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映画「きみはいい子」を観て考えたこと

昨日、AmazonPrimeで「きみはいい子」という映画を観ました。
呉美保監督による、2015年の作品です。
高良健吾さん、尾野真千子さん、池脇千鶴さんなどが出演しています。

いつもはデザインに関する記事を書いているのですが、どうしても書きたくなってしまったので今日は映画について考えたことを書かせてください。

ポスターが素敵です。
キャッチコピーも心にぐっときます。

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あらすじはこちら。

あらすじ
まじめだが優柔不断で、肝心なところで一歩を踏み出すことができない新米の小学校教師・岡野。近所のママ友たちとの表面的な付き合いの陰で自分の娘に手をあげ、自身も親に暴力を振るわれていた過去をもつ雅美。最近感じはじめた認知症の兆しにおびえる独居老人・あきこ。とあるひとつの街に暮らし、悩みや問題を抱えて生きるおとなと子どもたち。彼らが、人と人とのつながりに光を見いだし、小さな一歩を踏み出していく。(amazon prime videoの作品ページより

虐待、いじめ、学級崩壊、認知症など現代に蔓延る社会問題を映し出した作品です。

私は大学で社会学を専攻しており、社会問題について学ぶ機会が多いです。
普段、映画を観ても観た映画のタイトルをメモする程度で、このように感想を書くことはほとんどないのですが、社会のあらゆる問題について勉強している身にとって、この映画から考えさせられたことは書かなければいけないという気持ちになりました。
それくらい、私にとっては心に刺さる作品でした。

※ここから先はネタバレがあります。

尾野真千子さんが演じるマサミの、我が子に対する虐待シーンはあまりにもリアルで、観ているのが本当に辛かったです。

どうして子供にそんなことをしてしまうのか
マサミ自身にも虐待を受けていた過去があるのになぜ?
自身も虐待の残酷さは身を持って知っているのではないか?

どうしてもそんな気持ちになってしまいました。

映画を観終わった後に、他の人の感想が気になって調べてみると、やはり「虐待のシーンがキツかった」「みるのが辛くて途中でやめた」という声も少なくなかったです。
「ただ辛いシーンを見せて、それで何が言いたいの?」というような声も。

でも、私は決してこの映画がただ現代に起こる問題の残酷さや非情さを見せつけているだけの映画とは思えないのです。

虐待をはじめとして、社会の問題の多くは、私たちの目から見えないところで起こっているのではないかと私は思っています。
ニュースでみることはあっても、それはおそらく問題の一部分であり、ニュースで報道されてやっと知る、といった感じではないでしょうか。

映画の中でも、高良健吾さんが演じる教師・岡野はクラスのいじめの問題に、途中まで気が付くことができませんでした。

認知症の問題も、実際に高齢者が身近なところにいなくては実感することができないでしょう。

マサミも、最終的には池脇千鶴さん演じるママ友に気づいてもらうことで救いを得ますが、それまでは虐待の事実を必死に隠そうとしていました。

現在、社会で起こっている問題は、当事者やその家族、身近なひと以外からは起きていること自体は知っていても、ただ知っているだけで実際には見えていないことが多いのではないでしょうか。
確かに、自分に関係のなさそうな問題、ーー例えば子供のいないひとにとっては虐待の問題、身近に高齢者や障害者がいないひとにとっては認知症、障害の問題ーーは他人事と考えてしまっても無理はないかもしれません。

しかし、起きている問題の責任を当事者だけに押し付けるのは少し違うような気がします。問題には社会が関与していることも多くあります。
誰かが気づいていれば防げた問題、起こらなかった事件もたくさんあります。

マサミの虐待についても、
「なんてひどい母親なんだ」「気持ちが理解できない」
と感じる人は多いでしょうが、マサミ自身は、本当は虐待を隠す反面で、誰かに止めて欲しい、この状況から救って欲しいと思っていたのではないかと私は思っています。
問題が当事者以外からは見えないところで起こっているために、問題に気づく人がいない、当事者を救う人がいないという状況になっているのです。

現代の社会問題を解決するためには、見えないところで起こっている問題が現実に起こっている出来事を当事者以外の人たちも知ること、認識することこそが最も大事なのではないでしょうか。
知って、理解を深めることで、問題に気づこう、手を差し伸べようと思う人がいるかもしれません。

だから、私はこの「きみはいい子」は、ただ前半に辛い映像を流して後半に感動に持っていくという映画では決してなく、問題をリアルに、ありのままに映し出すことで、現実に起こっていることを観て欲しい、そこから何かを感じて欲しい、そしてできることなら救って欲しいというメッセージを持った映画であると思いました。
当事者に全ての責任を押し付けるのではなく、問題を生じさせている社会の歪みに気づいていこう、そして社会全体で問題を解決していこうという働きかけでもあるのではないかと、そう考えています。

社会問題に興味があるひとには、考えさせられることが多いので、ぜひ観ていただきたいなと思います。

最後に、これは内容とは全く関係ないのですが、出演している子供が演技をしているとは思えないほど、とっても自然なお芝居をしていて、非常に驚きました。まるで、どこかの小学校のドキュメンタリーを観ているかのようなリアルさです。

岡野先生が出した「家族にぎゅーっとしてもらう」という宿題について、一人ひとりの感想を聞いて回った時、普段は大暴れしている児童たちなのに、恥ずかしそうに、嬉しそうに答える様から、小学生ならではの純粋さが垣間見えて、思わず観ながら微笑んでしまいました。
小学校のシーンだけでも、みる価値があると思います。

気になった方はぜひ観てみてください。

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