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もうジャッジキルなんて言葉を使うのはやめようよ

はじめに

こんにちは、ATMです。
今回は大会におけるジャッジという存在について、のお話をしたいと思います。

とはいっても、別に難しい話をしたいわけではありません。
ジャッジという存在は別に怖いものではないことを伝えたいと思っていたため、いい機会なのでその考えを綴っておこうと考えた次第です。

今回の記事は特に、ジャッジに対して良い印象を持たない方や、ジャッジが怖くて大会に出るのをためらっている、という方が、大会に気軽に参加できるようになればよいと思って執筆しました。
そのため、最後まで完全に無料にしてあります。

毎度のこととなりますが、面白いと感じていただけたなら、有料部分を購入して、投げ銭をしていただければ記事執筆のモチベーションとなりありがたく思います。

ジャッジが介入するシチュエーション

私が考えるに一般的にジャッジが介入することの多いシチュエーションは以下の3つです。

・誤って相手のデッキの中身を確認してしまった
・ルールの処理において、プレイヤー間で意見が別れた。
・片方がルール違反を犯した

CS参加者ならあるある、といった内容でしようか?

ここからは、私の経験の中で、印象に残っているジャッジが絡んだ体験談を挙げ、そこからジャッジの役割について解説してみましょう。

ケース1 対戦相手のデッキをこぼしてしまった。

先ほど大会中にジャッジが介入するパターンで最も多いパターンに挙げたものですね。

その試合はとあるCSの予選の後半のラウンドのことでした。
当時は対戦相手が非常に試合慣れしていたのと裏腹に自分の大会参加経験が浅く、非常に緊張していたことを覚えています。

その緊張の中、私が対戦相手のデッキをこぼしてしまったところ、対戦相手の方は迷わずジャッジを呼びました。

普段の公認大会ならセルフジャッジで済ませるようなことでしたが、ここはCSの場であることを強く意識したことを覚えています。

とは言っても、悪意がある行為ではないと判断されたため、警告のペナルティを受けるに留まり、そのまま試合は続行されました。

警告のペナルティ

警告2回でゲームロス(マッチの中の1敗扱い)となる罰則。

大会中累積する罰則ではあるが、1度の警告では何も起こらない。

後にも述べますが、これは私にとって悪い経験ではなく、むしろ重要な経験となっています。
しかし、この時は恥ずかしながら相手の躊躇いのなさに少し理不尽を感じてもいました。

ケース2 デッキをこぼされたがジャッジを呼ばなかった

ケース1から数か月後のことです。

今度はCSの1回戦、私が試合の準備に手間取っている内に対戦開始がコールされてしまいました。
すると、対戦相手は私の準備が整わず試合を始められないことを理由にジャッジを呼びました。

その時、彼は言外に罰則を求めていたことを覚えています。

しかし、ジャッジは到着した時点で既に準備が整っているのを確認した後、お互いに特に罰則を与えることもなく、そのまま試合を開始するように告げました。
対戦相手はその裁定に不満そうでしたがそのまま試合が開始されました。

試合は進み、2本目のサイドチェンジを終えた後のシャッフルにおいて、対戦相手が私のデッキのシャッフルを失敗し、サイドカードを見える形でこぼしてしまいました。

その時、私にはジャッジを呼ぶかどうかを決める権限がありました。
しかし、(主観的には)罰則を狙ってきた相手と同じ土俵に立ちたくないという拘りを優先させた結果、そのままセルフジャッジで試合を進めました。

セルフジャッジ

ジャッジを介入させず、お互いに意識を擦り合わせてゲームの処理を進める行為。

その後、私はサイドカードを確認されたという事実こそあれ、問題なくそのゲームを取ってマッチに勝利しました。

2つのケースを比べてみる

この2つのケースを見比べて、皆さんはどのような感想を抱かれたでしょうか?

あまり、競技的にカードゲームをプレイしない方々からはジャッジを呼んだ側は勝ちに拘るプレイヤー、ジャッジを呼ばなかった私は謙虚なプレイヤー、という風に映ってしまったかもしれません。

しかし、競技的に考えるならば、このケースでは2つともジャッジを呼んだ側に非はなく、むしろ、ケース2でジャッジを呼ばなかった私に非があるのです。
(ケース2の対戦相手にも問題点はあるが、それは後述)

一体どういうことなのでしょうか?

ジャッジという存在に対する認識の齟齬

そもそも、皆さんはジャッジをどのような存在だと考えているでしょうか?
競技的にカードゲームをしていない方々のジャッジに対するイメージは「罰則」を与える運営側の人間、という程度のものではないでしょうか?

特に遊戯王では「ジャッジキル」などという物騒な単語が半ば一人歩きしていることもあり、ジャッジを呼ぶことへの抵抗が強い印象です。

しかしながら、ジャッジは怖いものでもプレイヤーの敵でもありません。
それどころか、彼らは基本的に良きプレイヤーの見方なのです。

ジャッジの役割‐ジャッジはプレイヤーの敵ではない

ジャッジの役割は何かと言うと、ゲームが正しく進行できるように手助けを行うことです。

ルールミス、意見の食い違い、非紳士的行為など、ゲーム進行を妨げる要因を取り除き解決策を提示することで、その後に遺恨を残さず円滑にゲームを進められるようにしてくれる存在です。

その結果として、問題を起こしたとされる側に注意、警告などの罰則が与えられることがあるというだけのことです。

あくまでも進行を補助してくれる役割でしかありません。

ジャッジ介入のメリット①責任の所在

では、ジャッジを介入させるメリットとはなんでしょうか?
最も大きいのはプレイヤー間に遺恨を残さないことだと考えています。

例えば、先ほどのケース2において、サイドカードを確認した対戦相手がそのカードをケアしたプレイを続けた結果、実際にそのサイドカードが機能せず試合に敗北したとしましょう。

その時、私が心穏やかでいられるかは分かりませんね?

この時、ジャッジが介入していれば、それはきちんと解決された問題となるため、モヤモヤは残りません。

この第三者の介入で問題が解決される、という性質が非常に重要なのです。

デッキをこぼすパターンだと個人の気持ちの問題になってしまうこともあるので、ルールの食い違いを例に挙げて説明しましょう。

とある対戦で、ゲームの勝敗に関わる効果の処理において、意見の食い違いが発生しました。
ここでセルフジャッジの末、間違った処理のまま対戦を進めてゲームが終わったとしましょう。

この場合、後日、ルールミスで負けた側が正式な効果処理を確認して怒ることもありえますね。
ここでジャッジが介入し適切な処理を伝えた場合、こういった不幸な事故を防ぐことができます。

もちろん、ジャッジも人ですので、公式に解答のない処理に遭遇した場合や、状況把握ミスから結果的に間違いとなる処理を伝えてしまうこともあるでしょう。

しかし、それは人が介入する以上は仕方のないことです。
ここを掘り下げるとジャッジの責任などの話になっていくため、今回は取り上げません。

ただ、この時重要なのは、そこで間違えた処理をしたことでジャッジが責められることこそあれ、それがプレイヤー間の問題に発展することはないということです。

ジャッジ介入のメリット②不正防止

これは、より競技的な視点となりますが、やり得な不正を抑止するという点もあります。

今回もシャッフルのミスを例に挙げてみます。
シャッフルを失敗してカードを見てしまうプレイヤーの大多数は悪意がないことが殆どでしょう。

しかし、現実には悪意を持って不正に情報を得ようとするプレイヤーも少数ですが、確かに存在するのです。

そういったプレイヤーを野放しにしないためにも、シャッフルミスが起こった時はジャッジを介入させるべきなのです。

仮に、悪意がなければジャッジから警告のペナルティが与えられたとしても、その後問題を起こさなければ何も問題はありません。

しかし、悪意があったプレイヤーの場合、ここで警告を受けると今後の活動に影響が出てきます。
また、警告を受けることを理解すれば似たような行動を取らなくなる可能性もありますね。

ここから分かることは、ジャッジを介入させるべき場面でジャッジを介入させないというプレイスタイルは、意図しなくても不正を行う側に荷担する行為となってしまうということです。

先ほどのケース2で、私が自分のポリシーに乗っ取りジャッジを介入させなかったことは、お互いにとって良くない行為であったことがお分かりになっていただけるのではないでしょうか?

ジャッジ介入のメリット③未来への投資

これは先ほどの不正の防止に近い内容です。

大会に不慣れな人がミスをしてしまった場合、ジャッジを介入させることで、こういった行為はジャッジが介入するんだ、ということを教えることができます。

普段はなあなあでカードをプレイしていたとしても、大会になったらそこは専用のルールがあり、場合によっては罰則がある、ということを身をもって実感することができれば、今後はそういった問題を起こさないように気をつけて立ち回ることが可能になります。

先に例に挙げたケース1の自分の体験は分かりやすいものでしょう。

シャッフルのミス以外にも、公式大会でのスリーブの不統一、マークド紛いのスリーブの使用などは大会初心者が躓きやすい問題ではあると思いますが、ジャッジを介入させることで、ルールを理解してもらうことができるはずです。

そういった場合は、間違っても高圧的になってはいけません。
相手が知らずに問題を起こしてしまったなら、それを優しく教えてあげるのも、先達の役割です。

ジャッジを呼ぶことは悪ではない

ここまではジャッジの役割と有用性を解説してきましたが、読み進めて下さった方々は、ジャッジを呼ぶことは悪いことではないことがお分かりいただけたのではないでしょうか?

ジャッジを呼ぶという行為は、勝ちを狙っているわけではなく、ゲームを正常に進行してもらうための仲介役を挟む行為だと認識してもらいたいのです。

つまり、ルールで分からないことがある、裁定に納得できない、という時は対戦相手に断った上でジャッジに介入してもらった方がお互いに遺恨が残らず、良いことだらけです。

遊戯王におけるジャッジキルという概念

ここまでジャッジの必要性と有用性を解説してきたわけですが、こと遊戯王界隈においてはジャッジキルという概念が蔓延っています。

何かルールミスをした場合、重箱の隅をつついたように騒がれてジャッジを呼ばれた挙げ句失格にされる、という半ば都市伝説めいた噂ですね。

これは、ひとえにKONAMI公式が競技的なジャッジの育成、及び罰則の運用を行っていない、というところに全ての問題があります。
(またフロアルールの問題に戻ってきてしまった…)

世界最大のTCGであるMtGにおいては、ジャッジになるにも専門の資格が必要となり、明確に責任と力が伴う職業となっています。

しかし、遊戯王は公式にジャッジが存在せず、公認大会ではカードゲームの担当者が電話で裁定を確認する程度に留まります。

違反行為に対してまともに罰則が与えられることもなく、また、CSのように大会中に累積する罰則もありません。
唯一罰則が与えられるとしたら、それはルール違反と判断されたことによる一発マッチロス程度です。

これが一般にジャッジキルと呼ばれる罰則であり、マッチロス以外の罰則が出ない以上は他の罰則が認識されないのも無理はありません。

世界大会予選期間中に遅延、不正の問題が必ずといっていいほど話題になるのは、KONAMI公式がフロアルール改善の手を打たないため、基本的に悪意を持ったプレイヤーが不正をやり得な条件が揃ってしまっているからです。

残念ながら、規模の大きい公認大会に参加するならば、自衛の心得はあった方がいいでしょう。
問題に直面したと感じた時は迷わずジャッジを呼ぶべきです。

そうすれば、少なくとも間違った処理をごり押しされるといった問題は解消されます。

CSなど非公認大会におけるジャッジキル

先ほどは公認大会を例に挙げました。
では、より競技的なプレイヤーが参加するCSなどではより激しいジャッジキル合戦が行われているのではないか?という疑問を持たれるかもしれませんが、実態はむしろ逆です。

非公認大会では滅多なことがない限りマッチロス(所謂ジャッジキル)は起きません。

なぜなら、MtGのような公式のジャッジこそいないものの、大会毎にヘッドジャッジ(一番偉い人)、及び数人のジャッジが用意されることが殆どであり、いちゃもんめいた罰則適用の要求など(所謂ゴネ)は却下されるからです。

あまりにゴネが多いプレイヤーはむしろ運営側にマークされます。
このように、非公認大会ではジャッジが機能しているため、公認大会よりも比較的安全にゲームを楽しむことができます。

非公認の方がまっとうに競技的な大会運営を行っているのは皮肉なものですね。

そもそも罰則の適用を求めることは違反

そもそも、ジャッジに罰則を適用することを求めることは違反行為です。

それは何故かというと、非常に簡単明快なことで、(一応)KONAMI公式の大会規定に記された違反行為であるからです。
(下の画像は2020年の店舗代表戦の罰則規定より参照)

より踏み込むとジャッジの独立性に関わる問題でもあります。
ここら辺について知りたければ、MtGのジャッジ資格とかに関する情報を調べてもらえれば分かると思うので割愛します。

そのため、非公認大会では相手にロスを出してくれ、と要求することがそもそもできません。

だから、ケース2において、対戦相手がジャッジを呼ぶことは良いことだったものの、その後罰則の要求を言外に求めていたことはあまり誉められた態度ではありませんね。

ただ、公認大会になると、まともな罰則規定もジャッジも用意されていないため、ごり押しからロスを出すように迫る不埒な輩も現れてくるわけです。

何度も言いますが、現状の公認大会などで、ジャッジがいない大会では自衛するしかありません。

KONAMIにも一応ジャッジはいます

最後になりましたが、普段は表に出てこないものの、KONAMIにも一応ジャッジの役割を果たす人間はいます。

しかしながら、この人たちは非常に大きなイベントでしか会場に現れません。

具体的には日本代表決定戦や、YCSといった大きなイベントの会場ですね。

普段は私達には縁のない彼らですが、こういった会場では、一応公式のジャッジが待機しているため、問題が起きた際には、仲裁をお願いすることができます。

特に、YCSではお世話になる機会もあるかもしれませんので、この事実は以外と重要です。
分からないことが起きたときは積極的にジャッジを呼んでみましょう。

その場で益のない押し問答をするよりもよほど的確に状況を改善してくれるはずです。
YCS参加予定の方は是非、積極的にジャッジを活用してみてほしいです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
ジャッジは怖くないということ、大会では積極的にジャッジを頼っていいということが伝わったなら幸いです。

これまでCSに怖いイメージを持っていたけど、イメージが変わったから一度参加してみたい!という意見が生まれてきてくれたらこれ以上に嬉しいことはありません。(あと投げ銭)

私個人の意見としては、非公認のジャッジだけでなく、仕事をしてくれている時のKONAMI公式のジャッジは非常に頼りになると思っています。

そのため、可能なら、日本代表決定戦だけでなく、ブロック代表決定戦のような、大きな権利のかかった大会には公式のジャッジが派遣されるシステムが作られないかなぁ、と常々考えています。

まあ、ないものねだりをしていても何も起こらないので現状できる範囲で楽しんでいきたいと思います。

それではお付き合いありがとうございました。

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