『ふってあげる』
松任谷由実さん20枚目オリジナルアルバム『Delight Slight Light KISS』3曲目収録曲。
夏になると聴きたくなるのは、グラスにカラカラ鳴る氷の音がイントロに使われているからか。
ユーミンの曲は、メロディはもちろんのこと、歌詞も、どこを切り取っても無駄がないのだが、この曲もいらない箇所が一つもない。
1番のサビ、
「あなたが最後に悩まぬように ふってあげる」
だったり、2番のサビ、
「私が自由を望んだふうに ふってあげる」
が「肝」だったりと、やっぱり天才だねと唸るのだが、私は、この曲の肝は2番のサビ前のフレーズだと思う。
「シーズンのページがさかさまにめくれて
いちばん笑ってるショットで止まってる」
これって、開いているアルバムが風にあおられてめくれて、止まったところに二人の最も笑ってる一枚が貼ってあったっていうことでしょ?
もう、解説するのは野暮な感じだけれども、「アルバム」という文言がなくてもそれを思い浮かばせてくれる。天才。
これは『ルージュの伝言』にも通じるけれど、そのお話はまた後日。
1番のサビの直前もとても良くて、でも、それを言うとキリがなくなるので。やはりどれを取っても無駄がない。
ユーミンは、景色や気持ちを確実に言葉にできる、しかも、誰にでもわかるようにシンプルに表現できる稀有な存在だと思う。
聴いていると、夏の夜風をふわっとうなじに感じて、その心地良さにずっと浸っていたくなるようなそんな曲。
好きな人を振る歌なのに、ちっとも思い詰めていなくて、この主人公は「ふってあげる」時にきっと微笑んでいたんじゃないかなと思わせてくれる、魅力的な曲。
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