講義レポート⑫『ウルトラマンX』の制作裏側から学ぶ、面白い企画とは?
みなさま、ごきげんよう。
跡見学園女子大学『創作ライティング演習B(シナリオ)』のnote更新を担当しております、かんぴよです。
クリスマスシーズンになり、小さな子供たちのためにサンタクロースが最も頭を悩ます時期でしょう。さて、本日はそんな“おもちゃ”に関わる業界の裏話です。
2024年最後の授業、振り返りたいと思います。
今回の授業内容
第12回の授業は以下の通りとなっています。
・テーマ『恋』15分シナリオ第二稿の講評(希望者)
・キッズアニメ・特撮の企画とビジネス
キッズアニメ・特撮の企画とビジネス
脚本コンクールで受賞歴があっても、必ずしも商業アニメの脚本家として活躍できるわけではありません。なぜなら、商業アニメの企画には、創作の自由を制限するように見える、様々な「制約」が存在するからです。
原作者、版元の方針
マーチャンダイジング(商品計画):変身アイテムやカードなど、シナリオを描く前に商品化計画が決まっている。また、商品を売り出すために逆算してシナリオを考えている。
ターゲットにマッチした表現:殺す表現はやめましょうなど、視聴する年齢層にあわせた表現にする。
監督、シリーズ構成、プロデューサーの作家性や方針:ビジネスだけではなく、彼らの表現を尊重する。
海外セールス(文化、価値観、キャスティング):海外で売れるかどうか? 海外で売れる前提にシナリオを展開していく。
予算、スケジュール:近年の傾向でアニメはクオリティ重視になっている。実力のあるアニメーターの待遇が改善された結果、スケジュールが前倒しになっている。
これらの制約は、一見すると自由な創作を阻むもののように思えるかもしれません。しかし、脚本家の三谷幸喜氏はこのように話しています。
自由な発想を制限するのではなく、制約の中でこそ生まれるアイデアや工夫があります。
新しい企画開発のポイントは「足し算であり、引き算である」
この足し算は二つ以上のアイディアを組み合わせることです。しかし、面白いアイディアをたくさん組み合わせれば面白い企画になるわけではありません。そして、企画についてウルトラマンのデザインした成田亨氏はこのように話しています。
重要なのは引き算、シンプルにすることです。シンプルだからこそ、ずっと記憶に残っているのです。企画には一点突破の魅力が必要なのです。
『ウルトラマンX』に見る脚本術
『ウルトラマンX』は2015年に放送された「ユナイト」をテーマに掲げた作品です。
このテーマは、タイトル「X」から連想されました。
「X」は「謎、未知の可能性」から「つながる心、つながる力」そして、「異なる方向のものがクロスするコミュニケーション・ストーリー」と作中では「すべてがつながる」ことを「ユナイト」と表現しています。
また『SAVE THE CATの法則』に照らすと、この作品は人間とウルトラマンのバディものです。
小林先生が担当した第1話「星空の声」はこちらで視聴することができます。
先生は第一話のポイントを6つ挙げています。
世界観の紹介
大空大地の個性と目標
新怪獣の魅力
新ウルトラマンの魅力
怪獣を倒すカタルシス
一話で完結する
わずか24分という短い時間の中で、これら6つの要素を感じ取ることができます。
授業後の感想
小林先生が脚本家として企画に参加する段階で、玩具とモチーフが決まっていること、玩具を売り出すために逆算して脚本を考えていくという想像以上にビジネス化されていたことに驚きを感じました。また、企画をするプロデューサーは、創作性に長けているクリエイターを束ねる役割があることから、企画段階で方向性はしっかり固めていることを知り、プロデューサーという仕事を垣間見ることができた気がします。
『ウルトラマンX』の主演が高橋健介さんが、「ぼくたちのあそびば」というYouTubeチャンネルにて裏側を語っています。
ミュージカル刀剣乱舞がきっかけでこのチャンネルを見るようになったのですが、授業を受けつつ『ウルトラマンX』の企画段階における話が聞けたのは、とても興味深かったです。
2024年を振り返って
今年度から、跡見は1コマ100分、全14回の授業と変更になり、私が跡見noteを書く機会はこれで最後になりそうです。
授業や講評を通してたくさんのことを学びました。時々、他の人の講評を書きとりながら自分の未熟さに打ちひしがれる時もありました。それでも第4稿まで講評を受けて先生から「良くなった」という言葉を聞いて、諦めないでよかったなと思いました。
秋学期終了後、15分シナリオが投稿されます。
いろんな「恋」が見られると思いますので、ぜひ、楽しみにしていてくださいね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
皆さま、良いお年をお迎えください。