『知らないどうし』は大人の掟
このイントロにワクワクする人も多いのでは。
『知らないどうし』は、ユーミンの最新アルバム『深海の街』7曲目収録曲である。
私と言ったら、この曲の出だしを聞く為にドラマを観ていたと言ってもいいくらい。
初めてこの歌をフルで聞いた時、道ならぬ恋をした二人の別れの歌なのか、ふーん、という程度の感想しかなかった。
ところが、これは、禁断の恋の終わりの歌ではなく、しのび合う二人の情事の後の別れを歌った曲なのだ!と、気付いた時から、急に景色が目の前に展開し、なんて成熟した歌なんだろうと思ったわけである。
女性の方は愛し合った後に未練など全くない素振りで、もう知らない同士よと言ってのける。だからこそ「全てを消去」し、「燃やしてしまうの」と言い放つ。
それに引きかえ男性の方は、雨の中、帰路につこうとし、通りを曲がろうとするけれど、
「かすかに 何度も何度も振りかえり
ふと立ち止まり 足早に消えてゆく」
のである。
このフレーズの畳み掛けるようなユーミンの歌唱をじっくり聞いて欲しい。このテの歌い方が大好きな私には堪らない。
道を外れた恋は、とにかく、とやかく言われがちだ。特に昨今は。でも、本当の胸のうちなんて、当人同士にしかわからないことだろう。
今、思い悩んでいる女性がいるなら、恋の行方の答えはこの曲にあると言っていい。
それが今回の肝、
「いつか あんなにも あんなにも
愛していたと
さめざめと さめざめと 胸の底で涙を流すの」
本当に別れた後で、胸の「底」で涙を流すのだ。胸の奥ではなく。
それにしても、道ならぬ恋に迷い込んだら、女性は淡々と、飄々と。男に後ろ髪引かせるくらいじゃないとね。
それが出来ないお子ちゃまは、後ろ指さされるような恋をしてはいけません。
実は、不倫は、本当の大人しか出来ない恋のカタチなのだ。
この曲、タイトルは『知らないどうし』だが、歌詞の中では「知らない同士」と表記されている。これがタイトルの雰囲気を考えての事なのか、それとも…。
『深海の街』は名盤だ。『知らないどうし』の一つ前の曲『What to do?waa woo 』からこの曲へ続く心地良い流れが名作である事を物語っている。
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