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曼珠沙華のひみつ

みなさん、曼珠沙華のひみつをご存じだろうか。ぼくはそのひみつを最近知りました。いまのデイサービスに勤めるようになってから、午後、必ずご利用者様をクルマで外出にお連れするようになったんだけど、市内の色々なところにお連れする中で、1番ご利用者様の反応がよかったのは、意外と、否、やはりといっていいのか、花や自然であることがわかった。それからというもの、季節ごとの花を施設近くの公園や森などにお連れして楽しんでいただいているのだが、それからというもの、この歳になって少しだけ花に興味を持って来たのだ。そんな中で、いまの時期はやはり曼珠沙華なのだが、これらが群生する用水路の土手などをご利用者様と散策するに、曼珠沙華の異様な生え方に疑問を持ったのだった。曼珠沙華をこうもたくさん観たのも人生はじめてであるが、曼珠沙華をこうもマジマジとみたこともなかった。そう、曼珠沙華には葉っぱがないのだ。曼珠沙華をよく観ればわかるが、地面から1本の茎のみが生え、その先に1輪の花が咲いているのだ。こんなの知ってるよ!というひとも多いかも知れないが、花を知らないぼくには驚きであったのだ。だって、植物には葉っぱがあって当然と思っていたからだ。が、曼珠沙華を近場で観ても、どれも地面からシュッと細い茎だけが伸びて、その先には花と思えないような、まるで人間が造った針金細工のような繊細な花が1輪だけフワッと咲いている。曼珠沙華はどうやって光合成するのだろう??ぼくは曼珠沙華のことを調べたくなった。曼珠沙華は球根というのをご利用者様からは聞いていたので、その球根の栄養素だけで伸びるのかと思ったら、なんと、曼珠沙華はあの針金細工のようなはなが散ってから、葉っぱが生えるそうな。不思議な花だ。普通の花の逆だ。これを知っているひとも多いのかも知れないが、新鮮だった。が、曼珠沙華のひみつはそれだけではない。なぜ、土手や墓に生えてるのかも調べてみたのだ。なんと、曼珠沙華の球根には毒性があり、土手や墓の土をモグラやミミズ?などに荒らされないように、人間が意図的にそれらの場所に生やしているとのことだったのだ。子ども時代、なんで、曼珠沙華という花は墓の近くに生えるのかと不思議に思っていたのだが、そういうことだったのねと。しかし、当の本人(花)はたまったものではない。好きで人間の墓の近くに生えてるのではないのである。しかも、人間に意図的に埋められて、しかたなにしそこで花を咲かせ、さらには「彼岸花」や、しまいには「おばけ花」と呼ばれる始末。これをご利用者様に曼珠沙華を観ながらご説明すると、「そういうことだったのか~」と大変よろこんでいただいている次第である。しかし、曼珠沙華の球根に毒性があるというのがわかっているのは、恐らく、それを食べて腹をこわした偉大なる先達がいるんだよね~。おぉ、人間の、なんと、好奇心の塊、否、そんだけ餓えていた時がたぶんあったのだな。こうしてぼくらはそれら偉大な先達たちのおかげで、曼珠沙華のひみつを知らなくても生きていけている。が、こういうのの伝承って必要なんじゃなかろうか。ご利用者様たちが知らないつーことは、いつの時代から曼珠沙華のひみつを知らされて来なかったんだろう。ただ単に曼珠沙華に興味を持てなかったからだろうか。が、花は美しい。本当に美しい。こんなものをいままで楽しめなかったのは、本当に人生の損失である。だから、ぼくはこれから世界を楽しむその中のひとつとして、花を愛でることをいまからはじめるとする。

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