インパクト前にグリップが減速する?
指導者への戒めとして「学びの欲がなくなった時は引退の時」と考えています。学びの過程で、これまでの概念が覆される時があります。
私の経験では
「インパクトで減速しないためにはボールの30㎝先まで加速し続けるイメージで振りぬく」って、
ビギナーだったころ、ある方に教えていただきました。
「インパクト後の右手の一押しが大事だ」ともいわれました。
科学的な目線でゴルフを考えるようになると、先人の知恵に「???」な時があります。私よりもたくさんの経験を積んでいる知恵ですから、簡単に否定することはできません。
では、どうやって考えればよいのでしょうか?
図は、有名な「運動連鎖」を図に表したものです。
ゴルフではありませんが、直接ボールを投げる動作で考えてみたいと思います。
末端の「ボール」から遠いところ(部位)から徐々に速度が上がってゆき、最終的にボールに最高の速度が加えられるというモデルです。
前回の、ゴルファーのグリップ速度とクラブ速度の変化の図で示した通り、クラブヘッドに速度が加わる前に、グリップが加速します。(時間的な差が生まれる)
しかも、熟練度が増すと、速度変化が急な山の稜線を描きます。
重要なポイントは、
クラブヘッドが加速するのは、グリップの加速が終わった後
ということです。時間的にメリハリのある加速をしないと、十分な加速が得られません。次の部位(この場合はクラブヘッド)を勢いよく加速できません。
※初動負荷理論が一時専門家から批判を受けたことがあります。「初動負荷理論は、運動連鎖のモデルを壊す考え方だ」という批判が多数ありました。そもそも初動負荷理論が誤解されていたのがその原因ですが、今回は別のお話です。
宇宙に飛ぶロケットも同様に、パーツを切り離すときは、前のパーツの速度が加速中は切り離しません。
加速が終わった時、または減速局面に入る前に次のパーツが切り離され再加速するのです。
上の画像でグリップとクラブヘッドだと、「つじつまが合わない」と思われる方がいるかもしれませんが、グリップスピードは左右の手の平均です。「左グリップ」と「右グリップ」を比べると、明らかな速度の伝達が起こっています。↓↓↓↓
つまり、クラブヘッドを十分に加速させた状態でボールに当てるためには、インパクト後まで「右手で押す」ような動きは不都合なはずです。
しかし、根強く「フォローを大きく」とか「インパクト後も加速を」といった指導がなされているのは、もしかしたら、指導者の独特の感覚(感性)の表現であり、実際にはそのような動きはしていないのかも知れません。
その「独特の感覚(感性)」の正体はまだ明らかにはなっていませんが、昔から言われていることや、固定観念、先入観で指導を行うと実際の現象が見えなくなってしまう場合があります。
指導者として、時には逆転の発想を持てる心のゆとりや探求心が必要ではないでしょうか。