認知症なの?

カーチャンは元々外が大好きで、暇さえあれば出かけてた。
俺が夜勤ばかりだった頃は俺が寝る頃に必ず出かけてたので静かに寝てられた。

ある日俺が夜勤明けで寝てたら電話が何回も鳴ってあまりにもしつこいから出てみると近所の歯医者からで、カーチャンが「予約の時間過ぎても来ないんです」と。
その時はまだ認知症とは完全に判明してなくてもしかしたら?って頃だったので平謝りしてキャンセルしてもらい、またあらためて予約させますと言って電話を切った。
当のカーチャンは普通に池袋に買い物行って帰って来た。

とりあえず事の顛末を言ってみた。カーチャン「あらどうしましょ」って困ったようなそぶりを見せてたけどたぶんその時は予約した事すら忘れてたんだろうな。

その頃あたりからトーチャンとニーチャンにはカーチャンもしかしたら、って話はした。だけどみんな信じたく無いバイアスで
「年齢によるものだろう(笑)」って感じだったような気がする。俺もそうあって欲しいって感じだったし。
だけどある日俺に「あたし馬鹿になっちゃったから銀行の管理がもう出来ない、おまえにまかすよ」と言われた。
その時はトーチャンがカーチャンに「おまえ今からそんな事でどうする、おまえがやらなきゃダメだ」と一喝して終わったんだけど、カーチャンはその時既にもう限界だったんだろうな。

認知症が進むにつれ自転車で出かけて帰りは歩いて帰って来てしまい、自転車無いけどどこ行って来たの??って聞いても思い出せなく、カーチャンが行きそうな所に自転車が無いか探しに行ったり(結局見つからず新しい自転車を買うハメに)出かけるにしても毎日同じ所に行ったり、毎日同じおかずが並ぶように。

怪しい怪しいと周りが思い始めてもとりあえず受け答えは普通に出来るし出かけてもちゃんと帰って来れるし、まだ大丈夫だろうと思っていたが、
決定打はカーチャンが近所の友人達と旅行に行った後。
そのうちの1人からトーチャン宛に電話が来て、「○◯さん(カーチャン)、もしかしたら認知症かもしれないから病院に連れて行った方がいい、早めに行けばまだなんとかなるしいい医者知ってるから」という進言があった。

トーチャンもさすがに腹が決まったらしく、病院へ連れて行く事に。だが当の本人は「バカにするな!認知症な訳ない!気分悪い、酷い!」と激怒り。
トーチャン病院連れて行くのにかなり苦労してたが、カーチャンの友人が勧めてくれた認知症外来のある病院へ心を鬼にして連れて行った。

結果はやはり認知症。

確定した時のトーチャンの落胆ぶりは、見てられなかった。カーチャンも、1番恐れていた認知症になってしまったことにショックが隠しきれずものすごい重い空気になってた。
お医者さんに「だけど今は良い薬があるし進行を止めることは出来ないけど遅くすることは出来ます」と励まされて来たらしく、
確かにそれから15年ぐらいは経ってるから進行はゆっくりだったんだと思う

認知症がわかってからとりあえず薬飲んで様子見ましょう、となり、それ以外はしばらくいつもと変わらない生活だったような気がする。
少しづつ進行してたから普段の生活も特に変わらず、今になって思えば床掃除を何回もしてたり、買い物行っても同じものを買ってきたりしてたけど、
一通りの事はまだ出来てた。
でも将来何もできなくなるまでにあまり時間は無いのでトーチャンは慌ててカーチャンと旅行に行ったりして最後の思い出を作りに行ってた。
しかし、旅行先の温泉で他人の下着を履いて部屋に戻って来たりして大変だったようだ。

つづく

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