天保江戸特命調査を紐解く試み
はじめに
この記事は源清麿を最推しとする一人の素人が、中でも虚無と名高い天保江戸特命調査に何らかの意味を見出そうとした試みの記録です。
水心子正秀や蜂須賀虎徹については、残念ながら解像度が足りていないという自覚がございます。至らぬ点多々あるかと思いますが、暖かい目で見守っていただけましたら幸いです。
2023/3/8 2版 余談 水心子正秀に追記しました。
それに伴い、「余談 水心子正秀→水心子正秀」へ変更しました。
天保江戸特命調査概要
<物語の流れ>
入電
合流、選択(水心子正秀・源清麿から一振りを選ぶ)
両国橋東詰(遡行軍改革維持部隊/講武所守護部隊)
馬喰町
炮烙箱発見(町方与力百人組/南町奉行所警戒部隊)
江戸藩邸上屋敷(上屋敷小姓組/講武所武装部隊/上屋敷大番隊)
<時代背景>
天保 14 年(西暦 1843 年)
今回の3振の中で最もこの時代と深い関わりを持つのは源清麿です。
この1年程前に刀工源清麿(当時源正行)は江戸を離れ、この頃長州の萩に滞在しています。そして天保 15 年には萩を発ち、江戸に戻って四谷に鍛錬所を開きます。清麿の銘を使い始めるのはこの後の話です。本編中、水心子正秀が心配していたのはこの源『清麿』が生まれない世界と思われます。
<登場人物>
① 窪田清音(両国橋東詰)
天保の改革を巡ってガチバトルし、水野忠邦に追い出された人。特命調査では序盤に出てきてさらっとやられていますが、多分この「放棄された世界」のキーパーソン。本編では言及されていませんが、江戸藩邸上屋敷で講武所武装部隊も出現していることから、「水野忠邦と窪田清音が対立しなかったら」という if の世界であると推測されます。
刀工源清麿の清の字はこの窪田清音からとられたといいます。「為窪田清音君」という作が残っており、刀工源清麿がいかに窪田清音に敬意を払っていたかが伺われます。どうでもいいですが、清麿が「清音様」と呼んでいる幻覚に取りつかれており、先日回想を読み返して窪田清音フルネーム呼び捨てで呼んでいることに衝撃を受けました。余談です。
② 鳥居耀蔵(市中戦ボス)
本人は本人なりに日本を守るためにやってたみたいですが、少なくともこの頃はむちゃくちゃ嫌われていたようです。この特命調査において、水心子と清麿は妖怪と呼ばれ民に恐れられた鳥居を首謀者として疑っていました。
③ 水野忠邦(江戸藩邸上屋敷)
ボス。上で「窪田清音と水野忠邦が対立しなかったら」の if であると推察していますが、この結果、鳥居耀蔵がいつまで経っても寝返らず水野忠邦が老中首座に居座っている……というストーリーも考えられますね。
英語で読み解く天保江戸
虚無虚無マインスイーパーとして知られる天保江戸ですが、英語で読むと日本語で聞くストーリーとは少し違った印象をもつことがあります。
個人的に「これは知らなかったな」と思った部分を抜粋します。
先行調査員との邂逅前、蜂須賀虎徹の台詞。
言ってる内容自体はそれほど変わりませんが、英語の方が「今後の展開『火事と喧嘩』に気をつけろ」と直接的に訴えかけてきています。つまり炮烙箱と遡行軍との交戦ですね。あーなんかこの後の展開で火の要素が出てくるんだな、みたいな。
先行調査員の説明中に蜂須賀虎徹が清麿を見て何かに気づく場面。
こちらもニュアンスの微々たる差、程度のものですが、清麿が「What's this?」と答えたことにより、蜂須賀の「君に何か問題があるわけでは全くなく、あくまでこちらのことだよ」という感が増しています。
部隊編成に源清麿を加えた時に発生する蜂須賀虎徹のモノローグ。
なお、「これも縁ということか……」は極のみで発生します。
なんかめっちゃびっくりしてますし destiny(運命)まで言ってます。
これについては蜂須賀の手紙を交えて後述します。
江戸藩邸上屋敷小姓組(一戦目)に勝利した後に発生する会話。
「あくまで武士として、忠を尽くそうというのか」という台詞ですが、英語でみると「彼は武士としての務めを果たそうとしているようにしか見えなかった」と「he」で指定されています。
恐らくネームドキャラでは無く「亡骸も残らなかった」ため、最後に水心子が斬り捨てた遡行軍を指している……とするのが自然です。They ではなく he としているのは、たとえ一人になり敗戦明らかであっても最後の最後まで遡行軍が諦めなかった……ということでしょう。こちら側の部隊は3連戦1戦目で、辛勝したという空気でもないため、『一縷の/A glimmer』は時間遡行軍の『一縷の望み』を題している可能性が出てきます。
窪田清音を倒した時も「彼によく似ていたが、消えてしまった」と言っており、若干気落ちしたような空気が流れます。硬い表現を多用(源清麿と比較するとわかりますが、スラングが極端に少なく shall 等を使う形式ばった言い回しです)していた水心子が、ここにきて「Damm it.」と決して綺麗ではない言葉で悪態をついていることからも、その動揺がわかります。水心子正秀は彼らの忠義を尽くして死んでいく遡行軍の姿、そしてそれを斬り伏せてでも進まざるを得ない状況に胸を痛めており、それを受けた蜂須賀虎徹は「どんな想いも、力にして、それでも進まなければいけない」と答えます。
敵も duties (責務/務め)、そしてこちらも dutiesです。こっちが正義であっちが悪だ、なんて決まりはないのです。あちらにはあちらの忠義がある、これはそういう闘いなのだ、と初めて示された一節だと思います。
各特命調査の主題
天保江戸特命調査においての主題は、恐らく先ほどの話題でも述べた水心子正秀の発言に凝縮されています。
ここではボス戦終了後「状況終了」と宣言され、厳密には特命調査に該当しない疑惑のある聚楽第は除き、残り4つの特命調査で読み取れる主題は何かを考えてみます(今回の試みで天保江戸から着手しておりますので、他3つはあっさりと抽出してきています)。
②文久土佐: 「歴史を守る、それが刀の本能」「刀の先に人がある」
③天保江戸: 「敵もまた、武士として主に忠を尽くしている」
④慶長熊本: 「刀剣男士も場合によっては時間遡行軍と同じ働きをし得る」
⑤慶応甲府:「愛に果てはないが、命も物語も永遠ではない」「愛が物語=刀剣男士の逸話を作る」
歴史的背景のインパクトがやや弱い印象はありますが、主題に絞って並べると天保江戸も他と遜色ない重みを持たされているのでは、と感じます。
特に③と④を並べると、本当にどっちがどっちかわからないですよね。彼らはいずれも責務として働いているだけです。極めつけに⑤では「刀剣男士をつくるのは限りある命の人の子が紡ぐ果てのない愛=逸話」であるとしています。歴史修正主義者(物語>歴史)と時の政府で一体何が違うんだ、本質的には殆んど変わらないのではないか……という疑問が生じてきます。
蜂須賀虎徹の手紙
次に蜂須賀虎徹の手紙を読み、彼にとって特命調査がどういうものであるのかを考えます。以下は蜂須賀の修行について先日ツイートした内容です。
仮定に仮定を重ねる形になり、徐々に怪しい雰囲気が漂ってきそうですが、これを踏まえて特命調査にもう一度戻りましょう。
特と極では台詞差分がありますが、これを並べてみます。蜂須賀虎徹は何故か同じ台詞で異なるトーンの音声を収録している箇所が多くありますが(聴き比べると結構味わい深いです)、2箇所に極での追加台詞があります。
真作に相応しい力と優しさを得たいと願って修行に出た蜂須賀虎徹。
上で述べたような修行を経て、さらに本丸に帰還して日々の生活で優しさを体得して完成する強さを求めている蜂須賀にとって、これは「修行の続き」と考えられます。刀剣乱舞世界においての贋作『長曽祢虎徹』として一振りが売られた源清麿(本体)を前にして、「これも縁か」(英語ではdestiny: 運命、宿命)と漏らした蜂須賀虎徹極。
手紙の本文中では語られなかった修行の内容がここで暗示されていると思えば、この掴み所のない物語も少し腑に落ちるような気がしています。
源清麿を前に「優しい強さ」をもって応対するその姿は、その修行が蜂須賀虎徹に真作に相応しい堂々とした立ち居振舞いを与えたことを示唆しているのではないかな、と思います。
正直現時点ではここまでが限界でした。しばらくして解像度が上がり、よりそれらしい言葉選びができるようになったら更新します。
まとめ
天保江戸特命調査の登場人物についてさらってみた結果、何となく歴史修正主義者の狙いが見えたような気がしました。きっと水野忠邦推しなのでしょうね。開国など決してあってはならぬ、天保の改革を万全に進めればこんなことには……!(最終的には寝返りましたが、)鳥居の嘆きが聞こえてくるようです。彼もまた、「今ある平穏」を維持するために強硬手段に出た一人だったのでしょう。
時間遡行軍はそういう主に忠誠を誓い、闘い、破れました。水心子正秀はこの争いに胸を痛めていますが、その気持ちも全て糧にして前に進んで行かなければならない。そういう刀剣男士達の葛藤を描いた一篇だったのだ、と括って、この試みを一旦終わりにしようと思います。
水心子正秀
この記事を書くにあたり、英語での記述(刀帳、入手)をさらっていたのですが、個人的にちょっと衝撃の記載が発見されましたのでここに記しておきます。
これでは「刀剣男士の根性叩き直すために生まれた刀(剣男士)」と自己紹介していることになるので、単に上記のような新々刀の説明をしているのとはわけが違うことに。日本語とは大分ニュアンスが変わってきます。
ちなみに水心子は本丸恒常ボイスで「我が主よ。私は刀、あなたは人。違う存在なのだ」と主張してきます。「刀剣」といってもそれが刀剣男士を指す、というデザインの可能性は否定できません。
清麿の意味深な発言
さらにいえば水心子は台詞でもほぼ一切「自分が刀剣男士であること」と「新々刀の祖である」こと以外喋りません。これは自らを打った刀匠源清麿の逸話をちょいちょい挟み、また自分の意志でものを語ってくる源清麿とはえらい違いです。
どう見ても黒田なのに頑なに黒田のことを語らない、語らなかったおもしれー男として愛されている長谷部くんが巷で有名ですが(初期実装組から半年ほど遅れて博多藤四郎・日本号が実装)、この理論でいくと「水心子正秀は何かを黙っている」可能性は十分にあると思います。刀剣男士の根性叩き直す説でも大慶直胤となんかある説でも。
ちなみに一応述べておきますが、水心子正秀(初代)と大慶直胤は師匠と弟子の間柄です。江戸三作のうち、源清麿が仲間外れみたいな感じです。なのに「大慶が先に来たら困る」ってどういうことなの一体。
水心子正秀、結構重要なポジションな気がひしひしとしています。
が、如何せん情報が足りません。大人しく極での情報解禁を待ちましょう。
2023/3/8 先日、こんな記載が発掘されていました。
私が知る限りは現物の情報が無いので、恐らくもう保存されてはいないのではないかと思いますが、水心子正秀は勝海舟の佩刀としてよく知られています。ですが今のところ、水心子正秀は作中で勝海舟に一切触れていません。
どうも変だな、こんなに有名なのに?南海太郎朝尊は語らずとも武市半平太との関係をかなり示唆してきているのですが、ちょっと妙な感じがします。
と思っていた矢先の上の話題でした。江戸といえば燃え広がりやすい土地で、火薬や爆弾様のものについての記載もよく残っているそうですが、上の記述は江戸市民の避難を踏まえた作戦とは言え、モデルとしては「放棄された天保江戸」によく似ています。
これが正しいとした場合(無論仮説の域を出ません)、
時代背景は源清麿存命期、元ネタは勝海舟の焦土作戦
になり(由来が大分ちゃんぽんになりますが)、
蜂須賀虎徹、水心子正秀、源清麿の3振による特命調査になります。
また、これは私では正確には判断しかねますが、
「蜂須賀虎徹は虎徹真作の集合体というかたちを強めたのでは」
という解釈を拝見しました。なるほど……
さて、真作虎徹と水心子正秀および焦土作戦と並ぶと……
勝海舟ですね。結構勝海舟です。
しかし、だとすると、蜂須賀虎徹も水心子正秀も一切勝海舟に触れていないのは逆に不自然だ、という気がしてきます。
(蜂須賀虎徹が触れないのは当然として、先述の通り水心子正秀のボイスにはあまり「元ネタ」らしい要素が含まれていません。あるとして南海太郎朝尊との回想ですが、この二振りの関係についても疑問視の声があります)
以上を踏まえて、以下2点の仮説を置いておきます。
① 蜂須賀虎徹と水心子正秀で「勝海舟」要素を追加した(完了)。
② 蜂須賀虎徹と水心子正秀を並べるなど、海舟虎徹実装準備を進めている。
個人的には海舟虎徹が実装されてほしいのですが。
運営さん、よろしくお願いします。