見出し画像

俺が今シーズン山で死なないために

シーズン前になるとあちらこちらから、カッコイイ映像クリップが発表されて、気分アゲアゲで雪を待つのがルーティン化している昨今、あえて俺は昨シーズンの失敗事例を書き留めて、先ずは自らの戒めにしたい。

自己紹介すると東北を拠点とする50代バックカントリースノーボーダー

昨年実績:BC 34山行 山行総距離 440.7km ゲレンデ利用17回

まぁまぁ活発な方のソロイスト(単独行者)つまり偏屈な初老人です。

あえて加えたいのは「俺のため」であり「みんなのため」ではないこと。
文はごく私的な記録と考えに基づいており、「正しさ」を担保しません。

それでもなお、自分のためになると思うならどうぞ読んでみてください。

無粋な批判とか要りませんので、どうぞおかまいなく。

昨シーズンは4回死にかけた。それぞれシチュエーションは違うけれど、共通点がある。それは最後に回して、それぞれの状況と反省を手短に綴る。

画像1

【1死に目】

場所:屏風岳東斜面

発生:表層雪崩誘発

原因:急傾斜での斜行、積雪観察不足

幸運:足元で切れて流れたので中止できた。背後で崩れたら流されていただろう。また、雪崩れたすぐ横を滑降するのはあまりよろしくないと思う。

対策:斜面観察を十分行ない正確に評価する。(評価しきったとしても崩れることもある)ともかく雪面へ刺激の少ない滑降をこころがける。スラフマネジメントを考慮したラインどりも意識していきたい。

画像2

【2死に目】

場所:とあるスキー場(ゲレンデ外)
発生:表層雪崩誘発、完全埋没

原因:ドロップポイントでの斜行、それによる表層雪崩の誘発、中間部で流れに入りこみ、足元をなぎ払われ、足が固定されたままうつ伏せに埋没

幸運:浅い埋没(約10cm)湿雪で比較的ゆっくりだったため対処できた。仰向けや頭が下になったらパニックになったかもしれない。口の周りにスペースを作るのが精一杯で、視界を失ってからはほとんど何もできなかった。

対策:樹林帯のドロップポイントは急傾斜を避けて慎重に決定する。緩斜面で見通しの良さを優先する。スラフの流下量、スピード、方向に留意する。

樹林帯は思い通りのライン取りができないことがままあり、さまざまな妥協が自分が起こした雪崩に下部で呑まれるという間抜けな状況が発生しうる。
樹林帯での表層雪崩は樹木に突撃させられるので危険度が高い。

画像3

【3死に目】

場所:鳥海山 新山北斜面

発生:滑落未遂

原因:登攀用具の置き忘れ、予想外の凍結の中、戻れない場所に入った。

新山東斜面は良雪で2,3本遊んだのち、北斜面も行けると踏んだが、強烈な凍結斜面で山の向きで全然違う雪質であることを思い知った。

幸運:麓から登ってきた人に下部の情報が聞けた。中間部から凍結が緩んだ。

対策:クランポンを車に置き忘れたのを気がついたのは1kmほど歩いてから。戻るのが面倒で傷を広げた格好。
しかし、もしクランポンがあったとしても、履き替えができる状況ではなかった。結果的に運良く滑降できたが、七高山や上部からの視線が痛かった。心配されていたかと思うと赤面する思い。

画像4

【4死に目】

場所:鳥海山 鍋森南斜面

発生:転落(半身)

原因:4月下旬の春山、ハイクアップ時に積雪下で融雪して薄くなっているのに気づかず踏み抜いて半身転落。

幸運:ポールや板が引っかかって何を逃れたが、下の岩等に勢いよく完全落下して打撲、気絶した場合、近くに誰かが通りかからない限り気付いてもらえない。滑降中であればどうだったか、状況悪化は想像に難くない。

改善:よく観察すると雪面の歪みや変色、小さな穴など見つけられる場合がある。しかしわずかな積雪でも隠される微妙なものでもあるから、春山においてはどこでも底が抜ける可能性があることを念頭に活動しなければならない。踏み抜きは怪我、時間、体力消耗、共にリスクが高いので、ライン取りは気をつけたい。(とはいえ現場では結局運任せではあるが)
滑走時、危険度が高いシチュエーションではポールを畳まずに持って滑走することにより転落時に引っかかり、半身で済む可能性がわずかに上がる。


まとめ

全てに共通するキーワード

1.せっかくここまできたのだから(ケチ)

2.成り行きまかせ(ぐうたら)

3.わずかな兆候の見逃し(鈍感)

4.ほとんどなにもできない(無力)

特にドロップポイントの選定は、急すぎないこと、見通しが良いこと、滑り出し後のライン多様性などをこれまでより二倍の時間を使いよく検討したい。また積雪観察とテストはなるべく妥当な位置を選定して必ず行う。

ソロイスト(単独行者)は人一倍慎重でクレバーで、かつ幸運でなければならない。昨シーズンはきれいに幸運を使い切ったと言える。

昨シーズン4回死にかけたとしても今シーズンはまた新たな心持ちで迎えるのはご都合主義であろう。でもそこを心配しだしたらキリがない。

「なんかあったらどうするの?」と問われれば「なんかあったら終わり」 元からそういう遊びだもの、あらかじめご了承いただきたい。

なぜかふと「ラストシーズン」という思いがよぎる。

人生は笑って死ぬか、泣いて死ぬかの二択でしかないようにも思う。

生を授かり19,000日余りが経過しており、20,000日まであと少し。

悔いのないシーズンを送りたい。