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地球温暖化・気候変動研究の落とし穴:氷床コアによる大気中CO2再現値の欠陥~産業革命時280ppmという裸の王様~

Pitfalls in Global Warming and Climate Change Research:
Flaws in Ice Core Reconstructions of Atmospheric CO2
~The Naked King of 280 ppm at the Industrial Revolution~

原文リンク先

阿藤大、独立した研究者、大阪、日本
ORCID:0000-0002-6049-5039

要旨

近年の地球温暖化・気候変動研究では、大気中CO2の上昇が全て人類の排出によるものという前提で頻繁に語られる。特に産業革命前までの280ppmという数値を前提としている。しかしながら、この前提はその根拠として明らかになっている数値の考察で矛盾が明らかとなる。少なくともその前提には全幅の信頼を置く事は出来ない。当論文では気候変動研究の根柢部分の欠陥を、出来るだけ専門的な用語を使用しない、平易な言葉により指摘する。更には本文末の補足に、筆者による前回の論文に対しインターネット上で見られた典型的な誤解への指摘を追加する。
 
投稿日:2024年12月9日、アクセプト2025年

 1.序文
近年の地球温暖化・気候変動に関する議論では、大きく分けて二つの立場がある。一つは全て、もしくは部分的に人類により引き起こされている、という立場である(IPCC, [1])。人類を原因とする場合、最大の要因とされるのは化石燃料の使用による大気中CO2の増加である。続いてはメタンの影響を指摘される。この仮説を前提として、排出権取引を典型に、世界中で様々な規制と課税が広まっている。

もう一方の立場は、気候に対して人類は無関係もしくは無視できる影響、という見解である。この立場に立つ代表的な組織はこういった所である。オレゴン地球温暖化請願書プロジェクト[2]、ICCC[3]、CLINTEL[4]、CO2連合[5]、そしてイタリアの科学者90人[6]による声明がある。

人類の影響の代わりに、支配的要因は太陽放射強制力(Soonら、[7,8])や、スベンスマルク効果(Svensmarkら[9], Nikolovら[10])による雲の形成の自然変動に見られる。

いずれにしても、IPCCが主として採用する気候モデルは、太陽活動の影響を事実上矮小化している点で致命的である。2022年のノーベル物理学賞のジョンクラウザー氏は、雲の影響を適切に評価していないIPCC採用のモデルを批判している(Clauser, [11])。

更には、自然による気候変動の代表的な支持者たちの大半は、CO2は地球の生命にとりメリットが圧倒すると信じている [2~6]。

その一方で、大気中CO2上昇の原因そのものについても、大きく分けて2つの立場がある。一つ目は全て人間の責任とする立場 [1,5]、そして二つ目は人類の影響は皆無か微量と考える立場である、それは以下の研究で支持される(阿藤 [12]、Salby et al. [13]、Humlum et al. [14]、Berry [15]、Koutsoyiannis et al. [16])。

 故に現代の地球温暖化・気候変動の議論では大きく次の3グループに分類できる。

 ●近年のCO2上昇、気候変動は全てか殆どが人類の影響

●近年のCO2上昇は全てか大部分が人類の影響だが、気候変動には人類の責任は無いか部分的である

●近年のCO2上昇、気候変動ともに人類の影響ではないか微小

 当研究では、この最後の意見相反の根源的な前提、CO2の上昇は殆どが人類に夜、という前提の欠陥を主として指摘する。特に南極氷床コアによる再現法と、一般的コンセンサスとなっている産業革命時のCO2濃度280ppmという数値の問題を指摘する。

 以下の内容を骨子とする。

 ・南極氷床コアによるCO2再現値の精度の限界、280ppm理論の矛盾

・21世紀初頭の大気中メタン濃度の減少が意味する事

・過去の関連論文の検証とZbigniew Jaworowski氏による指摘

・過去の劇的な気候変動時に基づいた検証

・筆者による前回の報告のアップデートとシミュレーション

 更にアブストラクトに記載した通り、前回の筆者の報告に対するミスリードへの懸念を補足情報を付録として追記する。

なお今回の報告の分析においては、人類の排出量は全てOWID [17]のデータを引用する。国際エネルギー機関(IEA)のデータとの整合性は当ジャーナルでの前回の筆者の報告で検証済みであり、OWIDデータのみを使用する事に問題がない(Figure 3 in [12])。かつIEAは長期間のデータは有償となり、世界中の人々が安価に今回の当論文の内容を自ら再現する事も筆者は期待するためである。

 2.最新の南極氷床コアデータの精度の限界

 当データはNOAA(アメリカ海洋大気庁)サイトでエクセルファイルで一般公開されている(NOAA [18], Bereiter et al. [19])。南極の複数地点のサンプリングで得られたデータをまとめている。

 1950年を年度の起点とする、氷床コアによるCO2再現値が得られる(Microsoft® Excel® sheet “CO2 Composite”)。しかしながら、20世紀初頭といった比較的近年のデータであっても、データが欠損している年度がある。一方でデータが同年内に複数存在する年もある。

 このデータを1850年まで遡って年ごとの値としてまとめるため、一定のルールで各年の代表値を計算した。複数のデータがある年では平均して代表値とした。データのない年はデータのある前後の年の数値が等分で変化するようにした。表1にその事例を示す。このルールに従い計算した、1850年以降のデータを表2に示す。

 表1 南極氷床コアのCO₂データの年間平均値の計算事例
・BPは1950年、CO₂濃度の単位はppm ・この事例内では1951年、1955年、1888年、1886年、1881年、1880年、1875年、1874年のデータは無い ・CO2平均値は同年でデータが複数ある場合は平均を算出し、データが1個の場合はそのまま使用した ・データが無い年は前後で平均的に変化するように計算した
表2 南極氷床コアのCO₂データ
CO₂濃度の単位はppm、元のエクセルにデータが1つもない年は赤色で記す

このデータを現代計測されているハワイマウナロアのデータと連結した(NOAA, [20])。1851年以降の絶対値を図1に、および図2に年間の上昇値(ΔCO2)を示す。 

図1 ハワイマウナロアと南極氷床コアのCO2データ連結
縦軸:大気中CO2(ppm) 横軸:西暦
図2 1851年以降の大気中CO2の年間増加値
横軸:西暦、縦軸:ΔCO₂、該当年のCO2濃度-前年のCO2濃度

図1ではグラフは一見スムーズに見える。しかし図2では説明不能のΔCO2の数値が多数みられる。1959年以降ではΔCO2は変動しながらも一貫して上昇し、減少する事はない。更に1959年以降のΔCO2は最大でも約3ppmである。

 一方、1958年以前では約5ppmの上昇や、約3.5ppm減少している年が複数見受けられる。こういったデータにより、データの正確さに疑問を呈せざるを得ない。これらの再現値が正しいなら、実際には産業革命以降、大気中CO2が減少した年が現実に多数存在した事になる。つまり人類による排出が常に蓄積してきた、という発想は否定される事になる。

 更に同様に、上昇した年において、根本的な問題が明白になる。当時の人類の排出量 (OWID, [17]) が全て大気中に残留するとしても、起こり得ないΔCO2のデータである。

 最も印象的なのは、1873年のΔCO2の4.9ppmである。このΔCO2に該当する1872年と1873年のデータは元のエクセルに記されている(NOAA, [18], Excel® sheet “CO2 Composite”)。各々、286.66ppm(77.17 yr BP, BP=1950)と291.56ppm(76.26 yr BP)である(念のために明確にしておく、これらは筆者の阿藤が計算したものではない)。これらは表1、表2にも示している。

 そもそも人類の排出量が初めて7.8Gt(ギガトン、大気中CO2換算、1ppm相当)を超えたのは1913年である(OWID, [17])。それ以前に年間で1ppm以上上昇することは、産業革命後のCO2上昇の原因が全て人為としてもありえない。

 一方、CO2が低下する年についても問題である。何故この時代に自然がそれだけ吸収したのか、合理的な説明はできない。NOAAによると現代の南極の大気中CO2の年内の変動は最大で約3ppmである(NOAA, [21,22]、図3)。更に氷床コアによる再現では、前後の期間の値が平均化された数値と想定されている。故にいずれにしても、図2で示す1958年以前のΔCO2はありえない。そしてより大きい変動は相対的な年毎の測定の不正確さとしてのみ説明できる。それは絶対的なCO2値を特定するための付加的なエラーとは無関係にである。

図3 全世界の大気中CO2データ(NOAAより引用)(a)は世界各地 (b)は南極のみ

そしてこれらのΔCO2の現象から更なる問題が浮上する。最も若い部類の氷床コアデータであっても、こういった説明不能の現象が発生している事である。この事実は、Jaworowski氏が指摘していた、氷床コアによる大気中成分の濃度再現における様々な限界が露呈している事を証明する。より古い氷床のデータであればなおさらであろう。Jaworowski氏による指摘は後にまとめる。

 こういった現象は、前回の報告で筆者 (Ato, [12])が1958年以前のデータを含めて分析しなかった理由でもある(付録を参照の事)。当時の人類の排出量で説明できないΔCO2が多数ある為、多変量解析による分析に用いるのは不可能の為である。仮にこれらの数値を用いて行うと、誤った統計解析にしかならない。

3.280ppm理論における人為CO2排出の累積量と自然が吸収したとする吸収率の矛盾

 IPCC第六次報告書では(SAR)(IPCC, [1])、1750年ごろ以降の温室効果ガスの増加は、疑いの余地なく人類が起こしたと主張する。更には過去60年間において、ほぼ一定のペースで、人類のCO2排出の56%が海や陸地に流出していったとしている。

 しかしながら、この説明や前提となる当時のCO2濃度(280ppm)、も単純な数値の検証で矛盾が判明する。IPCC6次報告書の第一作業部会の第一報が2021年の発表の為、この年までのデータで考察する。大気中CO2濃度はハワイマウナロアのデータを基準とする。

 1959年から2021年の間に大気中CO2は100.43ppm上昇した。その間に人類が排出したCO2は225.69ppmに相当する(土地利用変化=LUC含む、1760.39Gt÷7.8=225.69、1960年~2021年)。よってこの期間での残留率は44.5%(吸収率は55.5%)である(100.43÷225.69)。故にこの部分では正しい。

 続いて1959年以前のデータを検証する。LUCを含むデータが1850年以降しかない為、まずここまでのデータで次の検証をする。

 1850年から1959年の排出量はLUCを含めて768.45Gt(98.52ppmに相当)である(図4)。仮にこの期間の仮定された自然の吸収率が55.5%であるならば、1850年の大気中CO2は272.14ppm(315.98-98.52x0.445)と仮定できる。 

図4 人類によるCO2排出量(1750~2022年)
縦軸:排出量CO2換算(ギガトン)、横軸:西暦
青:化石燃料のみ、オレンジ:土地利用変化を含む

この時点で280ppmを下回る事になる。故にこの時点で矛盾が発生している。1850年の時点で280ppmとなる為には、残留率は36.5%と仮定される((315.98-280)÷98.52≒0.3652)。しかし、1960年以降で残留率がほぼ一定して44.5%だったにもかかわらず、そこから以前の110年間では平均36.5%になる事の合理的な説明は不可能である。

 しかも1849年以前も数値的には不明とはいえ、LUCを含めた人類の排出は確実に存在する。故に1750年~1959年の残留率は36.5%をさらに下回る事になる。

 更には量的にも矛盾が明らかである。1960年~2021年では地球の自然環境は年平均で15.76Gt(1760.39x0.555÷62)のCO2を吸収していると仮定できる。

 一方1850年の大気中CO2を280ppmとし、かつ1750~1849年も280ppmに安定していたと仮定しても、1850~1959年では年平均で4.44Gt(768.45x0.635÷110)しか吸収していない。そしてこの場合、1750年から1849年の残留率は0%となる。

 こういった劇的な差が1959年以前と1960年以降で発生している事の合理的な説明は不可能である。別の表現をすれば、自然による吸収率を、人類の排出量のレベルに対する概ね一定した比率で解釈する事の限界を示している。更には前項の図2で示した通り、氷床コアによるCO2再現データが正しいとすれば、1959年以前については人類の排出量に対する自然吸収比率(若しくは海と陸への流れ比率)の発想自体が成立しない。

 現実には、大気中CO2濃度は自然と人為による流入と流出のバランス、そして関係する自然条件により決定され、そして自然の流量が支配している。それはSalby氏やHarde氏(13)、Berry氏(15)らが指摘した通りである。

 したがって、この視点の考察でも、産業革命時の280ppmという数値に信頼がおけない事が示された。そしてこの矛盾は、Beck [23])やHarde [24]らの報告の正当性を支持する一つの根拠にもなる。Beck[23]は極めて正確な化学法による当時の大気中CO2濃度が、氷床コアのそれより数十ppm高値だったと報告している。そしてHardeはBeckによる化学法によるCO2再現値の妥当性を確認している(Harde、Figure 2 in [24])。

 更に海表面温度(SST)で予測できるΔCO2と、仮定されている自然の吸収率を比較する(図5)。

図5 海表面温度によるΔCO2と、自然が吸収したと仮定される吸収率の比較、 1959年以降
図内の回帰式の“x”は西暦 縦軸:仮定の吸収率(%)横軸:西暦
(青)ハワイの実測値, (オレンジ) UAH-SST, (赤)HAD-SST, (ピンク)GISS-SST、
仮定の吸収量(%)=(人類の排出量-予測ΔCO2)÷人類の排出量x100、
実測値(青)は(人類の排出量-該当年のΔCO2)÷人類の排出量x100、
人類の排出量はppmに換算(1ppm=7.8Gt)、
各SSTにより推計されるΔCO2については既出報告を参照の事、
2021年までの検討にすることも、IPCC6次報告書の初版の年度に合わせている。

SSTによるΔCO2予測の詳細は、筆者による前回の報告で説明している(阿藤、[12])。アラバマ大学ハンツビル校によるSST(代替指標)で推計されるCO2吸収率は、ハワイで計測されたΔCO2実測値から仮定される吸収率と比較して、約10%高値となっている。ただし変動の全体的な傾向は似通っている。一方、イギリスハドレーセンター(HAD)と、NASAゴダード宇宙科学研究所(GISS)由来のSSTで推計される吸収率は、近似している。

 またHADとNASAによる仮定吸収率の変動はハワイのそれに比して小さい、しかし傾向は近い。しかしながら、特に1963年~64年から以前においての乖離の可能性は示唆できる。この部分の乖離は、特に1960年代から以前の全世界の海表面温度の計測および統合における精度の限界を裏付ける。

4.21世紀初頭の大気中メタン濃度の減少が意味する事

近年の大気中メタンの上昇も人類の責任とする論調が頻繁に見られる。しかし前回筆者 (Ato, [12])が示した通り、この数値は21世紀に入り2回低下した(図6、NOAA, [25])。

図6 近年の大気中メタン、図はNOAAから引用

これは人類が大量に放出している現代で実際に起こった事である。人類の排出が全て大気中に残留すると仮定すれば、21世紀以降では最低でも年間で100ppbは上昇するはずである(Ato, [12])。しかし実際には低下した年がある。しかも年間の変動値には一貫性がない。

この現象は少なくとも3つの事を意味する。

一つ目に、地球のメタン循環においては、自然の影響は現代の人類の影響を遥かに超越する事である。

二つ目は、近年の約10ppb程度上昇している数値ですら、人類の影響とはもはや言えなくなることである。これは、実際に低下した年がある限り、そして自然が人間の排出量を超越した年が実際にある限り、起こることである。

3つ目は、この現象はCO2の再現値と共通している事で、この意味は後に説明する。

全ての年におけるメタンの上昇が、人類が輩出したメタンが原因とするなら、少なくとも全ての年で一貫して、かつ同程度上昇しなければ矛盾する。したがって、メタンが産業革命前後から約1000ppb上昇したとするIPCCによる代表的なデータも矛盾を示している(阿藤、[12])。

人類が大量に排出している現代でさえ、大気中メタンが実際に低下した以上、以前の排出量の少ない産業革命後の時代に、約1000ppbが蓄積して上昇したとは想定できない。

更に三つ目の側面の説明になる。このメタンの様相から、大気中CO2の再現値に疑問を呈せざるを得なくなる、産業革命後から急上昇する変化が共通している為である(図7、IPCC, [26])。

図7 メタンとCO2の再現値の共通する現象
画像はIPCC4次報告書を引用

これは氷床コアによって再現されたデータを、現代の測定値に年代移動して連結したためである。しかし氷床コアによるメタン再現の矛盾が明らかになった以上、CO2についても同様の現象の可能性を考慮しなければならない。つまり、この方法の妥当性を検証せざるを得ない。

 5.CO2及びメタン値の氷床コアによる再現値に関する1980年代の報告の相反

 当セクションでは、CO2とメタンのデータ連結に関する、1980年代の初出の論文について見直すことにする。

 このテーマにおける重要な報告の初出はメタンからである。表3に全体像を示す。 

表3 氷床コアによるCO2およびメタンの再現とデータ連結に関する
1980年代のカギとなる報告の要点

最初に1982年にメタン再現のグループが報告し(Craig et al. [27])、グリーンランドのデータを現在の計測値に連結した。この報告では炭素同位体による気体の年齢に関する厳密な検証はなかった。

 続いては、CO2の再現に関する2本の報告である。1985年の報告では(Neftel et al. [28])、南極の氷床コアによる再現値を報告した。

 更に1986年の報告では (Friedli et al. [29])、このデータを83年、現代に移動させ、現代のハワイの高精度データと連結した(図8、オリジナルは元の論文の図1、[29])。

図8 氷床コアと高精度な現代のCO2の連結を行った図
引用は文中および表3の通り図8の内部の説明:ここではbのみを引用している、
縦軸はCO₂濃度、横軸は年、解放の○はSiple基地での氷床コアから得られた気体によるCO ₂ 濃度、
閉じた●は南極基地。十字架(+)はマウナロア(ハワイ)の直接の大気サンプルの結果。

 この論文では、冒頭に「近年に近い過去の良好な氷床コアの記録を得るための前提条件は、良好な時間解像度を満たす高量の(氷床の)蓄積であり、そして夏季の融解がない事である(溶解水はCO2に干渉する)。」と記載している [29]。そして今回の研究[29]ではその条件を満たしており、かつ炭素同位体の分析から、年齢移動に矛盾がないと筆者らは結論した。

 しかしながら1985年の論文では [28]、冒頭で「明確な融解層は、一つ、不規則な厚みで(2~10mm)表層から7m下部、サンプル全域に見られた」と記載していた(P45, 左コラム)。なおこのサンプリング地(Siple)では年間の降水量が500kg/平方mとも主張している。つまり年間で約0.5mの降水(降雪)である。

 故に氷の掘削の約14年前に融解層が発生していた事になる。したがって、当論文のデータの元となる掘削の年度(1983年~1984年の夏に作業[28, 29])から考えて、この層の直下(7m以下)の氷床内の気体が閉じ込められたのは、どれだけ若くても1970年以前になる。

 一方、この1985年の論文では [28]、地表下68.2~68.6mのサンプルの氷自体の形成年は1891年とした一方、含んでいる気体は1962年~1983年のものとしている(Table1 in [28])。

 しかし、1970年前後かそれ以前にサンプル全体にわたって明確な融解層が発生していた。故にその年以降の気体がそれより下部(7mより下層)に入り込む事はあり得ない。

 更に筆者らは、各年代での季節変動とCO2再現値の相関により方法の妥当性を主張している(論文の図2, [28])。しかしながら、地下82.4m前後の地点で、長く見て数か月の差でありながら(氷床の厚さ数cmの差から、実際にはほぼ間違いなく1,2か月、当論文には地下82~83mのサンプルは1867年に形成と[28]のTable1に記載)、約15ppmの差が発生しているデータがある(図9、図の由来は[28])。かつ変化をスムーズ化して評価しても、氷床の10㎝程度の差で5ppm以上は変動している(図9)。

図9 氷床コアによるCO2の季節周期性の図
引用は文中および表3の通り 赤とピンクの補足線は筆者が追記した
「この図のデータの由来の氷は1867年に形成された」と元論文のTable1に記載されている。
図9内の説明:ここは元論文の図2のaのみを提示、
5つの深度の間隔からの詳細なCO2記録(上側)、
氷の季節性の証明としてのδ18Oと共に示している(下側)

 またこういった差の発生(10~15ppm)は引用した (a) 年代の図だけでなく、他の年代でも同様に見られる(b~e, [28])。

 しかし現実には現代の南極でさえ、年間の最大の差は3ppm程度である(図3)。氷床内の気体の各成分の濃度は、封じ込められるまで平均化される前提であるならば、このような劇的な差は発生し得ない。説明不能の現象が発生していると考えざるを得ない。これはセクション2で説明した、氷床コアによる不可解なΔCO2と同質の現象ともいえる。

 更に86年の論文では [29]、海洋からのCO2の放出は大気中のδ13Cの変化には殆ど影響しないと主張している。炭素同位体の比率が、大気と海洋から放出されるものは非常に近似している為、と説明している。

 しかし現実には、δ13C (C13/C12の比率、もしくは標準からの‰の差)の濃度は海洋や生物圏も大気より低い(Spencer, [30], Koutsoyiannis, [31], Ollila, [32])。こういった経緯と現象から、氷床コアによる再現値と年齢移動に関する問題が改めて示唆される。

 続いて1988年のメタンに関する続報について述べる。この中で筆者のCraigらは(Craig et al. [33])氷床コアのメタンの年齢移動は炭素同位体の観点から問題があると記載した。最も若い氷床コアのδ13Cと連結する現代(1980年)に実際に計測されたメタンのそれが大きく乖離している為であった。

 図10にこの筆者らが実際に記載していた説明と補足を図と共に記す。そしてメタンの再現グループは、この観点での、CO2再現のグループとの相反も指摘していた。彼らは事実上、氷床中の気体の年齢移動を不合理と判断した事になる(表3、図10)。

図10 氷床コアと現代の大気中メタンにおけるδC13の乖離
図や説明、関連する説明文の引用元は表3および引用の通り

<内部の説明>
図2:グリーンランドの氷に含まれるメタンのδ13C値とそれを囲む氷の年齢との関係。各サンプルは、25kgまでの氷から抽出された0.002cm3まで(STP)のメタンである。▲はCrete基地Aサンプル、○●はDye3基地の氷床コアのサンプル、●は固まった氷、○はワッファー状の氷。二つのサンプル群(*ここでは-49.6前後の4個x2の8個のデータを指す)の平均値は0.6‰のみの差である:310年前で -49.3±0.2 ‰(○と▲)、120年前で-49.9±0.3‰(●)。 この0.6‰の差は有意ではない、それはこの8個の良好な試料のセットの平均値は-49.6±0.2‰である事と、各データポイントでの誤差が±0.7‰、という観点からである。[二つの試料群と全ての試料セットの誤差は平均値を考慮、1980年の大気のδ13Cの不確実性は±0.2‰]

<1537ページの関連する本文の抽出>
したがって、Dye3に閉じ込められた空気は、それが封じ込められた氷よりも90年若いと仮定した。SchwanderとStaufferも同じ結論に達した。しかし、同位体のデータは、空気と氷の間にこのような大きな年代の差があることを否定しているようだ。図2(この図の事)に示すように、Dye3におけるこれほど大きな年代差は、過去10年間に同位体組成が2‰変化するという、極めて急峻な変化率を必要とする(つまり、100年前の氷が10年前の空気を含む場合)。このような大きな変化は不合理に思える。

 更にこれらの一連の研究の中で考慮すべき問題がある。CO2再現グループの1986年の報告で、明らかに表層近くに融解層があったにもかかわらず、気体の年齢移動を行った事である[28, 29]。しかしながら、CO2の再現グループはこの方法と再現値を妥当と述べた。こういった研究過程に対して、Jaworowski氏は綿密に問題を指摘してきた。

6.Zbigniew Jaworowski氏による氷床コアによる気体濃度再現の限界への指摘

 極地の氷床コアによる過去の気体濃度の再現には次の前提がある(Jaworowski et al. [34~36])。

 1)平均気温が-24度以下の極地の状況では、液体は存在しない

2)氷床内における気体の固定は、捕らえた気体成分の分離(変化)は起こさ無い、機械的な過程である

3)捕らえた最初の時点の気体の成分は、無期限に同様に保たれる

4)気泡の年齢は、その場所の氷の年齢より若く、数十年から数千年の差がある

 これらの前提は、次のようにまとめてもよいであろう。

 氷床中のある部分が完全に外気から遮断されるまでは、気泡は外気と入れ替わる。しかし一度閉鎖されれば完全に閉鎖される。故に時間差が発生する。そしてその後は、気泡は永久的に化学的・物理的変化は起こらない。

 しかし、この前提の欠陥を、Jaworowski氏は1992年初頭に執筆した2本の論文で詳細に指摘した [34~35]。更に1994年にも簡略化した総論を執筆している [36]。Jaworowskiが指摘した内容の全体像を表4にまとめる。

表4 Jaworowskiが指摘する氷床コアによる再現法の問題点

現実には気体濃度の再現に影響し得る、約20もの化学的、かつ物理的な過程がある。そして彼はこうも指摘している。 

【この方法の基本前提、「最初は上層の気体が数年~数千年混ざり合い、一度閉鎖された後は一定し変化も起こらない」事を証明する実験による証拠はない」】

 ゆえに極地の氷床コアによるCO2濃度の再現値は、全体として30~50%の過小評価が発生していると結論した。

 更には実際に数値を再現する時に氷を溶かして気体を開放する方法と時間によっても、数値が劇的に変化する事も指摘している。そして上記セクション4で示した通り、現代のメタン濃度が低下した事から、氷床コアによる再現値の欠陥が明白になった。

 更には、産業革命から一気に濃度が上昇する現象は、メタンもCO2も同じである。つまりCO2も同様の問題を本質的に抱えている事になる。

 更に、Jaworowskiはこの分野における統計学的な確認が殆どされてこなかった事も指摘していた [36]。実際、上記セクション2とセクション3で示した通り、CO2の再現値や産業革命前の280ppmという前提の矛盾が明らかになった。特に図2が象徴する説明不能の現象から、氷床コアによる気体濃度再構築の前提条件を満たしていない事は明白である。更に当筆者による前回の論文は、まさに統計学的な確認方法である。ならびに、この論文のセクション8と9も同様である。かつJaworowski氏の懸念の正しさを証明する証拠の一つでもある。こういった理由から、Jaworowskiによる指摘の蓋然性が支持される。

7.過去の劇的な気候変動時における南極氷床コアCO2データの問題

 グリーンランドによる気候再現データでは、現代よりも遥かに大規模の気候変動が発生していた事が、酸素同位体δ18O2 のデータで明らかになっている(Badgeley et al. [37])。100年以内の摂氏2~3度の変動は一貫して見られる(図11)。

図11 グリーンランドにおける気候再現
(a)1万年前まで (b) 3万年から5万年前 (c) 現代から12万年前まで
North Greenland Ice Core Project 縦軸はO18(パーミル)、
横軸は年代(0=起点は2000年) 縦軸のスケールを変えている事に注意、
データ引用元は本文の通り

 これは現代よりも遥かに温暖だった完新世最適期でもそうである。更に氷河期時代には10度前後以上の変動も多数見られる。

 ここで現代の気象衛星データにより、北極圏と全世界の対流圏低層の気温を比較する。全世界では北極圏の半分強の変動であることがわかる(Figure 12, Spencer, [38])。1978年12月以降の10年間のトレンドは全世界が0.16度、北極圏は0.26度であった。

図12 気象衛星による北極圏と全世界の気温(対流圏低層)
縦軸は気温(℃、1991年から2020年の平均に対する差)、横軸は年
1978年12月から2024年9月まで

 故にIPCCが提唱してきた現代の100年あたり全世界で0.8度程度の上昇は、全くもって異常とは言えない。むしろ自然変動の範囲と言える。

 そしてヤンガードリアス期前後では、各々3年及び50年程度で10度程度の急激な温暖化が発生した事が明らかになっている(Steffensen et al. [39])。更に同時期の激変は、日本の福井県の水月湖の気候再現データから明らかになっている(中川ら、[40])。しかも、少なくとも後期の激変期は(A.D.2000から約11700年前)、年代がほぼ一致していた(中川ら、[40])。

 つまり、少なくともこの年代には、世界的に同時に劇的な温暖化が起こった事になる。当然、この時代には、現代のような大量の化石燃料の使用はない。ゆえにCO2の変動の有無とは無関係に、気候は劇的に変動する事が明白になる。しかも現代の変動の大きさを遥かに超越してである(故に改めて、100年で約0.8度は異常とは全く言えない)。

 更にこの当時のデータから氷床コアによるCO2再現値の問題が浮かび上がる。この時代の南極氷床コアによるCO2値と、グリーンランドにおける気温変化を図13に示す。

図13 グリーンランドにおける気温と南極CO2の再現
NGRIP、縦軸はδ18O(パーミル)、
CO2のデータセットは表1、2、図1,2で使用したものと同じ
NGRIPにおける 高解像度のデータ(1年毎)はサイエンス論文のサプリメントファイルから、11551年~11850年、12651年~13150年、14551年~14850年
他の年は図12と同じ引用元 横軸は年代(0=は西暦2000年)
CO2の年代はエクセルでは西暦1950年を起点としているが、
50年追加して西暦2000年起点としてプロット
CO2は月も10進法で提示されているが、その年のデータとした

 CO2の大幅な変化が目視上は気温上昇の100年弱の後に発生している。しかしこの時間差自体は、現代の計測データの観点から問題が示唆される。

 図14に2024年9月から10月にかけての、ハワイマウナロアでの日内変動を示す (NOAA, [41])。

図14 ハワイ、マウナロア観測所における大気中CO2の日内周期変動、NOAA、
この図は2024年10月8日にダウンロード

この変動は大半が周辺の海表面温度の変化によって起こっていると考えられる。ハワイ諸島地域には光合成をおこなう植物は各大陸の様な量では存在しない為である。ゆえに、海表面温度の変化による大気中CO2の変化は、限定された地域ではリアルタイムで発生すると考えられる。そして図3(a)が示すとおり、大気中CO2濃度は、北半球と南半球では季節による逆転現象はあるが、経年変化は同等である。

 したがって世界的に劇劇な温暖化が発生した場合には、年単位では、タイムラグなく同様の現象が発生すると考えられる。海洋からのCO2の放出が発生している筈だからである(こういったイベントでは、海洋と大気の比熱の関係から、当然、海洋の温暖化が先行している為)。

 近年のデータでも、地球規模では、Humlumは海表面温度→世界表面温度→対流圏温度→大気中CO2の順番で変化する事を証明している(Humlum et al. [14], Humlum, [42])。各時間差はHumlumの分析では、各温度では1~3か月程度、SSTとCO2では約1年である。ゆえに、図13での約100年の時間差は不自然と考えられる。

 なお更なる矛盾も考えられる。3年や50年で10度も一気に温暖化した時代の(世界的に平均的に5度と考えても)、CO2の10ppm程度の上昇である。しかも後期の激変期は、その後の気温はそれが数百年、安定していた。この10ppm程度の上昇値についても、Jaworowskiが指摘した過小評価という現象の考慮が必要であろう。

 また一般論では、氷床コアの解析では、気温変動の数百年から数千年の後に、CO2が追従した、という説明がなされてきた。この「大きな時間差」という認識自体の再検証も必要であろう。更には、氷床コアによる気体濃度再現値は両極で顕著な差がある(図15、Anklin, [43]の図2)。 

図15 両極におけるCO2再現値、Anklin 1997年を引用
<内部の説明>
GRIP氷床コアのδ18Oプロファイルと氷河年代[Johnsen et al., 1992]、グリーンランド(GRIP, Dye 3)と南極(Byrd, Vostok)のCO2プロファイルとガス年代。○(IRLS法)と▲(容積法)はBern(研究所)で得られたCO2の平均値、■はGrenoble(研究所)で得られたGRIPとVostok氷床コアの平均値。すべてのCO2プロファイルは、約2万年前のLGM(前回の表が最大期)から完新世(縄文時代)までCO2値の増加を示している。GRIP氷床コアでは、同位体温度によって示されるように、最終氷期の穏やかな時期にCO2濃度の上昇が測定されている。1万6千~1万年前と、2万千~1万7千年前の間のCO2濃度(IRLS測定値)から、それぞれ2本の直線回帰線が計算されている。

これまでは南極が数値としては絶対値が若干小さく、かつ変動が小さい事から、この数値を基準とされてきた。しかし、数値の安定自体は精度を必ずしも保証するものではない。南極のデータの問題は、上述のセクション2と3で説明した矛盾だけではない。現代に近い1850年以降の再現値において、それがむしろ不自然に不安定である事も同時に明らになった。そして古気候の範疇では、時間解像度と低感度の問題も考慮すべきである。

 図3で示した通り、人類が過去に比較し大量にCO2を放出しているとされる現代でさえ、年間の大気中CO2の平均値は両極で大差ない。Barrow(図3の青いドット)はアラスカの北極海側の地点であり、年内の変動は南極を大きく上回るが、平均値的には南極と大差はない。この差は回帰直線の比較で約5ppmである(図16、NOAA, [22,44])。 

図16 Barrow(北極圏)と南極における現代の大気中CO2
青はBarrow、オレンジは南極、2014年1月から2023年12月まで、
点線は回帰直線(最小二乗法)

よって古気候の範疇においても少なくとも年間の平均値では、両極で顕著な差はないと考えるべきである。しかも氷床コアの場合、再構築理論によると複数年での平均化された数値が再現されている。しかしながら、グリーンランドと南極のCO2再現値には明らかな差がある(図15)。

 まず、南極のCO2が明らかにグリーンランドより低い。この差は明らかに上述の5ppm以上である。そしてグリーンランドのデータは変動が顕著である。故に、むしろグリーンランドの方が、精度の問題を考慮しても、当時の劇的な気候変動をより反映していると考えられる。理想には程遠いが、少なくとも南極よりかはである。

 それでもなお、グリーンランドのデータも同様に、過小評価を考慮するべきであろう。なお、Clintelは過去の大気中CO2濃度に関する研究を集約した記事を提示している(Hannon, [45])。図17にその内容の象徴的な図と結語部を示す。最後の文節にはこうかかれている。 

図17 Clintel、Hannon氏がまとめた各再現法によるCO2

「氷床コアと植物気孔のCO2記録は不完全なデータであるため、全球CO2コンポジットは百年スケールと千年スケールの決定論的測定値の両方を含むべきである。おそらく、南極のCO2コンポジットが異常値であり、極端な南極の気温と埋没条件によって抑制され、平滑化され、淡色化されているのだろう。現代の大気中CO2の変動はさほど珍しい事ではない」。

 そしてJaworowskiの主要な指摘を踏まえると、他の評価法においても過小評価の可能性は考慮すべきである。特に近代以前(例えば中世温暖期を含めてそれ以前)の気孔や化学法による推計も含めてである。

8.当ジャーナルにおける小職の前回の報告のアップデート

 Atoは以前の当誌への報告で次の報告をした(Ato、[12])。

 「多変量解析により、海表面温度SSTのみが大気中CO2の年間変化値を独立して規定する因子となり、人類の化石燃料使用量はならなかった。」

 この結果には、蓋然性がある。CO2の水への溶解度は、世界の一般的な海水温の範囲ではほぼ直線的に変化する為である(図18、Carroll et al. [46], Abas et al. [47])。

図18 CO2の水への溶解度(1気圧) 図の由来は本文の通り、
青字による追加の矢印は当筆者による

 前回の報告ではOWIDからは2021年までのデータが公表されていたため、多変量解析はその年までのデータで行った。当論文の執筆時点ではOWIDは2022年までが入手可能のため、この年までのデータで多変量解析を行う。

 大気中CO2とSSTは2023年まで公表されている。SSTによりΔCO2の予測が、この多変量解析の結果より2023年までできる。よって2023年までのΔCO2の合計値について、公表値とSSTによる予測値の差を比較する。更に今回は人類の排出量に関して、化石燃料のみ、およびLUCを含む排出量も使用する。

 解析手順は前回の報告と同様である(Ato, [12])。SSTも3種類用いた。なお、当アップデート解析において、ΔCO2は新たに入手したデータで行った(NOAA、[20],日本時間2024年6月2日ダウンロード)。2017年以降のデータで、微妙な修正があった(0.01~0.02ppm)。更に次セクションのΔCO2操作による検討も、ΔCO2はこの新たに入手したデータで行った。

 図19にΔCO2に対するUAH-SSTと人類の排出量のdiagramを示す。全体的に前回の報告と同じ様相を示している。ΔCO2とUAH-SSTのDiagramは2023年まで示している。

図19 ΔCO2、UAH-SST、人類の排出量
(a) ΔCO2とUAH-SST、 (b)ΔCO2と人類の排出
横軸:(a), (b)ともに西暦、左縦軸:共にΔCO2(青い棒グラフ、ppm)
(a) 右縦軸:UAH-SST(柿色の折れ線、℃、Anomaly、1991年から2020年の平均値との差異)、
(b) 右縦軸:人類排出量(赤色折れ線:化石燃料のみ、ピンク:LUC含む、CO2として、ギガトン)

 2023年は世界的に温暖な年であり、ΔCO2が2022年に対して倍程度であることは印象的である。人類の排出量はそれまでのトレンドから大差ない事は予想できるため(2011年から2022年の増加トレンドではFFOで0.201Gt/年、LUCで0.095Gt/年)、この面からも象徴的である。

 表5に線形重回帰分析の結果を示す。今回においても、SSTのみがΔCO2の統計学的に有意な規定因子となった。人類の排出量は説明因子とはならなかった。 

表5 線形重回帰分析の結果  B:回帰係数、
この結果の意味、1979年~2022年のデータの分析におけるUAH-SSTとFFO
の組み合わせの解析では、 ΔCO2=1.968xUAH-SST+1.780

表6に2023年までのΔCO2の合計値と、各SSTによる予測値の合計値を示す。今回の検討ではHAD-SSTと排出量FFOの組み合わせ(1.50ppmの過小予測)か、GISS-SSTと排出量LUCの組み合わせ(1.49ppmの過大予測)による予測で最も誤差が小さかった。UAHでは前回と同様10ppm程度の誤差が見られた。

表6 2023年におけるSST予測のΔCO2合計値と公表ΔCO2合計値、
単位:ppm、FFO、LUCは各々、その人類排出量

いずれにしても、前回(Ato, [12])と今回の多変量解析が示す本質は同じである。現代の人類の排出量のレベルとその年間の変動値は、大気中CO2の変動値を、統計学的に説明できない事である。そして20世紀後半以降の期間でこの結果が示された事から、人類の排出量が遥かに少ないそれ以前も同様と考えざるを得ない。故にこれまでの説明と合わせて、産業革命当時の280ppmという前提の欠陥が改めて指摘される。

9.前回報告のデータで人類排出も説明因子となるデータ操作と結果が意味する事

当分析は、線形重回帰分析の有効性を、別角度から説明する為に行う。いわばシミュレーションである。簡単のために、前回の報告で多変量解析を行った、1979年~2021年のデータのみで分析する。SSTはUAHのみを使用する。排出量は前回と同様FFOを使用する。ただしΔCO2は前述した通り、更新されたデータを使用した。ΔCO2の合計値は変えずに、各年度のΔCO2を若干平たん化させた。

 表7に変更前と変更後のΔCO2をしめす。

表7 実際、およびシミュレートされたΔCO2 (1979 ~ 2021)

図20にUAH-SST、人類の排出量、および操作したΔCO2をしめす。ΔCO2とUAHとの相関は弱まり、人類の排出量との相関が強まった。

図20 ΔCO2、SSTおよび人類の排出量(シミュレーション)
緑の棒グラフ:操作したΔCO2、他の内容は図19と同じ、
柿の折れ線:UAH、赤の折れ線:人類の排出量

 そして表8にΔCO2を目的変数とする線形重回帰分析の結果を示す。UAH、人類の排出量ともにΔCO2を有意に予測したが、人為排出量の予測力が若干上回った。このシミュレーション結果は、ΔCO2が人類の排出量の変動により近ければ、それは人類の痕跡の可能性を示唆する事であり、結果的に人為説が(少なくとも部分的にも)正しい事を証明できる事を意味する。 

表8 線形重回帰分析の結果(ΔCO2のシミュレーション)

つまり、人類が大気中CO2の増加を引き起こしてきた、という仮説である。かつ多変量解析による検討が有効であることも示す。しかしながら、現実には、人為説は統計学的に明確に棄却された事を認識しなければなりません、本物のデータを使用した場合において。

10.考察

 当報告ではセクション2と3で、氷床コアによる南極での過去の大気中CO2の再現値の問題について説明した。19世紀中盤以降の比較的若い気泡のデータでさえ、説明不能のデータが多数見られた (図2)。そして人類の排出量に対する近年の約60年間での自然のほぼ一定の吸収率、という仮説と、それ以前の変化との乖離も示した。これらは基本的な数値の考察だけでわかる事である。

 更には21世紀初頭のメタンの減少から、産業革命以降のメタンの上昇が全て人類の影響という説は否定される事を説明した。並びにこの側面でも氷床コアによる気体濃度再現の問題を明らかにした。そして産業革命後から急激に上昇するとされるデータは、CO2でも同様である (図7)。

 故に次のセクションでは、この分野の研究における、発端かつ中心となる報告の相反を指摘した (表3)。CO2を再現したグループは炭素同位体の観点から気体の年齢移動は適切と述べた。その一方で、メタンを再現したグループは、事実上、それは不可能と述べた、少なくとも彼らのデータでは。

 こういった研究過程に対して、Jaworowskiは問題を綿密かつ包括的にわたり指摘した (表4)。特に気体の年齢移動に対しては痛烈な批判をしていた。Jaworowskiは更には、氷床コアによる気体濃度の再現にともなう様々な困難をまとめていた。

 降雪から積雪、そして長期間の過程における、多数の物理的・化学的影響は不可避である。したがって、過去の状態を変化なく保存しているという前提自体が成り立たない事が示されている。特に20世紀後半以降で見られないΔCO2が、19世紀半ばからの氷床コアデータで多数見られることは、この問題を象徴している (Figure 2)。

 これらの事実から、産業革命当時の大気中CO2濃度が280ppmだった、という前提はもはや成り立たない。故にこの仮説を前提とする様々な関連研究も全て、同様に適切ではない。そして筆者による前回の報告のアップデートにより、相変わらずSSTが年間のΔCO2を唯一規定し、人類の排出には予測力がない事を示した (表5)。

 もっとも重要な事として、SSTは最終的な誤差も小さくCO2を予測出来る事も一貫している。大気中CO2の主要な規定因子は人類の排出ではなくSSTである事はほぼ間違いない。故に大量に化石燃料を使用する現代さえ、自然現象と言える。そしてこの分析は、既存の報告の正当性を支持する(Salby et al. [13]、Humlum et al. [14]、Berry [15]、Koutsoyiannis et al. [16], Beck, [23], Harde, [24], Koutsoyiannis, [31], Ollila, [32], Jaworowski et al., [34~36], Hannon, [45])。

 IPCCは人為排出による大気中CO2は、自然とは別に長期間大気に残ると主張してきた。しかしそもそも自然由来、化石燃料由来、どちらもCO2は同じものである。

 Berry [48]は炭素同位体14の14CO2 のresidence time (IPCCの定義ではturnover time)は10.0年である事を示し、よって12CO2のresidence time は少なくとも10年以下である事を示した。SalbyとHardeらは大気中CO2のResidence Timeは起源に関係なく数年であることを示した [49~52]。更に最近、Koutsoyiannis [53]も同様に、大気中CO2の残留時間は人類の排出も含めて約4年と示した。

 つまりIPCCが言うような人類の排出についてのみ、長期間(いわば半永久的)にはならないを意味する。これらの報告も今回の一連の分析と整合する[12~16, 23,24, 31,32, 34~36, 45]。

 そしてカギとなるSSTの変動は太陽による影響が主体であろう。また地球の内因的な要因も一定度関与している事も確かである。それはエルニーニョやラニャーニャ、そして火山活動に代表される。こういった地球自体の現象も短期的には影響を及ぼしている事は確実である。それらの影響度や交互作用に関する精密な分析は今後の研究を待つことになる。

 最後に今後の展望についても少し述べる。前回、そして今回の多変量解析は、あくまでも21世紀初頭までのデータを中心に実施した。現状では人類の排出量は、地球全体のCO2循環のうち、20分の1にも満たない (NASA, [54])。

 これが将来、2~3倍やそれ以上といった形で劇的に上昇すれば、大気中CO2濃度に検出できる影響を及ぼす事も有り得る、しかしこれはほぼ不可能であろう。

 そういった状況を考慮すべき一つの可能性は、前回[12]、そして今回、筆者が示したSSTによる予測値と実測値の差が広がってくる場合である。もしくは多変量解析の予測能が弱まる場合である。それは、重回帰モデルの精度が低下する、有意確率の面で弱くなる(P値が大きくなる)といった事である。もしくはSSTと定数のP値が大きくなる、人類の排出量のP値が小さくなる場合も考慮できる。その場合は人類による排出の影響の兆候を示しているかもしれない。

 それでもなお、それは人類が憂いる必要は全くなく、むしろ歓迎できる大きな事でもある。光合成と生物の増加に人類が貢献するためである[2~6]。

11.結論

当報告は現代の気候変動研究の前提となる、産業革命当時の大気中CO2濃度の280ppmという前提自体に、欠陥がある事を示した。

 280ppmという数値は著しい過小評価であることは疑いようがない。南極の氷床コアによるCO2再現値に見られる、様々な説明不能な現象や矛盾がその欠陥を象徴している。それらの原因は、氷床コアによる再現法自体が内包している限界のためである。

 CO2上昇の主要因はSSTの上昇であり、万有引力のように作用している。そしてもちろんの事、光合成や呼吸といった地球の各要因によるCO2循環と、それらに影響する気温も含めての全体的な作用の結果でもある。更には、人為排出は統計学的な見地により、有意な影響を及ぼしていない。

 故にCO2上昇の大部分は自然現象である。SSTに変動を及ぼす外的・内的要因と影響度の分析は、今後の更なる研究が待たれる。

当研究への資金

筆者は当研究に対する一切の助成を受けていない。

利益相反についての宣言

筆者は当研究に関わる利益相反を有さない事を宣言する。筆者である阿藤大、自立した個人の研究者、は日本国憲法によって日本人に保障されている、学問の自由(第23条)および最高法規(第98条)にのっとり、学術活動として当論文を執筆した。

データの共有

当研究で使用したデータセットはサプリメントファイルとして提供されている。

Guest-Editor: Stein Storlie Bergsmark; Reviewers: anonymous.

 謝辞

筆者は、当研究に関わるデータと知識を提供くださった、全ての施設と研究者に感謝する。

付録

前回の論文(Ato, [12])に対するインターネット上で見られた典型的なミスインフォメーションへの指摘

1.相関は因果関係を証明しない、という一言のみの主張(よって当報告は誤り、と示唆)

相関のみでは因果関係を証明できないのは科学の常識である。しかしその相関関係の背後に明確なメカニズムがある場合では、因果関係を考慮する事は可能である。上述したとおり、水温とCO2の溶解度には因果関係があり、地球の海洋の水温の範囲では直線に近い関係を示す(図18)。

実際にΔCO2とSSTには強力な直線的相関関係が見られた。そして最も重要な事として、人類による排出量を同時に多変量モデルに投入したが、しかしながら、排出量は規定因子とならなかった。本当に人類の排出量が毎年のΔCO2を左右しているならば、それが統計学的にも示されるはずである。セクション9のシミュレーション結果もそれを示しているが、現実世界ではそうではなかった。故に、分析したデータの範囲では、SSTがΔCO2に対する因果関係を有する、と論理づける事に問題はない。

更に「相関は因果関係を証明しない」を強調する人々には次の事項が概ね共通している。まず、人類の排出量に予測力が全く無かったことへの言及が全くない事である。更に、「相関がない場合、しかも適切な関連因子や交絡因子で調整した後でもそれがない場合、因果関係は否定される」事も科学的常識であるが、これも無視している事である。それは、多変量モデルでSSTに敗北した人類の排出量の事である。

2.強力な相関を阿藤が強調している様に見せる論評

上述の通り、相関のみでは因果関係の証明にはならない。しかし、予測精度の客観的指標として相関係数を記載する必要はある。更に前回及び今回の報告では、共に予測式による最終的な誤差を同時に示している。最終的な予測値が大きく離れている場合、その予測式は適切とは言えない。

強力な相関は最終的な誤差が甚大でも同様に見られる事例を示す(図A1)。これは単純にHAD-SSTによるΔCO2予測値を半減させているだけである。しかしながら、このようにPearson相関係数としては同じである。故に相関が強い事だけでは当然、予測式が正しい事を保証しない。最終的な誤差も重要である。

図A1 HAD-SSTによるΔCO2を半減した場合の予測CO2と実測CO2との比較 (1959~2022)
ΔCO2の半減値はHAD-SSTで計算、(a)実際の大気中CO2とシミュレート(半減ΔCO2)された大気中CO2、ΔCO2=(2.006xHAD-SST+1.143)/2で計算 (b)実際お呼びシミュレートされた大気中CO2の年次変化、2022年の差は51.99ppm。実際のCO2は前回のデータと同じ(NOAAから2023年8月27日にダウンロード)。相関係数は1960年から2022年で行っている(1959年は含まない)。1959年を含まない理由は、1959年のΔCO2は全幅の信頼がおけない為である。それはハワイの計測は1958年の全てでは行われていないからである。

前回の研究は、データ精度の観点からは1979年以降のUAH-SSTのみで行った。1978年以前ではUAH-SSTデータはない。重回帰分析の結果は衝撃的ではあったが、2022年において考慮すべき誤差が発生していた(14.5ppmの過小評価)。しかし、人類の排出量が棄却されたことはそれ以上に重大である。

従って、1959年以降のHAD-SSTとGISS-SSTを使用して、結果を確認するただけに追加の多変量解析を行った。従来のSSTには地表計測と類似した、計測およびデータ統合の問題をはらんでいる。しかし同様の結果が得られるかどうかの確認は必須であり、かつ意義がある。HADとGISSの変動はUAHに比べて小さいが、トレンドは近い為(Figure 2 in Ato, [12])分析に値すると判断した。

そして同様の重回帰分析の結果が得られた。更にHAD-SSTによる予測値との誤差がHADで1.45ppmと精度的に満足できるレベルであった。1959年以降で約100ppm上昇したうちの1.45ppmだからである。仮にこの誤差がUAHと同様の大きさであるなら、SSTだけでは説明できない他要因を考慮すべき事になる。

故に前回及び今回の分析において、相関係数のみならず、同様に重要である最終的な誤差を同時に記載した([12]のアブストラクト、本文、図4)。しかし誤ったネット上の論評では、そのことに気付いていないか無視している。

3.あまりにも高い相関はむしろ誤りを示すという指摘

上述の通り、前回及び今回の報告では、線形重回帰分析の結果に基づいて得られた係数と定数によりΔCO2を推計した。しかもそれは、人類の排出量を絶対的に棄却した上での結果である。故に予測式は適切である。実測値と予測値の相関係数が著しく高くなった事は、分析による確固たる結果である。故にこの事自体を、分析の誤りを主張する根拠にはできない。

4.言い掛かり:1959年以降のデータのみを考慮したのは、それ以前のCO2とSSTの乖離を隠すためという指摘、どこで、かつ何故、阿藤が失敗したのかを説明せずに

セクション2でも少し触れた通りである。1958年以前の氷床コアによるΔCO2データを分析に用いることは不可能の為である。当時の人類の排出量では説明できないΔCO2が多数みられる以上、これを用いた統計解析は行えない。しかもそれを公表する事は、人工的に誤って作り出した統計結果を拡散する事に等しい。

5.阿藤[12]は望む結果を導くために、データや数式の調整(もしくは操作)を行った

これは言い換えれば研究不正を行ったという意味である。これは軽薄であるだけでなく、著者の名誉を傷つけることを意図した非常に深刻な非難である。データは添付したエクセルのデータセット[12]で提供されている。用いたデータはたった7種類の変数で、しかも60年程度分でしかないため(CO2, ΔCO2、SST3つ、人類の排出量2つ)、本当の専門家であれば、確認は単純かつ簡単な作業である。データ入手先も記載している。更に線形重回帰分析については、エクセルでも実行できる。チュートリアルもある。他の統計解析ソフトも同様である。

そもそも、本当に不正が存在するならば、具体的に当ジャーナル対してそういった指摘をするのが科学的な作法である。そして仮にその対応をSCCが拒否すれば、その時にこそ他ジャーナルも含めて批判すればよいだけの事である。結局のところ、具体的な箇所の指摘無しに不正をほのめかすのは、科学的に倫理的とは言えない。

6.SSTと定数のみでΔCO2をモデル化する事への批判

上述の通り、SSTとΔCO2の関係には確固たるメカニズムがある。そしてSSTは人類の排出量とともに重回帰モデルに投入し、SSTの強力な予測能が得られた。

前回及び今回の結果の本質は同じである。故に、その数値でΔCO2を予測する事は統計学的にはなんら問題はない。また他の要因(生物圏や火山活動)には、毎年のΔCO2やSST、そして人為的排出量のような精度は見込めない。

不確定要素が甚大な数値を多変量モデルに投入する事は、かえって危険である。上述の1958年以前のΔCO2と同様、アーチファクトを生み出す危険性が高い為である。しかしながら将来、他の指標の精度も劇的に向上すれば、検討の余地はあるだろう。

参照論文

1.       Sixth Assessment Report (AR6), IPCC, 2021: V. Masson-Delmotte, P. Zhai, A. Pirani et al.: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press.

2.       Oregon Institute of Science and Medicine, Year: Global Warming Petition Project http://www.petitionproject.org/index.php

3.       Singer S.F., 2008: Nature, Not Human Activity, Rules the Climate: Summary for Policymakers of the Report of the Nongovernmental International Panel on Climate Change, Chicago, IL: The Heartland Institute, 2008. https://yosemite.epa.gov/oa/EAB_Web_Docket.nsf/Filings%20By%20Appeal%20Number/5E65BBBD50EED79A85257416005ACE06/$File/Exhibit...32.pdf

4.       GLOBAL CLIMATE INTELLIGENCE GROUP: World Climate Declaration, There is no climate emergency, https://clintel.org/world-climate-declaration/

5.       CO2 Coalition, Providing the facts about CO2 and climate change https://co2coalition.org/

6.       Clima, una petizione controcorrente, 2019: https://opinione.it/cultura/2019/06/19/redazione_riscaldamento-globale-antropico-clima-inquinamento-uberto-crescenti-antonino-zichichi/?altTemplate=Stampa&fbclid=IwAR1YAoqulAKKXJTY-uzRfSEaXG6NRpVOckp3nVE7iiTAgOQu8DMHGUxRnE

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8.       Soon W., Connolly R., Connolly M., Akasofu S., Baliunas S., Berglund J., Bianchini A., Briggs W.M., Butler C.J., Cionco R.G., Crok M., Elias A.G., Fedorov V.M., Gervais F., Harde H., Henry G.W., Hoyt D.V., Humlum O., Legates D.R., Lupo A.R., Maruyama S., Moore P., Ogurtsov M., ÓhAiseadha C., Oliveira M.J., Park S., Qiu S., Quinn G., Scafetta N., Solheim J.E., Steele i., Szarka L., Tanaka H.L., Taylor M.K., Vahrenholt F., Herrera V.M.V., Zhang W., 2023: The Detection and Attribution of Northern Hemisphere Land Surface Warming (1850–2018) in Terms of Human and Natural Factors: Challenges of Inadequate Data, Climate 2023, 11(9), 179 https://doi.org/10.3390/cli11090179

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