としたときの2枚デッキバウンスの雑な強さはもちろんのこと、蘇生効果によって相剣と電脳堺どちらの展開にも繋げられるという意味でも、相剣電脳堺と極めて相性が良いです。
レベル10Sと言えばフルール・ド・バロネスですが、このデッキでは展開中のドローの重要度が高く、かつ多くの幻竜族Sモンスターを採用できるため、七星龍淵の方が採用優先度は高くなります。
最近は強力なフィールド魔法や永続魔法・罠を使うデッキが多いため、魔法・罠の除外効果も有効にはたらきやすい環境になっています。たった1体でドローと2回分の除外除去でアドバンテージを稼ぎつつ、除去するたびに1200のバーンダメージも与えるという、なぜか目立っていませんがなかなかに壊れたモンスターです。ぜひ採用したいところです。
七星龍淵のドロー効果の発動トリガーとしての役割もあるため、バロネスよりも採用優先度の高い幻竜族レベル10Sです。七星龍淵の除外除去をトリガーに承影の除外除去効果を発動できるというシナジーもあります。
その他、実質無制限の破壊耐性と高いステータスにより、純電脳堺では突破しにくい盤面を解決しやすいカードでもあります。
レベル11Sの汎用モンスターで、条件付きの完全耐性持ち、かつ高打点、かつ除外効果持ちです。電脳堺と相剣どちらにとっても欲しかった効果が揃っているだけでなく、効果を使い終わったレベル8S(赤霄やショウフク)と電脳堺のレベル3チューナーで自然とこのレベル11Sに繋げられます。
メインデッキの構築をどうするか
EXデッキはシンクロ軸で大幅に強化できそうですが、肝心のメインデッキの構築はどうすれば良いでしょうか。デッキ構築にはかなり大きな壁が立ちはだかります。
というのも、純電脳堺ではデッキ構築がテンプレート化されており、採用カードの大部分が固定化されているからです。
電脳堺モンスター14枚、電脳堺魔法・罠カード9枚、緊急テレポート2枚と、汎用カードである灰流うらら3枚、増殖するG2枚、墓穴の指名者2枚の計32枚まではほぼ固定です。残りの8枚で汎用カードを少し増やしつつ、龍相剣現3枚と莫邪、泰阿、白の聖女エクレシアを1枚ずつ採用すれば相剣電脳堺デッキが完成しそうですが、個人的には以下の不満が残ります。
相剣側の展開の始動が龍相剣現に大きく依存しているせいで、赤霄による龍相剣現サーチからの電脳堺モンスターのサーチに繋げにくく、テーマ間のシナジーを活かしきれない。
相剣から展開できる確率が低いため、肝心の初動安定性があまり改善されない。
初動安定性を向上させるには莫邪や白エクレシアをより多く採用する必要がありますが、そのまま採用するだけではデッキ枚数が多くなってしまい、手札誘発とテーマ内カードのバランスが悪いデッキになってしまいます。デッキ枚数を抑えつつ初動安定性を向上させるためには、電脳堺カードの採用枚数を減らすしかありません。そんなことは可能なのでしょうか
展開例から必要な電脳堺カードを考える
電脳堺カードはどのようにして使われていくのでしょうか。展開例をいくつか見ながら、消費枚数について分析していきましょう。
相剣電脳堺で最も多い初動札となりそうな莫邪+九竜+(相剣カードか幻竜族モンスター)の場合の展開例がこちらです。
莫邪を通常召喚する。手札の相剣か幻竜族を見せて、レベル4チューナーのトークンを特殊召喚する。
莫邪と相剣トークンの2体で赤霄をS召喚。チェーン1で赤霄、チェーン2で莫邪の効果を発動し、1ドローの後、龍相剣現をサーチ。
手札の龍相剣現で豸々をサーチ。
朱雀を対象に手札の豸々の効果を発動。デッキの青龍を墓地に送り、豸々特殊召喚。
墓地の青龍の効果を発動。瑞々を手札に加え、手札を1枚捨てる。
朱雀を対象に手札の瑞々の効果を発動。デッキの青龍を墓地に送り、瑞々を特殊召喚。その後、老々を手札に加える。
瑞々と豸々の2体でスターダスト・チャージ・ウォリアーをS召喚。S召喚時の効果で1ドロー。
朱雀を対象に手札の老々の効果を発動。デッキの娘々を墓地に送り、老々を特殊召喚。その後、墓地の豸々を蘇生。
豸々を蘇生したことにより墓地の娘々の効果を発動。レベル3チューナーとして娘々を墓地から蘇生する。
老々と豸々の2体で仙々をS召喚。
娘々とスタチャの2体でウォルフライエをS召喚。
娘々の除外時効果で除外ゾーンのスタチャをEXデッキに戻す。
エンドフェイズ時に豸々の効果により、墓地の瑞々を手札に加える。
最終盤面は赤霄+仙々+ウォルフライエ+朱雀で、手札は5枚(内、瑞々1枚)です。
上記の展開で使う電脳堺カードは、娘々1枚、瑞々1枚、豸々1枚、老々1枚、青龍1枚、九竜1枚、朱雀1枚の計7枚です。
次に瑞々+九竜の2枚初動の例を見てみましょう。
手札の九竜の効果を発動。デッキの朱雀を表側表示で魔法・罠ゾーンに置く。
朱雀を対象に手札の瑞々の効果を発動。青龍をデッキから墓地に送り、瑞々を特殊召喚。その後、豸々を手札に加える。
瑞々を対象に手札の豸々の効果を発動。朱雀を墓地に送り、豸々を特殊召喚。
墓地の青龍の効果を発動。老々を手札に加え、手札を1枚捨てる。
墓地の朱雀の効果を発動。瑞々か豸々のレベルを3上げる。
場の瑞々と豸々の2体で幻竜星−チョウホウをS召喚。
場の朱雀の効果を発動。除外ゾーンの青龍と朱雀をデッキに戻し、チョウホウを破壊。
チョウホウが破壊されたことにより、白エクレシアをサーチ。
朱雀を対象に手札の老々の効果を発動。娘々を墓地に送り、老々を特殊召喚。その後、豸々を蘇生。
豸々の蘇生により墓地の娘々の効果を発動。レベル3チューナーとして娘々を蘇生。
娘々と豸々の2体でスタチャをS召喚。効果により1ドロー。
白エクレシアを通常召喚。
白エクレシアの効果を発動。泰阿をデッキから特殊召喚。
除外ゾーンに電脳堺カードが2枚あり、かつ手札に相剣か幻竜族がある場合は莫邪で1ドローを狙っても良い。
泰阿の効果を発動。墓地の豸々を除外し、相剣トークンを特殊召喚。
老々と泰阿の2体で七星龍淵をS召喚。泰阿の効果により、デッキから麟々を墓地に送る。
麟々は1ターン目では使わず、2ターン目以降に老々で蘇生できるように墓地に送っておく。
スタチャと相剣トークンの2体で承影をS召喚。幻竜族がS召喚されたことにより、七星龍淵の効果で1ドロー。
エンドフェイズ時に豸々の効果により、墓地の瑞々を手札に加える。
最終盤面は七星龍淵+承影+朱雀で、手札は5枚(内、瑞々1枚)です。
上記の展開で使う電脳堺カードは、娘々・瑞々・豸々・老々・麟々・青龍・九竜が1枚ずつ、朱雀が2枚の計9枚です。
電脳堺モンスターは採用枚数を削って良い
上記の展開例を見ると、常に場に置いておきたい朱雀を除いて、電脳堺カードは1ターンに1枚ずつしか使いません。さらに以下の要因により、電脳堺モンスターは2枚ずつ(娘々は1枚)の採用で良いでしょう。
赤霄から龍相剣現経由で電脳堺モンスターをサーチできる。
現代遊戯王は短期決戦の傾向があるので、2ターン分の展開ができるデッキリソースがあれば十分。
ただし、九竜と青龍は3枚採用が必須となります。電脳堺モンスターのサーチは龍相剣現で可能なものの、電脳堺モンスターを特殊召喚できる状況を召喚権を使わずに作れるカードは、九竜、青龍、緊急テレポートの3種類しかありません。初動安定性を向上させるためには、これらのカードをフル投入すべきです。
さらに、電脳堺側の展開が2枚初動になると、途中のドローが良かった場合を除き、最高でも3種類の電脳堺モンスターしか手札から特殊召喚できません。この3種類は基本的に瑞々、豸々、老々になることが多く、麟々を使わなくても良いことがほとんどです。そのため、麟々は1枚採用にしても特に支障はありません。
電脳堺罠カードについては、純電脳堺のテンプレート通り朱雀2枚、玄武1枚で良いでしょう。この3枚構成は展開の柔軟さや手札事故の低減、デッキスロット確保のバランスが絶妙で、カード枚数の調整余地がありません。
相剣電脳堺で最低限採用すべき電脳堺カード
相剣電脳堺において、電脳堺側の展開に必要最低限のカードは以下の19枚です。純電脳堺のテンプレート通りであれば計25枚必要だったため、デッキスロットを6枚空けることができました。
娘々1枚
瑞々2枚
豸々2枚
老々2枚
麟々1枚
九竜3枚
青龍3枚
朱雀2枚
玄武1枚
緊急テレポート2枚
相剣側で採用すべきカード
相剣電脳堺において、相剣に求められる役割は初動安定性の向上です。初動となりうるカードは莫邪、白エクレシア、龍相剣現、泰阿の4種で、特に莫邪と、それに繋がる白エクレシア、龍相剣現が重要です。この3種は可能な限りフル投入が望ましいでしょう。
泰阿は1枚採用でも良いですが、電脳堺から展開が始まった場合、途中のドローで泰阿を引くと展開を伸ばすことができます。2ターン目以降も主にショウフクからの捲り札として活用できるため、2枚採用が望ましいです。
通常の相剣デッキでは採用必須の龍淵については、相剣電脳堺では採用する必要はありません。相剣と電脳堺の展開ができれば簡単にレベル10Sができることを考えると、相剣か幻竜族の手札コストを消費してレベル10Sを出せる龍淵は、カードパワーの面で一歩劣るでしょう。相剣側の展開しかできない場合でも、赤霄で相剣暗転をサーチして手札消費を抑える方が、2ターン目以降の動きが安定します。
莫邪の効果で手札から公開するカード
莫邪の効果で相剣トークンを特殊召喚する場合、手札から相剣カードか幻竜族モンスターを見せる必要があります。これまで紹介した採用カードの中には、豸々2枚、麟々1枚、莫邪3枚、龍相剣現3枚、泰阿2枚の計11枚が莫邪の効果で手札から見せられるカードです。
莫邪が手札にある状況で公開用のカードも一緒に持っている確率は、40枚デッキの場合約71%とやや低くなっています。莫邪からの初動を安定させるためには、デッキ枚数を多少増やしてでも相剣カードか幻竜族を増やす方が良いでしょう。
公開用を兼ねて積み増しできるカードの有力候補は以下の通りです。
相剣暗転はモンスター効果に頼らない除去カードという特性があるため、特に採用の価値が高いです。増殖するGを打たれた際に赤霄でサーチすることで、十分な妨害を用意しつつ展開を止めることができます。
麟々、豸々については、電脳堺側の初動安定性にも影響するため、デッキスロットに余裕があるなら採用しても良いでしょう。特に麟々の2枚目を採用すると、ギリギリまで絞った電脳堺側の展開リソースに余力ができるため、採用優先度が高いです。
アークネメシス・プロートスは、相剣と電脳堺両方にとって貴重な制圧カードになります。ティアラメンツなど、プロートスが明確に刺さるデッキは一定数存在するため、そのようなデッキが多い環境では採用を検討したいところです。ただし、ここで紹介する相剣電脳堺は基本的に相剣側から展開することを前提にしているため、龍相剣現を電脳堺モンスターのサーチに使うことが多くなります。そのため、狙ってプロートスを出せる確率はあまり高くありません。
なお、スモール・ワールドを採用する場合は、サーチの中継地点として優秀なステータスを持っているため、初動安定性の向上にも貢献できるカードです。
妖眼の相剣師は展開ルートに直接関わることはありませんが、手札公開用の用途以外でも、以下のような使い方ができます。
白エクレシアに増殖するGを打たれた際の受け。
既に暗転を持っている状況での、赤霄でサーチする追加の妨害札。
レベル11Sを出すための非チューナー素材。
ワンショットキル要員。
オールラウンドに活躍できるこのカードは個人的にかなり好きですが、ティアラメンツやふわんだりぃず相手だと妨害札にならない点は注意が必要です。
ガイザーからの展開ルートを確保するか否か
電脳堺側の展開からレベル7Sのガイザーを出せるようになると、召喚権を使わずに相剣の展開に移行できます。ただし、相剣から展開する確率を極力高めたこのデッキにおいて、チョウホウ以外から相剣の展開に移行できるルートを用意する必要があるかという問いから考察すべきでしょう。
電脳堺側の展開からレベル7Sを出すためには、ランク6Xのベアトリーチェからデストルドーやレベル4モンスターを墓地に落とし、自己蘇生効果で場に出した上で、レベル3の電脳堺モンスターとシンクロするのが基本です。
つまり、ガイザーから相剣の展開に移行するルートは電脳堺側で計15レベル分の展開リソースを使う必要があり、かなり効率の悪い動きになります。9レベル分の展開リソース消費で済み、特定の展開でしか使わないカードをメインデッキに採用する必要もないチョウホウの展開ルートと比べると、構築も展開ルートの強さも一歩劣ると言わざるを得ません。
このことから、電脳堺側の展開からガイザー経由で相剣の展開に移行するルートは、電脳堺側から展開する前提の構成で、かつプロートスによる強力な制圧盤面を目指す構築でない限り、割に合いません。ここで紹介する相剣電脳堺は相剣からの始動前提の構築なので、この展開ルートは確保せず、余ったEXデッキスロットに他の幻竜族Sを入れるなどした方が良いでしょう。
ガイザー経由の展開に必要なカード
一応、ガイザー経由で相剣に移行するために必要なカードを紹介しておきます。この展開ルートを確保したい場合は参考にしてください。
ベアトリーチェでデッキから墓地に落とし、フィールド上の豸々か麟々を対象に特殊召喚すると、レベル7Sを出すことができます。
レベル6以下のどの非チューナーモンスターを対象にとってもレベル7Sに繋がるという、非常に使い勝手の良いカードではあるのですが、デストルドー自身がチューナーであり、チューナーが余りがちな電脳堺と少しかみ合わせが悪い点が残念です。
ライフコストが高い点については、サイコ・エンド・パニッシャーで逆にライフ差を利用できるため、そこまで気になることはないでしょう。
デストルドーと同じくベアトリーチェでデッキから墓地に送って特殊召喚を狙いますが、こちらはレベル4非チューナーとなっており、レベル変動はありません。
特に癖がなくて使いやすく、レベル3チューナーは場に用意しやすいため、このカードを採用するのが安定かなと思います。
妨害効果持ちのレベル4非チューナーです。墓地リソースを除外するコストは、電脳堺や承影にとって逆に優位にはたらくことから、デッキとのかみ合わせの面では一番良いカードです。
しかし、初動展開で使う場合は墓地リソースが足りない場合が多いため、ガイザー経由で初動展開を伸ばす目的では使いにくいです。初動展開用のカードと合わせての採用なら一考の余地があると思います。
スモール・ワールドの採用有無について
スモール・ワールドは、メインデッキに採用するモンスターのステータスとのかみ合わせが良ければ、万能のサーチカードとして機能するカードです。純電脳堺や相剣では採用が厳しいカードですが、相剣電脳堺ではプロートスや龍淵、屋敷わらしなどを追加採用することにより、手札誘発を含むほぼ全てのモンスターカードから電脳堺や相剣に自由にアクセスできるようになります。
基本的に好きなモンスターを状況に合わせてサーチできることから、スモール・ワールドの採用により初動をさらに安定させることができます。しかし、デッキ枚数がかなり多くなることから、特に敵の増殖するGを無効にできる確率が下がります。
また、召喚権なしに電脳堺モンスターを特殊召喚するための足場を作れる九竜・青龍・緊急テレポートに代わるカードはないため、デッキ枚数を増やすほど相剣から電脳堺の展開に移行しにくくなるという欠点があります。これらのカードはスモール・ワールドでサーチできません。
スモール・ワールドの採用の可否について考えるには、1ターン目に動ける確率や手札誘発を引ける確率などを真面目に計算し、自分で納得できる確率を探していくしかないでしょう。
ただし、確率計算なしに言えるスモール・ワールド採用の大きなメリットとして、プロートスの採用理由に初動安定性向上を追加できる点が挙げられます。1ターン目では使わなくとも、2ターン目以降の相手のデッキが判明した段階でのプロートスの制圧はほぼゲームの勝敗を決められるため、初動が安定するなら積極的に1枚採用しておきたいところです。
ちなみに、スモール・ワールドの効果でプロートスを裏側除外したとしても、娘々の除外時効果でデッキに戻して再利用できるため、1枚採用で問題ありません。
デッキ構築例の紹介
ここで実際のデッキ構築例を紹介します。
以下のデッキはまだ調整中ではありますが、デッキ構築の大枠の調整は完了しており、プラチナ帯で16勝5敗(勝率76%)となっています。
デッキ概要
デッキの全体感について解説します。
この相剣電脳堺デッキは、相剣始動で展開できる確率だけを考慮しても、純相剣並みの初動安定性になっています。(先行で相剣始動で展開できる確率は約64%)。電脳堺始動も含めると確率は74%程度まで上がってくるので、1枚初動が9枚積まれた40枚デッキデッキ並みの初動安定性を得ることができます。
このデッキは相剣始動の展開を前提にデッキを構築しているため、龍相剣現で一部サーチ可能な電脳堺モンスターは2枚採用(娘々は1枚)にしている所が最も大きな特徴です。この特徴こそが今までの相剣電脳堺になかったもので、その分相剣パーツを厚く採用して初動安定性を高めています。
また、幻竜族や相剣カードの採用枚数が少なくなることから、40枚デッキにしてしまうと却って莫邪始動で展開できる確率が低くなってしまいます。そこで、プロートスや相剣暗転などで相剣と幻竜族カードを増やしつつ、スモール・ワールドを採用することで、デッキ枚数を増やしつつさらに初動安定性を得ることができています。
細かい採用・不採用カードの解説
各カードの採用・不採用理由を記載します。
特に純電脳堺では、限界まで初動安定性を上げるために採用枚数を2枚にすることが多いです。しかし、相剣とスモール・ワールドにより初動安定性が高くなっているため、増殖するGの採用枚数を抑える必要はありません。
龍淵
レベル10Sは龍淵なしでも簡単に出せることと、特殊召喚するのに手札コストが必要なことから、手札枚数が重要な相剣電脳堺とは相性が悪いカードです。赤霄で展開が止まる場合、龍淵でバロネスを出すよりも、暗転を構えるか、既に暗転があれば妖眼の相剣師で妨害を増やす方が良いでしょう。
ただし、スモール・ワールドとは非常に良くかみ合うステータス(レベル6・火属性・幻竜族)を持っているため、特に俱利伽羅天童を採用する場合は龍淵を採用する意義が生まれます。
手札誘発による妨害を受けた際に、ドローで追加の展開を狙います。ドローの重要性が高いこのデッキと相性が良く、結果的に初動安定性が高まるカードです。
初動安定性向上などの理由でデッキ枚数が多くなっているデッキでは、デッキ枚数が1枚変わったところで手札事故率は1%上がるかどうかです。そのため、抹殺の指名者のように勝率の向上が明らかなパワーカードは素直に入れておいた方が良いです。
増殖するGを無効にできる数少ないカードとして有用です。
莫邪の手札公開用カードを増やして初動安定性を高めつつ、モンスターに頼らない除去手段を確保するために3枚採用です。拮抗勝負などの即効性のある汎用除去札とは違い、後攻であまり強くない除去札ですが、その分先行での強さが光ります。
除外すると相剣トークンを生成できるため、赤霄や泰阿などで除外すると展開を伸ばすことができます。
現環境では万能無効系の制圧カードが少ないため、ティアラメンツだけでなく他のデッキにも良く刺さります。3枚採用により相剣始動の初動安定性が4%ほど下がりますが、環境のティアラメンツによく刺さることを考えると、採用するほど勝率が上がると思います。
レベル6非チューナーを場に用意するために必要です。1ドローが非常に強く、相剣電脳堺でも依然として採用必須カードです。
特に無限泡影などで莫邪を止められた際に場のチューナーが足りなくなることがあるため、レベル6Sのチューナーも必要になってきます。こちらも採用必須で、純電脳堺よりも使う頻度が高くなるでしょう。
電脳堺ネームのレベル6Sで、戦闘・効果による破壊の耐性を持ちながら、墓地に送る除去も持っている点が優秀です。採用しても良いのですが、基本相剣から展開するこのデッキにおいて活躍の場が少ないと感じることと、単純に枠がないことから不採用です。
赤霄
相剣側の展開だけで止まることも多いため、2ターン目も見据えて2枚採用必須です。サーチと妨害両方できるため、単純なバリューの高さだけ見ても2枚採用の価値があります。
緊急テレポート+豸々の始動で2ドローを狙いにいくことが多いため、相剣電脳堺でも採用必須です。
制圧カードとしても捲り札としても優秀なカードで、先行1ターン目で立たせられる貴重なレベル9Sです。採用例がなぜか少ないですが、V.F.Dがいない電脳堺で採用しない理由がないカードだと思います。
純電脳堺では青龍+麟々始動などで無理やり展開を広げるためのカードです。このデッキでは比較的安定して相剣側から展開できるため、青龍+麟々で展開しなければならなくなる確率がかなり低くなっています。そのため、単純なカードバリューの低さから不採用としています。
※このカードが弱いというよりも、幻竜族Sモンスターのバリューの高さが異常すぎて、採用の余地がありません。
七星龍淵
除外除去とバーン性能が優秀なだけでなく、ドローも非常に狙いやすいことから2枚採用としています。
レベル10Sの代表としてあまりにも汎用性の高いカードです。破壊効果もこのデッキとのかみ合わせが良く、ガイザーやチョウホウを能動的に破壊して展開継続することもできます。
ただし、ドローできることが前提の七星龍淵と比べると、流石にバロネスのバリューは見劣りします。また、バロネスは他に採用する多くのSモンスターと違い、初動展開のルートに一切組み込まれないカードです。そのため、他に採用したいカードがあればバロネスを抜くのが良いでしょう。今回は対ふわんだりぃず用にファイナルシグマを採用しているため、バロネスは不採用にしています。
特にふわんだりぃずとの対戦では、文字通り出したら勝てる完全耐性モンスターです。ティアラメンツ環境におけるふわんだりぃずは2-3番目によく当たるデッキであり、仙々やアーケティスとレベル3チューナーで気軽に出せることから、かなり採用価値が高いカードです。
ファイナルシグマを採用しない場合はバロネスと入れ替えになるでしょう。
その他のSモンスター
ドラガイトなどの優秀なSモンスターは他にたくさんいますが、展開継続やサーチに加えてその他の強力な効果を兼ね備えている幻竜族Sモンスターが多すぎるため、余程対策したいカードがない限り採用枠は余りません。それに加え、肝心の対策したいカードについても、基本的にバロネスがいればなんとかなってしまいます。
ランク3, 6, 9Xモンスター全般
ブレイクソードやトレミスなどの純電脳堺に採用されるXモンスターは、電脳堺の展開を伸ばすなどの役割を持っています。しかし、幻竜族Sモンスターと比較すると総じて性能が低めなので、採用を検討する必要はないでしょう。リソース回復なら赤霄や七星龍淵、除去兼展開ならガイザーやショウフクなどがおり、代わりとなる強力なSモンスターはいくらでもいます。
アーゼウス自体はもちろん強力なカードですが、先述の通りその他のXモンスターが物足りません。アーゼウスのためだけにEXデッキを2枠も割く必要はないでしょう。
ガイザーから相剣の展開に移行するルートを確保するためにベアトリーチェを採用する場合は、アーゼウスも一緒に採用する価値が出てきます。
ただし、アーゼウスを採用せずともEXデッキの質は十分すぎるほど高いため、自分の場の朱雀などを一緒に除去してしまう相性の悪さを考慮すると、ベアトリーチェを採用する場合でもアーゼウスは採用しなくて良いと思います。