今日本のスポーツスタートアップに投資するならどの領域にすべきか【後編】
こんにちは。W fund高田です。W fundはB2Cサービスへの投資に特化したベンチャーキャピタルです。中でもスポーツ・エンターテインメントには注力しており、自分はスポーツを特に得意領域としています。このnoteでは「今日本でスポーツスタートアップに投資するのであれば、どの領域にすべきなのか」という仮説を自分なりにまとめていこうと思います。
こちらは後半パートになります。ぜひ以下の前半パートをご覧になってから続きをお読みいただけますと幸いです。(1.と2.について記載しております)
https://note.com/atgs2019/n/nd402cd30b1b3
1. 直近3年の特定海外VCの投資先カテゴリーから見るトレンド
2. 昨年のM&Aカテゴリーから見るトレンド
3. 上記トレンドを日本に照らした場合
Fitness
日本のフィットネス参加率は4%と非常に低く、かつ超高齢化社会における健康寿命の延伸という大きなテーマもあり、日本でもポテンシャルがある市場。
最近よく見かけるスポーツジムの会員費の低価格化の流れも市場の拡大には寄与すると考えるが、本当の意味でエンドユーザーの行動を変えることができなければ、利が薄い中での戦いに変わるだけなので辛い。生活の中におけるスポーツジムという視点で、ユーザーのUIUXと真摯に向き合うことができれば、この市場を取るプレイヤーが出るのではないか。
ワークアウト、ヨガ、ピラティス、ジョギングなど様々な形態で可能性がありそう。
一方、イエナカの流れは日本には来ないのではないかと考えている。日本で、というよりも米国でもTonal(https://www.tonal.com/)のダウンラウンドをはじめ、すでに厳しい流れが来ている。やはりCovid-19による後押しは強かったと考えられる。さらに日本の場合はフィットネス参加率自体が低いので、「家で手軽に」というより「モードを変える」きっかけが必要ではないかとも思う。
Betting/Fantasy Sports
Bettingについては法改正に関する兆しはまだ聞こえてこない。先日の初めて合法な州で開催されたSuper BowlでのDraftkingsとFunDuelの動きやベットされた金額($16B/試合とかなんとか)を見ていても解禁後のインパクトは凄まじいか。
海外の当該スタートアップに投資してみたいという気持ちもあるが、賭けの対象になるスポーツは限られている中で、どのようにサービスがすみ分けされていくかは自分はわからない。資金調達ニュースを見ていると、ユーザー同士が交流できるソーシャル性を持たせることがトレンドのようだが、それが長期的な視点での差別化要素になるかは疑問。日本での実施可否に関わらず個人的に興味があるので一緒にリサーチしてくれる人がいればぜひやってみたい。
一方Fantasy Sportsについてはいくつかの事業者が日本にも存在。Bリーグで展開中のMynetのIR資料によると国内市場は約3,000億円。上場企業にガチンコで挑むことになるが面白い領域だと考えられる。
当該領域では、欧州ではSorare(https://sorare.com/)が成長中。NFTも絡めて収益性を伸ばしており、自分は日本におけるSports×web3の領域はFantasy Sportsで伸びると考えている。
Data Analytics、AI Coaching、Training
様々な種類があるが、こと日本市場でしっかりと伸ばしていくというのであれば、コンシューマーからマネタイズできるモデルであることが重要であると考える。チームからのマネタイズになってしまうと現状どうしても上限が見えてしまう。
スポーツをしている学生はもちろんのこと、熱心な社会人が自分たちがお金を払ってでも知りたいデータとは、知りたいインサイトとは何なのかを突き止めたうえでサービスを考案してみたい。
「映像を見て、改善のための練習をし、改善しているかをまた映像を見て確認する」これがこれまでアマチュアスポーツの現場で行われてきたことだが、この「映像」が「データ」になると変わることは客観性だと考える。客観的に事実を捉え、改善を繰り返す、これこそが社会に出て必要な力であり、スポーツはその何よりの訓練だというお話を聞いたことがある。教育の観点でこのデータ系のサービスにお金が流れると面白いななどと思う。
Play Sports
子ども向けの様々な競技のスポーツスクールの市場構造がどのようになっているのか非常に気になる。センシティブな領域なので一筋縄でいかない可能性が高いが、海外のM&Aしている、されている事業者のようなサービスを作れて、市場で大きなシェアを取りうるのであれば非常に面白いと考えている。
4. 日本のスポーツ業界ならではの変化
今日本のスポーツ業界で起こっている大きな変化は以下の2つだと考えている。
学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行開始
Bリーグの新B1ライセンス
順に解説していきたい。
学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行開始
以下は2022年12月にスポーツ庁及び文化庁から出された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン【概要】」
詳細は以下リンクを参照。https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/sobunsai/93813101.html
2018年にスポーツ庁、文化庁が部活動の在り方に関するガイドラインが発表され、2020年には2023年以降の休日の部活動の段階的地域移行を図るとされていたが、今回のガイドラインにも以下のような文言が含まれている。
財源の課題は大きな比重を占めていると考えられ、①公的な予算②生徒からの会費③それ以外のマネタイズ、によって解決していく必要があると考えられる。一方で②については以下のようにも定められており、③の整理は必須ではないか。
この部分に関連して、米国で面白い動きが出ている。学生アスリートが自身のName, Image and Likeness(通称NIL)を使ってマネタイズしてよいという法律が2021年から各州で整備され始めている。以下サイト参照。https://www.ncsasports.org/name-image-likeness
米国で学生アスリートのマネタイズ化、インフルエンサー化という領域で大きく成功するプレイヤーが出てきた場合は、日本でも真似ることができるのではないか。そして、それは先ほどの③に繋がるのではないかと考えている。米国でのNILの動きは引き続き注視したい。
2つ、NILに関連する米国のスタートアップを挙げておく。
The Player’s Lounge(https://www.theplayerslounge.io/)アスリートの裏側をコンテンツ化
icon source(https://iconsource.com/)NILのマーケットプレイス
Bリーグの新B1ライセンス
2026-27シーズンからB1の参加資格が引き上げられる。最初のシーズンにB1に所属するためには、今シーズンと来シーズンの結果で基準をクリアする必要がある。
以下リンク参照。
また、Bリーグ、アリーナ周辺にMIXI、セガサミー、バンダイナムコといったエンタメ企業やトヨタ、三井物産、NTTドコモといった企業が参入しており、大きな動きを感じる。個人の感想だが、前職でスポーツ関連の仕事をしていた人もこの周辺に流れているような気がしており、大きな変化が起こるかもしれないと感じている。
アリーナのBリーグ稼働以外の活用が実現しなければ、アリーナ自体の黒字化は難しいという話も出ており、この点も推進が必要だと考えられる。
5. 投資仮説
最後にこれまでの考察を踏まえて、今日本のスポーツスタートアップに投資するのであればどの領域にすべきなのかという仮説を記載する。
Fitness
オフラインでのサービス提供を、消費者の生活に溶け込む形でデザインできるサービスに可能性を感じる。実はこの領域はすでに投資している。がんばれLifeCoach(https://life-coach.co.jp/)
フィットネスへの意識が変わり始めた先には、Within(https://with.in/)のようなサービスも面白いと思っている。日本の家だとPeloton(https://www.onepeloton.com/)を置く場所あるのかななどと思うので。
Betting/Fantasy Sports
Bettingは海外への投資も考えつつ、しっかりリサーチしたい。
Fantasy Sportsは先述の通り、上場企業と真っ向勝負になるが、日本のスポーツ界にいた経験がある大人な起業家で、アジアを中心としたグローバルに出ていける方とご一緒できる機会があるならぜひお願いしたいと思う。
Data Analytics、AI Coaching、Training
消費者からマネタイズできるサービス。
ライザップのように高価格帯で攻められる領域があるのであれば、そちらにも非常に関心がある。
Play Sports
繰り返しになるが、子ども向けのスクールの市場構造を把握したうえで、一定の市場シェアを取り切れる可能性があるのであればぜひご一緒したい。
学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行やBリーグのアリーナ構想とも関連すると考えている。
学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行
米国のNILにヒントがあるのではないかと記載したが、そちらに限らず外部委託を促進できるビジネスモデルがあるのであれば関心がある。
これまで先生方や地域の方の、ボランティア精神で成り立ってきた部分も多大にある領域であり、それらがビジネスとなるのであれば巨大な市場となると考えている。
6. 最後に
偉そうに投資仮説などと書いてしまいましたが、家でパソコンと向き合って作ったものに過ぎません。日本のスポーツ界の第一線でご活躍されている方、スポーツスタートアップの方、起業を考えられている方、このドキュメントを読んでより高い解像度でご理解されている部分がある方、とぜひディスカッションさせていただきたいです。これはあくまで未完成版でここからディスカッションを重ねることでより精度の高いものに仕上げていきたいと考えています。以下リンクからのご連絡、お待ちしています。
https://youtrust.jp/recruitment_posts/35dfab5131dec8095b0ea16e7de3c0af
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ご興味を持っていただけた方は、元ツイートのリツイートをお願いいたします。また、これからもスポーツスタートアップに関する発信を続けますので、ぜひ高田のTwitterアカウントのフォローをお願いいたします!
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