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「○○らしさ」で苦しむくらいなら

「○○らしさ」が彼、彼女の呪縛となっているならば、私はそれを引きちぎって丸めてポイしてしまいたい。

「男の中の男」「女の中の女」みたいな人、ネットに散見される美しいモデルケースに完璧にあてはまる人生を送れる人って、どれくらいいるのだろう。他者の評価と自分の評価でまた違うだろうし、能力パラメータが男寄りなら優れていて、女寄りなら劣っているということもない。逆もそうだ。さらに言うと能力の有無イコール個人の尊厳をけなしてよい理由にはならない。

幼少期、私は大体男の子のような服装をしていた。髪型もどちらかというとショートが多かった。これは私の趣味ではなく、親の趣味だった。私自身は髪を伸ばしてリボンとかつけたいわ~と思っていたので、幼子なりに反抗して腰まで髪を伸ばすのだが、乾かしづらい等の理由でちょん切られてしまっていた。

遊びはと言えば、着せ替え人形やおままごとセットとともにプラレールやゴツい水鉄砲を買ってもらったりして、良い感じに男女折衷(?)していたと思う。

成長して理系の大学に進んだが、分野に関係ない本(文学系)ばかり読んでいた。成績はそんなによくなかった。試験前はちょっと泣きながら勉強した。

もともと甘いものが好きだったが、大人になってアルコールが飲めるようになり、どちらも好きになった。というか食い意地が張っているので、おいしいものはなんでも好きだ。

就職して一人暮らしをするようになって、料理などの家事は一通りするものの、得意かと言われると困る。少なくともレシピ本は出せない。ご飯のおかずになればOKのスタンスなので、ビジュアル性には欠ける気がする。あと、油断すると醤油味のおかずが増えてしまう。

長々と自己紹介めいたものを書いてみたが、取り上げる箇所によって「女らしく」もあり「男らしく」もあるというか……あえて言うなら「昔からおおざっぱに生きてんな、自分らしいわ~」というところである。

そんな私でも、たまに性別や年齢その他もろもろの「○○らしさ」について言及されることがある。相手は大体悪気がないうえに世間話のノリなので、「そうなんですよね~」くらいの返事しかしない。身が入っていないという意味ではこちらの返事も同等である。雰囲気を壊したくないというより、単に面倒くさいのだ。

私が一番困ってしまうのは目の前で他の人が槍玉にあがるときだ。

スパっと物言いすればカッコいいのだろうが、私は大概初速に欠けるので、モゴモゴしているうちに話が終わってしまう。

各人にはその人なりの人生プランや理想があるので「そんなことないよ。あなたはそのままで素敵だよ。気にしないで!」が彼、彼女に必要な言葉になるとは限らない。

必死にもがいて頑張っている人や、傷つき頑張ることをやめてしまったけど、納得できていない人には、もっと別の言葉が必要なのだと思う。ただ、私はまだ適切な言葉を見つけられていない。

もう一度言うと、

「○○らしさ」が彼らの呪縛となっているならば、私はそれを引きちぎって丸めてポイしてしまいたい。

彼らがどのような人生を送るかは本人次第だ。努力が必ず報われるとは限らないし、愛情をかけたぶんだけ愛情が返ってくるわけでもない。つらいとき他人に助けを求めるかも、本人が決めることだ。私の思いや言葉はきっかけや支えになることはあるかもしれないが、最終的にはその人はその人自身の力で歩き出すことになる。

(生きるってなんて大変なことだろう)

だからせめて、必要のない棘や石ころを、取り除いておきたい。最初の、もしくは続きの一歩が明るいものであるように。

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