より良い社会へ。①功利主義20190513
資本主義の世界で、今も経済学の分野では功利主義は影響力を持っています。
功利主義とは、「最大多数の最大幸福」(ベンサム)という言葉の通り、世の中の快楽の集計量がもっとも大きいものを好む考え方です。
例えば、五人全員が百万円持っているよりも、1億円持ってる人が一人と貧乏人四人いる方が良いのです。
これにはさすがに批判があって、平等主義的リベラリズムが登場するのですが、今回は功利主義について書きます。
社会は幸福が多い方が良いとされています。これは前提です。
ベンサムの「最大多数の最大幸福」という考え方は、元々は貧しい人達のための考え方でした。
当時のイギリスは産業革命があって、ガラッと社会の仕組みが変わりました。
資本家と労働者の格差は開き、上流階級は既得権で、今の社会よりもずっと格差が固定されていました。
そんな時代に、より多くの人々が幸福になる社会を実現しようと考えたのが功利主義です。
幸福というのは、快楽が多く苦痛が少ない状態のことです。
この功利主義では、
例えば、トロッコ問題
(線路を暴走した列車が走っていてこのままだと線路で作業している五人が死ぬが、線路の分岐を切り替えれば五人は助かり、代わりにその切り替えた線路の先にいる一人が死ぬ)
の時には線路を切り替えます。
その少しあとに、ジョンステュアートミルが「満足した豚であるより不満足な人間である方がよく、満足した馬鹿であるより不満足なソクラテスである方がよい」というように、快楽の質を区別した功利主義を提唱しました。
快楽は、生理的なものよりも文化的なものの方がよいと。
ベンサムとミルは同じイギリス人で、ベンサムとミルの父親は友人同士だったそうです。
さっきのトロッコ問題だと、ミルの功利主義では、
線路の先にいるのが一般的な人間五人で、切り替えた線路の先にいるのが神の手を持つお医者さんだったりノーベル賞候補の大学教授だったりした場合、線路の分岐を切り替えません。
ノーベル賞級の研究成果によって世界的に技術革新が起これば、それによって救われる人は大勢いるでしょうし、腕のいいお医者さんは何人もの命を救うことができます。
このように全体の幸福の量を計算します。
現代の功利主義は、帰結主義(義務や過程ではなく、行為の評価・正当化には結果が重視される)や、総和主義(単純に加算して集計値が最大になるものが正しい)などがあります。
功利主義はしばしば分配を無視していると批判されます。
現代の平等的自由主義(リベラリズム)はそれに対抗して出てきた思考です。
また、古典的な自由主義から分岐したもので、その片割れにリバタリアニズム(自由至上主義・新自由主義)があります。
リバタリアニズムは幅が広くて面白いです。
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今は、富の配分がおかしいです。
ほんの少しの人が富を独占して、格差は開き、貧しい思いをする人は増え続けています。
大金持ちの人の中にも、今の構図をおかしいと思っている人はいるようです。
経済の成長には資本主義が欠かせなかったのですが、
これは、資本主義の結果で、なら共産主義が良いのか、、。
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1930年代のこと、
資本主義の悪い面が気になって社会主義が流行っていた頃に、ソ連が誕生して、世界初のマルクス主義(社会主義)国家、実験のような感じで、当時のフランスの知識人達は「どんな楽園だろう」とか「夢の世界」とか期待していました。
共産党からソビエト連邦に旅行する許可を与えられたフランス人のジット(左寄り)は、ソ連を楽園だと思って称賛していたけれど訪れてみたら見かけ倒しのディストピアだったと素直に『ソヴィエト旅行記』を書きました。
(そしたらせっかく旅行の許可を与えたのにひどい仕打ちだと、左側からもう攻撃されました(右からは絶賛)。)
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なんか、社会主義(大きな政府)がよいようにも思うけれど、本当によい社会とはどのようなものだろうと色々考えてしまいます。
ちなみにサムネイルは台湾の風景
以上