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あまりにも優しい人
たいてい昔から,カップルに「相手のどんなところが良いと思いますか?」と尋ねると上位に来るのが「やさしいところ」です。
たとえばこの調査では男女に「結婚したい/付き合いたい」異性について尋ねていますが,「性格が優しい、穏やか」という回答が上位に来ます。
たとえばこんな記事も。「「こんな子と付き合えたらなぁ」と男性が恋人に求める性格」の最初に出てくるのが「相手を思いやる優しさがある」です。
このように「やさしさ」は,こういった調査の結果ではとても重要な項目で,多くの人が「優しい人が好き」と考える傾向にあることがよくわかります。
日本語のやさしさ
でも日本語の「やさしさ」というのはなかなか難しい言葉だな,と思います。
和英辞典だと,kindness,gentleness,tendernessなんていう単語が出てきます。英語から日本語に訳し戻すと,「親切さ」「穏やかさ・温和」「柔和さ」なんていうニュアンスでしょうか。
うーん,日本語の「やさしさ」そのものとはまた少し違う意味になってきそうなのですよね……。
協調性
ビッグ・ファイブ・パーソナリティの中で「やさしさ」に一番近い性格特性は協調性(Agreeableness)です。
◎他の人に共感しやすい
◎自分の利益よりも他の人の利益を優先する
◎あたたかくやさしくい印象
◎思いやりがある
◎他の人を基本的に信頼し,悪い面を見ようとしない
こういった特徴が協調性に相当します。まさに「やさしい人」に近いイメージではないでしょうか。
行きすぎたやさしさ
時々,行きすぎたやさしさについて指摘されることがあります。たとえば,ずいぶん前に指摘されていたことなのですが……
電車の中で座っていると,目の前にお年寄りが立っています。席を譲るべきだよな,でも,もし自分が「席を譲りましょうか?」と言うと,この人は自分が年寄り扱いされたとまわりの人から思われて不快な思いをしてしまうかもしれない。そういうふうにまわりの人から思われてしまうと,この人の気分を害することにもなるな……そう思わせてしまうのも悪いから,ここは寝たふりをしておこうか。
「ここまで相手のことを考えられる自分はやさしい性格だよな」。
こういうふうに思って結局は席を譲らないことを「やさしさ」と言ってしまうようなことが,行きすぎたやさしさです。
これは相手のことを考えているのではないですよね。軋轢や葛藤を避けるように行動しているのだと思います。
声をかければ
実際には,声をかければ良いのですよね。「いかがですか?」「いえ結構です」というコミュニケーションがあれば良いのです。それで「わしを年寄り扱いするな」と言うような人がいたら,その人がまわりから「しょうがない人だな」と思われるだけで,席を譲ろうとした人が非難されるようなことはないはずです。
え?もしかして,そこで「バカだなあ,そんなところで席を譲ろうとするほうが悪いんだよ」と思ったりするのですか?
東京の電車の中でも日本よりも海外の人のほうが,積極的に席を譲ろうとする様子を見かけることがあります。やさしさのポイントが違うように思うのですが,うまく言葉で表現できません。
やさしすぎる人の研究
こういった日本的な行きすぎたやさしさは,相手のことを思うあまり一周まわってちょっとおかしなことになっているような状況だと思います。それとは少しニュアンスが違うのですが,海外でも過剰なやさしさについての研究があるのです。それは,過度の共同性(unmitigated communion)に関する研究です。
A theory of unmitigated communion.
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