マガジンのカバー画像

アジ・ダハーカの箱

15
滅び行く人類とその天敵ドラゴンとの戦い。終末世界を放浪する者はその瞳にいったい何を映すのか。 逆噴射小説大賞ノミネート作品として始まった小説です。1900の作品の中から二次選考通…
運営しているクリエイター

2019年4月の記事一覧

アジ・ダハーカの箱 第4話:死都編 【起】

アジ・ダハーカの箱 第4話:死都編 【起】

「ちょっと、旦那ァ、恵んでくだせぇ。どうかお恵みを。あなたのために祈りますから」

「邪魔だ。どけ」

人でごった返す雑踏の中、俺は擦り寄ってくる物乞いの胸を勢い良く突き飛ばした。奴はそのままゴミ捨て場に吹っ飛び、頭に生ゴミを被りながら俺に対して何かわめき散らしている。俺は無視して歩き続ける。

「ねえ!ねえ!あんた!奴隷を買わないかい?若くて良いのが揃ってるよ!」

「間に合ってる。失せろ」

もっとみる
アジ・ダハーカの箱 予告編:死都へ

アジ・ダハーカの箱 予告編:死都へ

「良し。全員揃ったな」

乾いた空気が冷たい大地を撫でる。満点の星が夜空を彩り、殺風景な荒野を静かな光が照らしていた。動物はおろか虫けらすらも存在しない荒れ果てた地。闇夜の岩場。その影の中で響く声があった。

声の主はいかにも軍隊上がりといった立ち振る舞いを見せる大男だった。白髪と揃いの無精髭を撫でる姿は威厳に満ち、数多の修羅場をくぐり抜けた風格を漂わせ、その存在感だけで空気を張り詰めさせてい

もっとみる