僕がこの会社に入った理由
20年前の3月、僕は就職先の最終面談の場にいた。役員数名と部長数名、人事部長合わせて約5名くらいと対峙していただろうか。大卒の有効求人倍率が1を割っていた超就職氷河期である。
僕はトライアスロンで得た経験を引っ提げ、就職活動の真っ只中にいたのである。一通り自己PRと志望動機を伝え、質疑応答を交わした後、少し時間が余っていたのか、仕切り役の人事の方が「どなたか質問のある方いらっしゃいませんか?」と投げかけた。
この最後の質問が僕の社会への第一歩を決定づけることになるのである。
「最近見た映画で良かった映画は何ですか?」
最後の質問がこれ?という感じはしたが、すぐに答えた。
「マット・デイモンとベン・アフレックのGood Will Huntingです。」
当然、何故?と聞かれることは瞬時に予想していて、案の定「何故?」と聞かれる笑。そのシーンはスローモーションで覚えている。
「マット・デイモン演じる主人公のウィルが、数学者としての敷かれたレールではなく、彼女との人生を自らの価値観で選び、車でカルフォルニアに向かっていく、その生き方に共感するからです。」
その答えを伝えた時、対峙していた5名の面接官が深々と頷いたのである。
「この会社は自分に合っている。」
全く根拠のない、この確信めいた感覚が最初の就職先を決定づける決定打となったのである。まだ就職活動は序盤戦で、かなり大手企業の面接が沢山残っていたのに、である。こうして僕は20年近くも会社にお世話になることになる。
20年間、上司・先輩・同僚・後輩・部下に恵まれ、色んな仕事をさせてもらった。本当に感謝しかない。
そして、今回退職を上司に伝えた時、今度は「えっ?」って顔されたんだけど、僕は自分が20年前と全く変わっていないことに気づかされたのである。
「自らの人生を自らの価値観で選び、敷かれたレールではなく、自ら道を切り拓いていく」
そう、人の本質ってのはそうそう変わらない。