固定することで安定すると感じてしまう罠
全てのゴルファーが理解しておかなければならない運動学の大前提は、
「自分の身体を寸分違わず思い通りに動かせる人はいない」
ということ。
ゴルフスイングでは、自分のカラダやゴルフクラブがどの様な動きをしているのかを感知するのは複雑性が高くて難しいのです。
例えば「クラブフェースの向き」について。
トラックマン®︎という弾道測定器の普及によって、ゴルフ界にはこれまでの常識が覆る様な事実が明らかになってきました。
ショットの成否を左右する打球の左右のブレは、「クラブフェースの向き」がより大きく影響していることがわかっています。
近年では、クラブフェースの向きのコントロールが重要な課題になっています。
それまでは、(というより)今でも信じているかもしれませんが、
「打ち出しの方向はスイング軌道の影響を受け」
「球の曲がりはインパクト時のクラブフェースの向きの影響を受ける」
という、
誤解をしている人がたくさんいます。
仮に、この様な因果関係を「旧弾道分析」としましょう。
今から20年以上前に、「Dプレーン理論」が1999年にトラックマン®︎を作ったセオドア・ヨーゲンセン博士により提唱されたゴルフにおける弾道分析理論が発表されてから、「旧弾道分析」は完全に覆されているのですが、この事実を知っているゴルファーは意外と少ないものです。
Dプレーン理論は少しだけ前提条件が重なってくると、
大変複雑なので理解するのが難しいのが影響しているのかも知れません。
ゴルフスイングが厄介なところは、ゴルフクラブのその形状にもあります。
握っているグリップの棒軸とズレた位置に打球面があるので、野球のバット、テニスラケット、バドミントンラケットなどとは大きく異なる挙動を示します。
結論的に言えば、
バックスイングでは、クラブフェースは時計回りに
ダウンスイングでは、クラブフェースは反時計回りに回転する様な動きをします。
ショットの際、「まっすぐに打ち出したい」とか、
「なるべくストレートボールになる様」という思いから、
クラブフェースを垂直に固定してインパクトしようとしたくなるものです。
実は、これは大きな誤解を生みます。
自分ではコントロールしきれないほど、クラブフェースが回転する力が加わるので、
どれだけ「まっすぐに」「垂直に」クラブフェースをコンタクトさせようとしても、
必要以上に大きな力が加わる上に、
少しでも角度を間違えると、スイング中にかかる力加減によって、
思いとは全く異なる方向にクラブフェースが向いてしまうことがあります。
つまり、
「インパクトゾーンでは、クラブフェースを目標に対して垂直にして、フェースローテーションをなるべく抑えて」
などというレッスンが生まれてきますが、
実際のところ、そんな芸当ができるのは、プロや一部の練習量が豊富なゴルファーだけでしょう。
インパクトゾーン
とか、
ライン出し
などどという言葉を使うレッスンには注意が必要です。
だから、その様なプロレベルのゴルファーは、
自分の感覚にクラブを合わせるべく、
ドライバーからパターに至るまで、
シャフトの硬さやしなり具合、クラブヘッドの形状や重量バランスに至るまで、
微に入り細に入り、自分専用にカスタマイズするのです。
そもそも、インパクトで目標に対して、フェースを垂直に固定して、
フェースの向きの変化を一切抑えてショットする行為自体に無理があるのです。
その証拠に、インパクト付近でスナップ(手首の動き)を大きく使って、クラブフェースの開閉の動きをたくさん使っても、
ショットの感覚が身についているゴルファーにとっては、
クラブフェースを固定したショットとさほど遜色のない左右のブレ幅に抑えてショットすることが可能になります。
つまり、固定する必要がなくなるのです。
「手首を固めて」とか、
「背骨の前傾を固定して」の様な
「固定」を促すレッスンや指導は、
一見合理的に見えて、それほどショットの安定を生むものではないということを知っておくべきです。
いかに、ゴルフレッスンの現場で使われる、一見、「安定的なインパクトを作る」動きに見えて、実は「効果がない」レクチャーを個人の経験と検証の結果から列挙してみたいと思います。
・ クラブフェースを固定してインパクトゾーンでは、垂直にヘッドを動かして、ラインを出す。
・ 背骨の前傾姿勢を保ち、スイングすることで、ダフリやシャンクなど、インパクトの不安定要素を消す。
・ アドレスの時のコックを保ち、スイング中、コックの動きを抑えることで、安定的なインパクトの再現性を高める。
・ アドレス時のグリップの位置は、身体から拳(コブシ)一個分離して、構えることで、毎回、同じアドレスを作る。
・ 「右足踵をスイング中終始浮かせない」(右足ベタ足)で、スイングすることで、インパクトのクオリティを上げる。
・ アドレス時に作った、両腕と胸とで作る「二等辺三角形」を崩さずにバックスイングすることで、バックスイングの軌道を安定させる。
・ 背骨を軸に、回転運動でスイングすることで、スイング軌道とインパクトが安定する。
これらは、ゴルフをやっている人なら一度は聞いたことがあるかも知れません。
簡単に挙げた上記の7つのレクチャーだけでも昔から言われている上に、
今でもゴルフ関連のメディアで簡単に探すことができるものです。
これらの7つに関しては、少なくとも科学的な信憑性が疑われています。
というより、ほとんど否定されてさえ、いるのですが、いまだに根強く信じている人が多くいるだけに、事実が置き去りにされている状態です。
人間の動作を「固定する」ことがいかに非効率で、現実離れしているか。
イメージとしてその様に取り組むことは個人的なことなのであり得るのですが、
「真実とイメージ」を混同してしまっている人が受け手に混乱を与えている。
というのが、今のゴルフ界の問題とも言えます。
もし、あなたがゴルフの伸び悩みを抱えているとしたら、
それは、知らず知らずに刷り込まれてしまったゴルフに関する根拠のない迷信という名の見えない鎖に縛られているからかもしれません。
権威や忖度、ただ上手いというだけで信じ込まれてしまった誤解を
練習を通して、自分自身の動きの経験と検証によって
払拭して、さらなる上達を目指したいと考えていなら
ぜひ、クロックスケールをお試しください。
ゴルフハックスは、クロックスケールを通して、
あなたが諦めきれない上達へ道を一緒に歩いてゆきます。