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口ピアスの陰鬱
この間、家に帰ったら、息子が口ピアスをしていた。
以前から、息子は耳にピアスをあけていたが、それは別にお咎めはしなかった。そういう年頃だし、穴を開けずにイヤリングするというのも、なんか、男として気持ち悪いし。
ただ、今回は、口ピアスである。
耳と口の違いだけなのに、なんであまりいい気がしないのだろうか。
耳だけがよくて、口だけがダメだってのも、よく自分でも道理がわからない。
だから、今回も息子にお咎めはしなかった。
否、正式にはできなかったのだ。
少しばかり、理由がわかっていたからだ。
否、わかったつもりでいるだけなのかも知れない。
理由は、彼の過去や今にある。
耳ピアスの場合は別とさせてもらうが、口ピアスやボディーピアスなどの類いは、ぼくは自傷行為として捉えており、ゆえに、そういうことだ。
ことの大小は別として、ここは公の場なのでプライベートの問題もあるので詳しくは書かないが、ようは、ぼくのせいなのである。
比較的最近、彼と大げんかした時に、彼の小学生時代・・・
「あの時、自分に向き合ってくれなかったのに、いまさらなんだよと・・」
これ言われた時は、キツかった・・・
向き合っていたつもりなのに、彼としては、全然向き合ってなどいなかったと・・・
あの当時、ぼくは昼と夜と両方働いていて、それでも彼とは時間を取り向き合っていたつもりなんだけど、時間的に考えれば、ぼくはただ家に仮眠に帰るのみで、彼と接する時間など、極端に少ないものになっていたのだろう。
だから、彼の小遣い稼ぎも含めて、よく仕事に連れていったりしてコミュニケーションをはかるようにはしていたのだが、彼にとってはそうではなかったと・・・
・・・自分がそんな生活をしていたから、家庭がうまくまわるはずがない・・・
そんな中、彼は育ったわけだが、彼は意図はしないまでも、無意識的に過去や今に傷ついていて、その代償行為としての口ピアスとぼくは捉えたのだ。
だから、そんなの責められるわけがない。
彼の無言の悲しみが理解できるからだ。
だからどうか、息子よ。
我が愛する、唯一のひとり息子よ。
幸せにだけはいてくれ・・・