
犬の性格は安定しているのか
人間以外の動物のパーソナリティの研究についても,これまでに紹介してきました。
人間のパーソナリティは,感情や思考や行動の一貫したパターンのことを指します。人間以外の動物では,感情や行動はみられるかもしれませんが,思考についてはよく分からない部分も多いのではないでしょうか。しかし,観察者が評価したり,さまざまな課題を行ったりすることで,動物のパーソナリティも操作的に提起されています。
行動間の関連
動物のパーソナリティは,動物がさまざまな行動をする際にその個体差を測定して,関連を検討することが基本です。そして,行動パターン間に相関が生じたときに,その背後にパーソナリティを想定します。ただし,行動間の相関は,文脈の影響を受けて生じているかもしれません。その点は,慎重な解釈が必要です。
この考え方は,質問項目への回答をしたときに,その回答傾向の間に相関があるときに背後にパーソナリティを想定するのと同じです。
犬の性格
イヌの研究の初期の研究のひとつは,古典的条件づけで知られるパブロフによるものです。彼は条件反射の訓練への反応に基づいて,犬を4つの基本性格タイプに分類しました。またその後,他の研究者によってイヌの性格の遺伝的研究も行われており,また行動評定を行うことで盲導犬の仕事に向いている正確のイヌを選ぶ研究も行われています。
イヌの性格研究の関心は,次の4つに焦点が置かれています。
◎ペットとしての飼い主が,自分と合ったイヌを選ぶことへの関心
◎動物保護施設に預けられたイヌが養子縁組の成功率を向上させることへの関心
◎イヌの噛みつきの発生率を抑制することへの関心
◎働くイヌの効率を高めることへの関心
これらはいずれも,イヌの行動パターンがある程度一貫していることを前提としています。
性格次元
イヌの性格次元に関しても,多くの研究で検討されています。
これまでには,3次元モデルや5次元モデルもありますが,11次元の性格を提案する研究もありますし,盲導犬では8つの異なる性格次元が提唱されています。
過去の研究をまとめていく研究も行われていて,そこでは反応性,恐怖心,活動性,社交性,訓練への反応性,服従性,攻撃性の7つの大まかな次元およびその他という枠組みも提唱されています。
一貫性
イヌの性格はどれくらい一貫しているものなのでしょうか。これまでの研究をまとめるメタ分析で検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Personality Consistency in Dogs: A Meta-Analysis)。
ここから先は

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?