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2019年度のWCSブロック代表決定戦に向けてのメタゲーム分析と調整録。

はじめに


お初にお目にかかります。私は普段は「ATM(@ChaosSusan)」というHNで競技的にカードゲームに取り組んでいます。
競技プレイの主戦場としているのは遊戯王ですが、フォーマットによってはMtG(Magic the Gathring)をプレイすることもあります。
その他、Hearth StorneShadow verseなどのデジタルのカードゲームも嗜む程度にはプレイしています。

カードゲームを構成する楽しみ方には単に試合に勝利するだけでなく、コレクション、デッキ構築など、様々なものがありますが、中でも私はメタゲームの把握、分析を強く楽しんでいます。
メタゲームは特定のコミュニティといったミクロな視点から、関西、関東といったマクロな視点まで様々に広がっており、MtGに至っては世界規模で週単位のメタゲームが繰り広げられています。
そのため、当日のフィールド毎に適切なメタゲームの分析、把握を行った上でデッキ選択、構築を行うことが勝率を引き上げることに繋がると考えています。

今回は遊戯王のブロック代表決定戦という非常にミクロな環境を見据えて調整を行い、決勝までたどり着くも敗北してしまいました。
使用したデッキは「転生炎獣」であり、環境の主流デッキであるため、別段目立ったアーキタイプではありません。
しかし、調整過程における環境考察やそこから派生するデッキ選択やカードの採択、調整中の思考などには価値があると考え、その旨を綴りました。

今記事ではまずマクロな視点大まかな環境解説を行い、そこからブロック代表戦というミクロな環境メタゲームを想定、そこに向けたデッキ候補を幾つか挙げ、それらをどのように取捨選択していったかを記述します。
次に、自分が考える転生炎獣の必須枠とサブギミックを列挙した上で、それらをどのように取捨選択し、最終的な構築に至ったのかを解説します。
最後に当日の簡易的なレポートと、今後の展望を述べて締めさせていただきます。

このように、本記事は自分の想定したメタゲームにおける構築的なアプローチの視点を公開しようというものです。
この記事の内容をそのまま100%流用することは難しいとは思いますが、今回開示した調整過程の思考を辿ることが、今後来るであろう別のメタゲームの中で納得のいくデッキ選択、構築をするための手助けになれたら嬉しいと考えています。

今は昔と違い優秀な成績を納めたデッキリスト自体は検索をかければものの数分で見つかる時代です。
だからこそ、入手したリストから各カードの細かい採択理由やそれらの採用、不採用に至るまでの思考を読み取り、自分の構築に反映させる力を養うことが重要であり、その過程にこそ重きが置かれるべきだと考えています。

本記事は有料とは銘打っていますが、本題の部分は最後まで無料で読むことが可能です。
ただ、もしも、この記事を気に入って下さった方がいらっしゃいましたら、本記事の最後の部分を有料としておくので、ご購入していただければ、今後も記事を書く励みとなり嬉しく思います。
また、勿論追加の投げ銭などがあれば泣いて喜びますので、その気になった際には遠慮なくぶちまけていただけると幸いです。

それでは本題に参ります。


・メタゲーム分析 序盤(3月中盤~4月中盤まで)


制限改訂を終え、各デッキが多少のパワーダウンを余儀なくされました。
環境の2トップの1つである「転生炎獣(転生)」はベイゴマックスを、片割れの「オルフェゴール」は追加で終末の騎士を奪われましたが、デッキコンセプトが崩壊するほどではなく、改良を加えた上で依然2トップを維持し続けます。
前期である2月から3月あたりにかけては「転生」の存在が過剰に意識されており、メインからファンタズメイやDDクロウが各3投されている構築も珍しくなかったので、「転生」が思うように活躍しにくいフィールドができあがっていました。


「転生」がメタゲーム内で集中砲火を受けている傍らで高い勝率を出していたのは「オルフェゴール」だったように思えます。
これは、「転生」へのヘイトが高まっていただけでなく、「オルフェゴール」が現在ほど意識されておらず、意識的にガードを下げられていたという点が大きかったと考えられます。
これらの結果を受けて、メインデッキのDDクロウが徐々に減少する流れが生まれる一方で、各デッキがサイドデッキにアーティファクトロンギヌス3枚を標準採用するようになっていきます。
各デッキが自分の強みを出す構築を模索する中、4月に入って第2期店舗代表戦が始まり、「あのカード」が徐々に問題を引き起こし始めます。


・メタゲーム分析 中期(4月中盤~GW終了)



店舗代表戦が開催されていく中、とあるカードを巡って起きた問題を聞くようになります。
「魔鍾洞」です。
運用に当たってリスクが少ない割に強力なロックを敷けるこのカードが実戦に耐えうるカードであることが認知され始めたのです。

最初に話題になったのは魔鍾洞を利用してロックを行い、「波動キャノン」を使ってライフを削りきる「魔鍾洞バーン」デッキでした。
このデッキの凶悪なところは公式が定めた投了不可能のルールを最大限に利用し、時には異常と言えるほどの思考を行って試合時間を引き延ばし、制限時間を越えたところでトドメを刺して1-0の戦績でマッチ勝利を獲得するというものでした。
投了が認められており、サイド後の対策に弱いこのデッキは非公認のCSといった場面では大勝ちすることはありませんでしたが、公式の大会ではルールの範囲内という名目でこれらの行為を行うため問題視されていました。
しかし、デッキ自体に事故がつきまとう点や、競技層の主戦場が非公認の大会であったことから、どこか対岸の火事のように捉えられていたように思えます。

しかし、「魔鍾洞バーン」の影響はそれだけではありませんでした。
魔鍾洞の有用性が示されたことにより、カード自体の研究が進み始めます。
そして、それをより有用に、実戦的な範囲で使用できるデッキが現れます。
「魔鍾洞閃刀姫」「魔鍾洞オルターガイスト」です。
どちらもコントロール寄りのデッキであり、本来のデッキパワーの低さを魔鍾洞で補うことで台頭していた展開力の高いデッキへの耐性を獲得しました。
具体的に強く影響を受けたのは「オルフェゴール」「サンダードラゴン」でした。
モンスター効果を主体に展開、除去を行うこれらのデッキは魔鍾洞に対する対策を行えないことも珍しくなく、特定カード1枚で実質ゲームセットまで持ち込まれてしまうことも珍しくありませんでした。

魔鍾洞の影響で陰りを見せたデッキの代わりに存在感を増してきたのは、3月から4月にかけて(文字通り)下火になっていた「転生炎獣」です。
メインからレイジを2枚採用して除去性能を上げたり、バージェストマ・ディノミスクスの複数枚採用で、魔鍾洞系統のデッキへの優位性を引っ提げ、かつての環境王者が戻ってきました。
また、ディノミスクスは苦手マッチである「サンダードラゴン」への相性改善も実現させており、非常にスマートな形でイノベーションが起こりました。
それだけでなく、従来の型からパワーが低めの手札誘発を省いてその枠を神カードや強制脱出装置、大捕り物といった単体で機能する罠カードに置き換えた所謂「罠型」という派生構築も現れました。

GW以降はその他デッキも魔鍾洞へ意識を向けた構築を行うようになっていきましたが、魔鍾洞関連のデッキを意識した持ち込みを行うなら「転生炎獣」が最も理想的なデッキであったことは疑う余地がないと言えるでしょう。

しかし、その他のデッキもその状況を指をくわえて見ていたわけではありません。
特にGW前後で最も顕著にイノベーションが起きたのは「オルフェゴール」だと考えています。

「星杯の神子イヴ」を採用し、リンク数を伸ばす所謂「イヴ型」の研究が進んだのです。
従来の「オルフェゴール」は簡易融合を採用した物量貫通を主戦術としていましたが、サイド後のロンギヌスに弱いという欠点を克服できないままでいました。
しかし、イヴ型は展開力の増強で物量貫通面を補強し、アポロウーサ、サベージの先出しでロンギヌスへもある程度の耐性を持った展開を行えるようになりました。
特に、後手から仕掛ける際にロンギヌスを打たれても除外を絡めずにヴァレルソード+サベージのワンショットを成立させられるようになったのは大きいと言えるでしょう。
増殖するGにより弱くなる代わりに他の要素に対して強く当たれるという、割り切った構築となりました。

また、「サンダードラゴン」もメインからディノミスクスを採用したり、サイドにスキルドレインを始めとした大量の罠を採用する型が出始めました。
これもテンプレが固まってきた段階だからこそ有用なアプローチだったと考えられます。


このように、GW期間は魔鍾洞を起点としてあらゆるデッキが構築に変化を出す必要に迫られました。
そして、ここまでの情報が出揃った時点でGWが終了。
ブロック代表戦までに残された時間は3週間を切っていましたから、本番で使うためのデッキを絞り込み最終調整に取りかかるにはギリギリの時期です。
GW期間中は大学が休校なので神戸の実家に帰省し、関西のCSへ参加してデータを集めていました。
そして、GW期間中にあまりにも関西で「サンダードラゴン」が勝ちまくっていたため、最終日に足りないパーツを購入し、下宿先へと戻りました。


・フィールド分析とデッキ選択

使用候補となったデッキ

GWを終え、下宿先に戻り、使用するデッキの選定に取りかかります。
自分が使用するかは別として、持ち込むに足る現実的なデッキを洗い出すと、この段階で候補に挙がったデッキはなんと9つに上りました。
ここ数年の遊戯王を経験した者ならば驚くほどの多様性です。この幅広さが逆に悩みの種になりました。
以下、候補のデッキを記述します。


・セフィラ(優先度高)
・サンダードラゴン
・転生
・オルフェゴール
・魔鍾洞オルターガイスト
・魔鍾洞閃刀姫
・サブテラー(優先度低)

・インフェルノイド(番外編)
・魔鍾洞バーン(論外)

これらは当時の自分の評価の順に上からデッキタイプを並べています。
これを下敷きにしてデッキ選択を進めていきました。

当日のメタゲーム予想

メタゲーム予想で最も重要なのは当日のフィールドの予想です。
今回想定するべきフィールドはブロック代表戦。
自分が参加した北陸4ブロックは都会と比べると参加人数が非常に少ないことが特徴です。
公式サイトから調べたところ、当日の参加者の数は最大12人で代表者は1人。
求められるのは3-1のリストではなく、4-0を狙えるリストであることまでが固まりました。
更に、地域が狭い分どのプレイヤーがどのデッキを使用しているのか、という大まかな情報は入手できます。
参加者の半数以上のデッキが把握できるのは田舎特有の特殊なメタゲームですが、都会だとしても20人規模の店舗でならある程度までの予測は成り立ちます。


と、ここで最大の問題点が立ちはだかります。
実は、自分が参加するブロックにはCSで何度も上位入賞の経験を持つ強豪(仮にAさんとします)も参加することが確定していたのです。
ブロック代表の椅子は1つ、Aさんは実力的にも申し分がないため、自分がブロック代表を獲得するためには決勝までのどこかでAさんと直接対決をして、勝利しなければならないという条件が追加されます。

この時点で、

Aさんとの直接対決で不利が付くデッキを選んではいけない
=Aさんの持ち込みデッキを正確に把握する必要がある

という条件も追加されました。
理想はAさんの持ち込みデッキを完全に当てた上で有利が付くデッキを持ち込むことですが、不確定な情報を頼りに尖らせた構築を取るのは非常にリスキーです。

この辺りはMtGの一昔前の「神決定戦」における1対1の対人読みのデッキ選択と似た要素を(勝手に)感じました。

Aさんのデッキ読みはひとまずおいておいて、その他のプレイヤーのデッキ選択を確認します。
すると…?


「サンダードラゴンめっちゃ多いやんけ!?」

流石は片田舎のブロック予選、独特のメタゲームが展開されています。
恐ろしいことに大規模な大会ではトップシェアの一角を占める転生炎獣の使い手が自分以外0で、基本3番手以降のサンダードラゴンが最大勢力

大別すると
サンダードラゴン3
展開系3
罠ビ2
ノイド1
その他1

といった感じです。


Aさんのデッキを絞りにいく

ある程度現場の把握はできたので、次はAさんの思考を読みにいきます。
Aさんとは1年ほど一緒に競技的にプレイした経験があるので他の人より分かる部分もあるはずです。

①安定志向である
Aさんは基本安定志向であり、事故や運の要素を嫌って安定したデッキを選びたがる。
実際に店舗代表を獲得していた際に使用していたのは安定性を重視した転生炎獣でした。

②プレイングに自信がある
安定志向と並ぶ重要要素です。
ミラーマッチが難しいとされるデッキでもプレイングで勝つ自信があるため積極的に選択する傾向にあります。
逆にミラーマッチで運の比重が大きく理不尽な試合が発生するデッキをあまり好みません。

③地力の高さを好む
地方で重要な要素です。
地方では世間の流行からズレたカードの採択が行われることも多く、ピーキーな調整を施した構築の持ち込みはメタゲームを読み違えた時に非常にリスキーな行為となりえます。
そのため、地力があり、(言い方は悪いですが)雑魚狩り性能の高い構築、チューニングの持ち込みを好みます。

これらの条件から
「転生炎獣」「魔鍾洞オルターガイスト」「魔鍾洞閃刀姫」の3つが候補に浮上しました。

イヴ型の「オルフェゴール」も候補に挙がりましたが、②と③の要素にそれぞれ引っかかり、増殖するGに弱い問題も解決されていなかったので持ち込みはないだろう、との予測を立てました。

更に、4月の店舗代表戦で「転生炎獣」を使用していた際に「サンダードラゴン」との対面を不利マッチとして非常に嫌っていたことと、今回のブロックに「サンダードラゴン」が多いことから「転生炎獣」の点数を下げ、「閃刀姫」はカガリが3枚でも使いたくないとの話を本人から聞いていたのでそれも外すと、「魔鍾洞オルターガイスト」だけが有力候補に残りました。


自分のデッキ選択

ひとまず当日のメタゲーム予想を終わらせたので、ここからようやく自分のデッキ選択に取り掛かります。

自分が4月末の店舗代表戦の権利獲得時に使用したのは「転生炎獣」で、ブロック代表戦当日持ちこんだのも同じデッキではありましたが、本来はそのデッキに拘るつもりはありませんでした。というのも、

一ヶ月前から特定のデッキを使い続けてその日のメタゲームが自分のデッキに都合の良いことであることを祈るのは弱者の選択である

これは自分が敬愛するMtGのプロプレイヤー、市川ユウキさんのお言葉です。
自分は今回のブロック予選に臨むにあたって、この言葉を強く意識しており、ブロック代表戦で使用する予定のデッキが泥船の可能性が高いと判断した際には乗り換えられるように複数のデッキの調整を平行して進めていました。

そして、メタゲームの予想を終わらせた時点で最もフィールドに合うデッキを仕上げて持ち込む予定でした。
当時の各デッキの所感は以下の通り

・セフィラ ○
先後問わずパワーは申し分ないがその分扱いが難しく自滅の可能性もある。
また、必須枠が多く、メインデッキが膨らみやすいのでメタゲームへの柔軟性が少ない。
フィールド次第では使用したい。

・転生炎獣 ○
メタゲームへの柔軟な対応力が売り。
魔鍾洞、罠デッキへの勝ち筋を強く持つが先攻ブン回しに弱い。
「サンダードラゴン」に対しては、メインギミックの押し合いでは不利だが、構築を寄せることで相性改善が見込める。
罠ビが多く、「オルフェゴール」、その他の展開系、「ノイド」が少ないならあり。

・サンダードラゴン ×
セフィラ、転生の2つのデッキの点数を高めに付けていたため、それらに強いこのデッキも必然と高い点数が付いていました。
しかし、使い手から話を聞くと回るか事故るかの2択デッキ。
実際に回してみると確かに微妙に感じられる面も強く、典型的な対面すると強いタイプのデッキに感じられました。
安定性のなさは全勝を要求されるブロック戦には不向きだったので除外して、対策だけは用意する方針を決めました。

・オルフェゴール ×
簡易型はロンギヌスに弱すぎて論外、イヴ型も増殖するGに弱いという弱点を克服できておらず、ミラーの先手ゲーの理不尽さに耐えられないことからよほどのことでも起きない限りはなしという結論に。

・魔鍾洞オルターガイスト×
・魔鍾洞閃刀姫×
・サブテラー ×

Aさんとの直接対決を想定するにあたって魔鍾洞系デッキの選択は非常にゲーム運びが難しくなり自滅の負け筋を取る可能性があると考え除外。
また、サブテラーは魔鍾洞デッキへの有効打が少なく、転生の持ち込みにも対応しにくいと考え除外。
同じブロックの参加者にサブテラーを使い込んだプレイヤーが存在することからミラーの練度負けを嫌ったこともあります。

・インフェルノイド ×
40枚構築ではスタミナ不足に陥りやすく、60枚構築にすると安定性が損なわれるというジレンマを抱えていたように思えました。
「転生」視点では非常に恐ろしいデッキでしたが、それ以外のデッキには下振れた時に強く出られず、何より「オルターガイスト」などの非展開系デッキに弱いことはフィールドにおけるマイナス要素が大きすぎました。

・魔鍾洞バーン ×××
宗教上の理由でNO。
勝つことは勿論重要ですが、競技的に取り組むためにはそれ以上に求められることがあると考えていたため、勝つことだけに焦点をあてたデッキ選択を行うつもりはありませんでした。


以上のことから「転生」と「セフィラ」の2つが候補に残り、その中でも「魔鍾洞」系統、転生の持ち込みの両方に対して安定したパフォーマンスを見込める転生をファーストデッキとすることを決めました。

こうして、転生>セフィラと持ち込みデッキを絞り、最終調整を始めます。
この時点で残り2週間。
と、この時期に心当たりのある方が多いのではないでしょうか……?


・メタゲーム分析 最終地点(当時)
(抹殺の指名者の情報判明)

ブロック代表戦の2週間前に突如現れた新星、改め問題児。
前述の「よほどのこと」が起きてしまいました。
このカードが環境に与えた衝撃は大きく、情報が判明した時点でそれまでに練っていたメタゲームの想定が大きく崩れる可能性を秘めていました。

具体的には
・先攻ブン回しデッキの大幅な強化
・あらゆるデッキのミラーマッチの先手ゲー加速
・まだ見ぬ展開系の増殖
・誘発を主体とした後手からの受けの難易度上昇
・誘発への信用低下から来る罠型へのシフト

特に、あらゆるデッキに最大枚数採用されていた増殖するG灰流うららを無力化できるというのは非常に魅力的であり、それらがマストカウンターであったオルフェゴールは目に見えて強化されたように見えました。
また、魔鍾洞を構築内に1枚忍ばせることで解答を3枚持つことができるというのも強化に思えます。


このように抹殺の指名者が環境に与える影響が非常に大きい可能性がありました。
その影響は「オルフェゴール」だけに収まらず、「転生」のミラーマッチにも飛び火するかもしれません。
最悪、「転生」では勝ち目がないと判断できたなら、「オルフェゴール」への乗り換えも視野に入れる必要があります。
情報が判明した翌日に急遽顔を合わせた調整機会を設け、プロキシの抹殺を採用したイヴ型「オルフェゴール」を作成してもらってさっそく感触を確かめてみます。
しかし、その結果は当時想定していたものではありませんでした。

・抹殺の指名者を用いた調整結果と考察

端的に、結論からいうと、そうでもなかったのです。
もちろん、増殖するG自体が弾かれる確率は異常に上がっており、貫通=即死のゲーム自体は従来の構築よりも増えました。(この文章内の「貫通」は展開の成功を意味しています)
しかし、元々メインの後手では(体感ですが)1/2程度の確率で貫通されていたものが3/5強の確率で貫通される程度に収まったように感じられました。
更に、マッチを通した全体的な勝率は以前と変わらずおおよそ5分に収まっていました。

この予想より少々拍子抜けした結果を分析したところ、「抹殺の指名者が有効牌であるためには相手の有効牌を無効化しなければならない」という条件に1つの原因があると考えました。
つまり、後手側の増殖するGが有効である確率は10%である、という圧倒的貫通力に気を取られていましたが、対戦相手が仮想敵であるカードを持っていない場合、抹殺の指名者はただの腐り札と化すということです。
オルフェゴールは不要牌をディスカードして展開を行えることが強みですが、ディスカードを行うマーメイド自体がマストカウンターであるため、抹殺をディスカードすることはできず、仮に不要牌であることが確定した後も抹殺の指名者を持ち続けるしかなかったのです。

また、調整を続けた結果、オルフェ側は安定性を損なわないためには抹殺の指名者用に追加のカードを取る余裕はないことが判明しました。
つまり、オルフェ側が下振れているならば、エフェクトヴェーラー、無限泡影といった単体無効の重ね撃ちは抹殺をすり抜けて従来通り有効であるということです。
何より、前述の通り、余分なカードをメインに混ぜ混むことはリスキーであるため、サイド後に抹殺を用いてロンギヌスへの耐性を付けることは叶わないと結論付けました。

以上のことから、メインは先手を取られたら非常に不利だがサイド後は誘発を増やせば五分、また、メインの先手を取られる可能性自体も五分であるため総合的に見たら相性は五分である。
それゆえに過剰に意識する必要もなければ、無理をしてデッキを乗り換える必要もない、という結論に達しました。

更に、念のためにその他デッキにおける抹殺の感触を確かめるために、実験的に抹殺を採用した転生ミラーの練習をしてみるも予想通りすこぶる微妙。
展開に成功してもよほど上振れない限りは長い目で見たらアドバンテージ勝負に競り負けます
そして、アドバンテージ勝負になりやすいミラーで不要牌を抱えるリスクは展開成功と天秤にかけてもそこまで大きな恩恵とは感じられませんでした。

このような経緯で、増殖するGを弾いた時点でゲームの勝敗を決められるような圧倒的な先攻展開を誇るデッキでないと採用する価値はないと判断し、それを実戦的なレベルで行えるのは環境にオルフェゴールのみという結論に達しました。

これ以降はオルフェゴールの研究の動向に目をやりつつも、転生炎獣を当日のメタゲームに合わせて最適化することに時間を割きました。


・転生炎獣の調整記録

ようやく自分が当日に使用するデッキが固まりました。
ここからは予想したメタゲーム分布を元に構築段階で意識したことを羅列していきます。

①魔鍾洞系デッキへの優位性
②サンダードラゴンへの対策
③オルフェゴールとの相性を五分に保つ
④ミラーマッチを意識「しない」

これらを順に簡潔に解説していきます

①魔鍾洞デッキへの優位性
最大の仮想敵を魔鍾洞デッキと定めているからには当然です。

②サンダードラゴンへの対策
最大母数であり明確な不利対面であるため、対策は必須でしょう。
魔鍾洞対策と兼用できるディノミスクスの採用がスマートでしょうか?

③オルフェゴールとの相性を五分に保つ
母数が少ないとはいえ、存在が確認されている時点で脅威です。
最悪メインを落としても残りを取り返せるように最低限の備えは行わなければなりません。

④ミラーマッチを意識「しない」
当日のメタゲームを想定した時点で非常に懸念される要素がありました。
想定通りのフィールドならファンタズメイが浮く相手が異常に多かったのです。
本来の環境最大母数である「転生」ミラーマッチにおける有効牌を廃す構築は転生の持ち込みが多かった場合にリスキーになりえますが、ギミックを取り込むための枠を作るためにはやむを得ません。(※)

※転生の持ち込みを行う可能性があるプレイヤーはAさんを含めて自分以外に2人確認できていた。

これらの条件を盛り込みながら構築を進めていきます。次は「転生炎獣」のデッキを要素ごとに分解していきたいと思います。

・「転生炎獣」の必須枠


以上28枚が現在の環境で「転生炎獣」を使用する際に型を問わず絶対に採用するべきだと考えているカード群です。
この28枚さえ確保してしまえば、極論、残りのカードがなんであれデッキとして成立すると考えており、それだけの土台であると考えています。
ここから残った12枠を自由に使って構築ができることこそが「転生炎獣」のメタゲームへの柔軟性を支えていると言って差し支えないでしょう。
採用理由が問われるカードは殆どないでしょうが、一部だけ軽く採用理由を解説します。

・転生炎獣ファルコ
罠型ではランク4を不採用とすることで、事故要因になり得るファルコも同様に廃した構築が存在しますが個人的には賛同できません。
というのも、ファルコは炎陣1枚スタートの際にベイル+炎陣でターンを返したり、レイジ、ディノミスクスといったコストを要求するカードとの相性もよく、予め墓地に置くことで次のターン以降、ガゼル回収を行いやすくするなど、リソース回しの面で非常に重要な役割を担うからです。
これらの仕事はファルコ以外では行えず、炎陣ファルコスタートを切りたい場面も珍しくないことから、ディノミスクスやランク4の有無を問わず採用するべき1枚と考えています。

・墓穴の指名者
構築によっては枚数を減らされる可能性のあるカードですが、増殖するGに対して脆いデッキである以上は最大枚数採用するしかないと考えているカードです。
今環境では妨害としての質も高いため手札に残ったとしても問題はありません。

・ハーピィの羽根箒
一発勝負のブロック代表戦では特定対面で絶大な効果を誇るこのカードは所謂「入れ得」の部類に入ります。
「サンダードラゴン」との対面も考慮しましたが、他対面で引き込めた際のメリットの方が大きいと判断しました。

・サラマングレイト・レイジの2枚目
転生を使用する意義が魔鍾洞、罠ビ系統への有利であることから、ここを減らすことは構築の優位性を捨てることになると考えての採用。
また、一番意識したかった「魔鍾洞オルターガイスト」との相性を無理なく改善してくれるベストな1枚でしょう。


・「転生炎獣」のサブギミック

次は転生炎獣を構成するサブギミックの候補を挙げていきます。
それぞれ役割が違うのでその時の目的にあったものを選択しましょう。

今回のブロック代表戦に臨むにあたって、自分が採用を検討したのはこの15枚です。
抹殺の指名者が含まれていないのは、前述の通り、今回は採用しないと結論付けたためです。
以下、順番に採用理由を列挙します。

・バックアップ・セクレタリー
ランク3(ミラージュスタリオ)アクセス率を高めることと、スピニーへのDDクロウに対して耐性を付け展開を続行することの2つの役割がメインです。
また、ガゼル+スピニーの展開に対して一切の妨害がなかった場合、手札から盤面に追加することでアポロウーサ+ベイル+転生罠と構えることもできます。
主に「サンダードラゴン」との対面を意識して採用するべきカードでしょう。

・転生炎獣フォウル
こちらもバックアップ・セクレタリー同様に展開の補助を担いますが、「転生炎獣」ネームを持ちギミック内でサーチが可能、特殊召喚にチェーンブロックを組む、本体がレベル4という差異があります。
ランク4を優先して狙いたい環境なら十分採用圏内ですが、増殖するGにより弱くなるのは個人的にはいただけません。

・幻創龍ファンタズメイ
リンクモンスターに強い手札誘発であり、「転生炎獣」「閃刀姫」が多い環境では積極的に採用したいです。
また、対「オルフェゴール」でも防御面で重要な役割を担います。

・エフェクト・ヴェーラー
パワーは低いが広い対象に使える手札誘発です。
特に、サイド後先手のゲームで後手側のリブートGつっぱへの受けを作れるのは評価点です。
個人的にはCSなどでは無限泡影よりも優先したいカードです。

・屋敷わらし
わらしは少し特殊な誘発で、単体で機能するのは対「サンダードラゴン」と対「閃刀姫」だけと言えるほどパワーの低い誘発です。
個人的にはわらし自体が本命なのではなく、その他の誘発を墓穴の指名者から守るコンボカードのような側面が強いと感じており、対「オルフェゴール」ではその目的でサイドインされることが多いように感じています。

・強欲で貪欲な壺
軽くないデメリットと引き換えに2ドローを行うカードで瞬発力とスタミナを交換するとも言い換えられるでしょう。
「転生炎獣」の強欲で貪欲な壺の扱いは初期から今に至るまで完全な決着がついていないです。
個人的な見解ですが、「転生炎獣」の使うこのカードは、他のデッキと比べてデメリットの面が薄く、ギミックが十分回っているならば得意のリソース勝負に持ち込みやすくなる環境上位のパワーカードです。
ですが、デッキ内に必要なリソースが残ったまま発動する場合もあるので運の要素があるのは否定できません。
1枚採用は勅命や虚無空間のような上振れ要素としての採用2枚以上明確なプランとしての採用になるカードだと考えています。

・転生炎獣の意志
展開力とリソース面を補強してくれるカードで着地狩りに弱い「転生炎獣」ギミックをサポートしてくれます。
盤面に残れば勿論強いのですが、実戦ではサーチする暇はなく、あくまで素引きの展開補助要素の位置付けです。

・バージェストマ・ディノミスクス
手札コスト1枚と引き換えに広い範囲を除去できるカードで、「魔鍾洞」系統のデッキや「サンダードラゴン」、ミラーマッチで特に強いですが、ギミックが回り切っていないと手札コストの捻出に苦労する一面もあります。
逆に言えばギミックさえ回りきっていれば無理のない運用が可能であり、特に「転生炎獣の炎陣」を絡めた展開成功後に「炎陣」からサーチしたファルコをコストとする動きは非常に強力です。
また、墓地からモンスターとして蘇生できる効果もインクの染みではなく、ウルフの下に出すことで相手ターン中にもリソース回収を行えます。

・無限泡影
増殖するG、灰流うららに続いて採用率の高い手札誘発であり、墓穴の指名者の存在を鑑みると信頼性だけなら環境最高クラスです。
しかし、パワー自体は低いため、物量貫通を許しやすく、あくまでも複数の誘発を持っている状況で最大のパフォーマンスを発揮するカードだと考えています。
「サンダードラゴン」の「超雷龍」対策としての側面もあるので一概には言えませんが、「サンダードラゴン」を意識しないなら不採用も視野に入ると考えています。

・強制脱出装置
主にミラーと対「サンダードラゴン」を意識したカードですが、エクストラデッキから展開を行うデッキには総じて強いです。
非展開系に対しては召喚権を弾くことでテンポを取ることができるため完全な腐り札になりにくいのも高評価。
また、既に貼られてしまった魔鍾洞に対しては自発的に自分の盤面を空けて自壊を狙うこともできます。

・大捕り物
永続的なコントロール奪取は非常に強力で、これもまたミラーと「サンダードラゴン」に対する有効牌ですが、「オルフェゴール」のフェニックスを起点とした入りに弱いのは他の罠カードと比較するとマイナスポイントになります。
このカードに限らず、罠型の方向に舵を切ると、「オルフェゴール」の「ライトステージ」や「リブート」が非常に重くなってしまうので、環境を読んで構築の方向性を決めるべきでしょう。

・サラマングレイト・ロアーの2枚目
一昔前と違い、世間ではロアーの2枚目を構築内に採らない選択が主流になっており、個人的にもこの流れには賛成なのですが、2枚目が欲しくなる要素も現状では2つあると考えています。
1つ目はロングゲームを見越した構築を行う場合、もう1つは「強欲で貪欲な壺」を複数枚採用する場合です。
特に2つ目の要素が重要で、展開デッキ相手には「強欲で貪欲な壺」から得たリソースがあれば、そのまま押し切ることもできますが、非展開系相手やロングゲームになった際にロアーがないと蓋ができないといった場面が訪れる場合があるからです。
しかし、本来構築内に1枚で十分なカードを余分に採用する行為は事故のリスクを孕んでいます。

・神シリーズ
「転生炎獣」というデッキ自体が比較的、相手との「対話」の中で試合を進めていくため、対戦相手の意識の外から突如繰り出される「対話」を拒否するこれらのカードは、しばしばゲームプランを崩壊させる非常に強力な1枚になりがちです。
また、存在を認識されていたとしても、引いたor引いていないの結果論になりがちで、こちらとしては引かなかったとしても通常のゲームプランを続行するだけなので一方的に有利な状況を作り出せます
反面、ライフコストも軽くなく、ウルフを立ててターンを返すような「ライフで受ける」立ち回りを行うことが多いこのデッキでは諸刃の剣になり得ます。ご利用の際には計画的に運用しましょう。

各カードの差異を示すと

宣告……最も広く撃てるが1度の発動でライフが4000を割る=ハヤテの1500×3=4500の範囲に入ってしまうのはリスキー。先手向き。

警告……影依融合に撃てるのが通告との最大の差別点。モンスター主体のデッキを意識するならこれ。先手向き。

通告……一番軽く撃てて範囲も緩い反面、罠ビ系にはマストカウンターになりにくい。後手からも使いやすく捲りに貢献するメインデッキ向け。

といった感じになります。

・当日持ちこんだ構築


この71枚が当日持ち込んだ構築になります。
メインデッキは28枚の確定枠に加えて、12枠+αの自由枠には

・バックアップセクレタリー×1
・エフェクトヴェーラー×2
・屋敷わらし×1
・強欲で貪欲な壺×1
・夢幻泡影×3
・バージェストマ・ディノミスクス×2
・強制脱出装置×2
・神の宣告×1

の計13枚のカードを採用しました。
見ての通り、対「サンダードラゴン」と「魔鍾洞」系統のデッキを強く意識した仕上がりになっており、前述の4つの条件全てを満たした構築を完成させることができたように思います。
何故、メイン枚数を40枚にしなかったのかといいますと、「強欲で貪欲な壺」抜きの40枚よりも「強欲で貪欲な壺」あり41枚の方が最大値が大きく、1枚増えている分がドローソースである分事故の確率はむしろ下がると考えての結果です。
また、神の宣告の1枚採用は単体のパワーを重視しただけでなく、「魔鍾洞」バーン相手に溜め込み戦術を行う場合、羽根箒1、レイジ2、ロアー1、ディノミスクス2以外に有効なカードがもう一枚欲しいと考えてのことです。

比較的ピーキーな調整を行ったメインデッキと比べてエクストラデッキに関しては所謂テンプレと呼ばれるものになっています。
唯一、トロイメア・フェニックスをNo.41 泥酔怪獣バグースカに差し替えるか悩みましたが、罠ビ系統との対面が想定される上に、バグースカが有効な対面は少ないと判断してフェニックスを残しました。

サイドデッキはより一層、罠ビ系統への意識が高まっており、通常ならばここまで過剰に採用しないであろう「パンクラトプス」「ツインツイスター」の各3採用が構築の方向性を示しています。

精神操作はミラーと「サンダードラゴン」を意識する上では必須と考えて3から動かさず、ロンギヌスも「オルフェゴール」への最低限の備えとして3固定です。

残った3枠には先手の補強用のカード選択を行い、

・王宮の勅命
・虚無空間
・神の宣告の2枚目

の3枚を選択しました。

3枚とも言わずもがなの先手カードですが、虚無空間の採用経緯だけは少し解説を加えます。
従来「オルフェゴール」相手の先手カードとして、魔封じの芳香を採用していたのですが、イヴ型の流行りで魔法カードの採用数が減り、魔封じが効きにくくなったことや、影依融合自体の採用率が下火になりかけていたことから、サイドプランにそぐわない裏目を抱えていると感じるようになっていました。
しかし、ライトステージや影依融合自体は以前として脅威であることは変わっていなかったため、対戦相手が世間の流行りに乗らず前述のカードをふんだんに使用してきたとしても文句は言えません。
この状況で白羽の矢が立ったのは虚無空間でした。
ライトステージの対象にされても発動すればアド損はなく、影依融合、簡易融合、緊急テレポートその他の特殊召喚を含む相手の動きを1枚でシャットアウトできたのです。
気づいてみれば何故これまで使わなかったのか不思議なくらいにすっきりとプランに収まりました。
また、魔封じではなし得なかった、ミラーマッチ、対「サンダードラゴン」戦における先手カードとしても非常に感触がよく、「強欲で貪欲な壺」から引き込むパワーカードとして文句のない1枚になりました。

・当日編 メタゲームの確認


さて、当日のメタゲームを確認してみたいと思います。結果は…?


「サンダードラゴン」を使用していたプレイヤーが1人「魔鍾洞閃刀姫」に乗り換えるという少し予想外の結果に。
更に、Aさんの使用デッキはなんと「魔鍾洞バーン」
あまり望ましい展開ではありませんが、会場内で最も「魔鍾洞バーン」デッキへの勝ち筋を強く持つのは自分でしょうし、最悪の状況の中にも光明を見出だします。

・当日の簡易レポ

1回戦 bye
トーナメント運に恵まれました。
1回戦(0回戦)を回避した上に反対のブロックで「サンダードラゴン」と「オルフェゴール」が全員潰し合う幸先のいいスタートを切ります。

2回戦 メタビ 後○○
「メタビ」と「転生」では相性差が歴然です。
先手からライオウを並べられるも羽根でバックを一掃し、ライオウの効果を墓穴で弾いてレイジループに突入し勝利。
2本目もパンクラのパワーもあり、危なげなく勝利します。

準決勝 サンダードラゴン 後×○ET○
1本目は相手の動きが強く殆ど何もできないままに轢き殺されます。

2本目は先手ながら精神操作も投入した積極的プランを取り、先攻展開を行いリソースを回収。
返しに超雷+雷神の盤面を作られましたが、精神操作を絡めつつ、気合いで4アポロ+転生ウルフ+レイジ+ロアーで逆に蓋をして勝利。

3本目は相手の先攻1ターン目が終わり、ターンを受け取ってすぐにET突入。
相手の場はリンクリボー+雷神1+1伏せ
精神操作2枚、スピニー、ジャガー、ディノミスクス、泡影があるハンドで、精神操作を使うと通り、スピニーを召喚するもバックが開かれなかったことから虚無空間ではないと判断。
喜ぶも束の間、増殖するGがプレイされます。
2枚目の精神操作も使用して盤面を空けてライフカットするか、アポロウーサまで立てるか悩むもハンドが強かったことから無理はせず、ヒータのリンク召喚に留めて盤面をクリアし、次のターンを待ちます。
相手ターン、超雷からヒータの除去に来るもディノミスクスがぶっ刺さりそのままターン終了。
返しにライフカットすると、相手が何も引けておらず投了。

試合後に最初のターンから残っていた1伏せを見せてもらうとそこにあったのは「抹殺の指名者」
相手が有効牌を持たなければ腐り、リソース勝負にもつれると敗因となる、と分析したカードがその通りの仕事をしており、理論に自信を持ちます
仮にその枠が何かしら有効な除去カードであれば敗けは濃厚でした。
確かな手応えとともに決勝に進みます。

決勝 魔鍾洞バーン(Aさん) 後×

無念… じゃんけんに負け後手になり、何もできずに負けてしまいました。
とはいえ、改善点も多く、「メタバース」ではなく、「終焉の地」経由で「魔鍾洞」を貼られてしまったので、そこはプレイ次第で十分回避できる負け筋でした。
初手も夢幻泡影2、増殖するG、フォクシー、レイジ+スピニーの入りでしたし、フォクシーからロアーも回収できた上に、相手の立ち上がりも遅めだったので堅実なゲーム運びをできていれば1本目は勝てた可能性は高かったとの話を試合後に聞きました。

・ブロック代表戦を終えての感想とこれから


総じて、遊戯王の総合的な上手さが足りていれば結果は違ったのかもな、といったところです。
ひたすら煮詰めてきたつもりだったプレイや構築でしたが、その後の大会参加や調整のタイミングで新たな発見があったこともあり、不本意な結果とはいえ、負けるべくして負けたのかもな、と考える機会にはなりました。

とはいえ、流石にブロック代表戦の決勝戦が消化不良過ぎたため、(文字通り)燃やし尽くすために翌日は隣の県で行われた野々市CSの個人戦に参加。
結果は8-0優勝+はっちグランドの権利を獲得、とできすぎたものとなりました。


ブロック代表戦では報われなかったものですが、その後の大会で、理論を流用した勝利を納められたのは嬉しいことだと感じています。
このように、積み重ねた努力は今後の自分を作ってくれると証明されたような気にもなりました。

今後のことですが、選考会の権利も手に入らなかったため、しばらくは学業に専念する予定です。
そのため、大規模な非公認の大会に参加することはないでしょうが、環境の分析、把握は続けていくつもりですし、早ければ、夏頃には競技プレイを再開していることでしょう。

また、「魔鍾洞関連」の遅延行為に関しては、なかったとは言えませんが、正直な話、勝ちに貪欲な人が意図的に悪用できるフロアルールの方に根本的な問題があると考えており、そういった悪意に対して対策を行うことをプレイヤー側に求めるのは筋違いだと考えているので、KONAMI公式にはなんらかのフロアルールの整備をお願いしたいところです。
これは競技MtGに曲がりなりにも触れたことがあり、今回の問題にも直接携わった者として声をあげていきたいと思います。

・おわりに

今回の記事で初めて私を知ってくださった方々、また、予め知っていた方も含め、本記事を購入しここまで読み進めて下さった皆様には感謝しかございません。
改めてお礼を申し上げます。
この長い記事を最後まで読みきって下さった人の中に、私の3ヶ月間が少しでも残り、今後の糧となってくれたとしたらこれ以上に嬉しいことはないです。

また、文の間違いや改善点など目につくところがありましたら連絡していただければできる範囲で対応させていただきたいと考えています。
その他、疑問に思ったことがありましたらそれもご連絡ください。


最後に、今回のブロック代表戦に臨むにあたって、最大の心の支えとなったMtGのプロの言葉を置いてこの記事を終わらせたいと思います。

あらゆる要素が束になってかかっても、磨き上げられた技術から繰り出されるプレイほど勝敗に影響するものはない
‐パトリック・チャピン/Patrick Chapin


それでは、またお会いしましょう。

by ATM


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