勿忘草の咲く町で
こんにちは!
とある後書き医大生です。
今日は、僕の大好きな作家さん、夏川草介さんの本をご紹介しようと思います!
夏川草介さんProfile
・大阪府出身
・長野県の医療機関に従事する現役医師
・有名作は「神様のカルテ」
すごいですよね!!!
現役医師で、激務の傍らに小説を執筆するなんて、到底考えられません。
「神様のカルテ」は僕が地域医療を志すきっかけとなった本であります。
そんな夏川草介さんの名作の数々ですが、今日ご紹介するのは、
「神様のカルテ」
ではありません!!
今日は、「勿忘草の咲く町で」という本をご紹介します!
※途中でネタバレを含みます。知りたくない方は飛ばしてください。
あらすじ(ネタバレなし)
美琴は松本市郊外の梓川病院に勤めて3年目の看護師である。
研修医1年目の桂正太郎と共に、地域医療ならではの患者との関わりに日々悩みながら進んでいく。
患者の思いと家族の思い。延命治療と地域医療の現状。生と死の差は何なのか。
高齢者医療となる地域医療の現実に、真正面から向き合う。
ざっとこんな感じでしょうか。少し脚色を加えてみました!
感想(ネタバレなし)
医師一人一人の価値観と、地域医療への葛藤。
患者さんと関わる様々な人の葛藤がリアルに描かれていると思います。
読んでいるだけで、自分も悩んでしまい、少し疲れを催します。
しかし、小説で少し脚色してこれです。
現実はもっと厳しいのだろうと思います。
悩ましいです。
医師としての自分。人間としての自分。
自分を取り巻く環境。患者さんを取り巻く環境。
患者さんの家族を取り巻く環境。地域医療の現状。地域医療の未来。
いろんなことを考えて、治療方針を決めなければいけません。
患者さんも脈絡のある話ができればいい方です。
読んでいて、自分に何ができるのか、と悩んでしまいました。
作中、色んな医師が登場しますが、それぞれに価値観があって仕事をしています。
僕にできるのは、その多様な価値観を、学生のうちから多く吸収することなのかなと思いました。
※次、ネタバレを含みます。ご注意ください。
感想(ネタバレあり)
さて、具体的なお話を含めて感想を述べます。
一番悩んだのは、循環器研修のシーンです。
循環器の指導医は、「死神」こと谷崎先生。
まずは、桂と谷崎先生のそれぞれの価値観を、述べます。
※若干の脚色を含みますが、ご容赦ください。
桂
・患者さんの家族が望むのであれば、延命治療は続けるべき。
・患者さんには、最後まで少しでも長く生きてほしい。
谷崎先生
・85歳以上の延命治療は不要。
・医療資源の限定性を踏まえると、先の短い命より、先の長い命に回した方が良い。
・高齢者の延命治療は、患者さん家族の意思を問わず、行わない。
どちらが正しいのでしょうか。
桂ですか?
このように物語を省略して、箇条書きにすると谷崎先生が悪魔に見えてきますね。
ですが、付加情報を加えてみたらどうでしょう。
・輸血や他の医療資源(人材も含む)を増え続ける高齢患者にあてていたら、まだまだ未来の長い若い患者さんの命が救えない。
・延命治療をしても、得をするのは患者さんの家族だけで、患者本人は苦しい時間が続くかもしれない。
・医師も看護師も、他の医療スタッフも、増え続ける高齢患者に追われて、人間らしい生活が保障されていない。
・どれだけ高齢患者に勢力を費やしても、先は短い。
さて、悩みませんか?
医師の立場になって考えてみてください。
もう3日間家に帰れていません。夜中に叩き起こされます。
毎日休まることはなく、日々の仕事量も膨大です。
その上、自分が当直の日に限って、高齢患者さんが亡くなります。
どれだけ親身に接していても亡くなります。
患者さんの家族は、無関心だったり、逆に延命治療をものすごく望んだり、
自分が忙しくても、説明を求めてきたりします。
こんな状態で、谷崎先生が「悪」と言えますか?
僕は、言えません。
どちらも正しいとは言い切れません。
患者さんにとって、患者さんの家族にとって、最善の選択肢を考えるほど、
その中間で悩みます。
基本は患者さんの声を優先すると思います。
しかし、死期の近い高齢患者さんが意思を伝えられるでしょうか。
だからと言って、患者さんの家族の声を優先していいのでしょうか。
高齢患者さんを優先するあまり、どこかで若い患者さんが救えなくて良いのでしょうか。
地域医療の現状と未来を考えるとさらに悩みます。
最終的には、主治医の桂は、指導医の谷崎先生の指示を無視して、延命治療を実施したわけですが、、、
患者の視点。患者家族の視点では絶対知り得ませんよね。
もちろん主張はするべきです。
しかし、医療現場のことを少し考えると、患者側でも悩みませんか?
少し、抽象的な話が続きましたね。
具体的な話が知りたいなと思ったら、ぜひ読んでみてください!
それが一番はっきりと伝わると思います。
最後に
少子高齢化が間も無く最盛期を迎える、地域医療。
逼迫した現状を鮮明に描いたこの小説は、ぜひ読むべき一冊です!!
医療を志していなくても、一読してみてはいかがでしょうか?
長くなりました。
なかなか文章が下手くそだなと思いますが、
ここまで読んでくださりありがとうございました。
では、また!