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色の好みと性格
色の心理学的研究というのは,卒論などで学生がやりたがる定番のテーマのひとつではないでしょうか。
実際に,これまでに私が教えたゼミの学部生も,何人かが色に関連するテーマで研究に取り組んでいました。
一般的にも,色の研究というのは興味をもたれるもののひとつといえます。そして,一般向けの書籍は多数あるのですが,しっかりとした研究がベースとなっているものとなると,こころもとないというのも現状のように思います。
その中でも,この本はどうでしょうか。しっかりと基礎的な内容が書かれているように思います。
色研究の難しさ
でも,それが結構むつかしいのです。部屋の照明や壁紙の色,机の色などによって,簡単に認識される色が変わってしまいます。
たとえばムンカー錯視と呼ばれる錯視(視覚的な錯覚)があります。リンク先で画像を見てみてください。
同じ色を使っているのに,絶対に同じ色だとは認識できません。
こいういう現象そのものを扱う研究もあるのですが,学生がイメージするような色の研究(何色が好きな人がどんな性格か?など)であっても,色の刺激を使うというのは,とても気をつかう必要があるということがよくわかるのではないでしょうか。
色盲・色弱
また,いざ色の調査や実験をしようと考えたときに避けることができないもう一つの問題は,色盲や色弱についてです。
日本では,男性の約5%が先天赤緑色覚異常だと言われます。赤系統の色と緑系統の色の区別がつきにくい人々のことです。約20人に1人という割合ですので,珍しいことではありません。
さらには,数万人に1人という確率で生じる色覚異常もあります。
こういったことは日常生活には特に問題が生じないとしても,色を扱う実験や調査を行う側にとっては問題になります。
意外と学生たちは,こういうことに無自覚といいますか,知らないことが多いように思います。
色の好みの研究
さて,そんななかでも,色の好みを調査した研究があります。なお,今回紹介する研究は入院中の統合失調症患者を対象にしたものです。
この研究では,ZKPQというパーソナリティ検査が用いられています。日本ではほとんど知られていないのではないかと思うのですが……。
これは,刺激希求性(sensation seeking)の研究で知られるズッカーマンらが開発した検査です。1990年代にビッグ・ファイブ・パーソナリティの論文がどんどん出てきたとき,ズッカーマンが見出した基本的なパーソナリティ因子もひとつの解釈候補でした。
Dr. Zuckermanの研究
ちなみに,ズッカーマンはもう90歳になるようです。10年ほど前の学会で見かけたことはありますが,そのときもすでに80歳くらいだったということですね。
ズッカーマンの動画を見つけました。
ZKPQの下位尺度は,次の5つです。
(a) 衝動的刺激希求性
(b)神経症傾向・不安
(c)攻撃性・敵意
(d)活動性
(e)社会性
どちらかというと,生物学的な基盤を想定したパーソナリティ特性のセットのようです。
では,研究の内容に戻りましょう。
調査の方法
この研究の調査は中国で行われました。調査対象者は63名(女性31名,男性32名)の入院中の統合失調症患者です。また,59名の健康な人々も調査に参加しています。
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