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特殊能力の話

家族に勧められて見たアニメで、チートスキルという言葉が出てきた。
内容から察するに、本来のチート(詐欺とかいかさまとか)という意味よりは、
「最初から恵まれた要素が大きいものの、訓練や経験によって練られたスキル」という感じだろうか。

実際に、人は誰でも大なり小なりそんな特技があるように思う。
もちろん、アニメのように、どんな攻撃も0にする耐性だとか、魔術が使えるようになるわけじゃなくて

例えば、身体能力が高いとか、記憶力がいいとか、
絵を描くのが得意とか、手先が器用とか。
生まれつき人より少し得意で、他人と比べてそんなに苦労せずスキルが上がっていくようなところ。

私自身のことで今思いついたのは、「通りすがりに出会う人が濃密な世間話をしてくれる」ことだ。

高校生の頃、スーパーの隣に焼き鳥の屋台が出ていたので焼き鳥を注文し、待っている間の暇つぶしに屋台のおじさんと喋っていたことがある。

強面でイカツイおじさんだったけど、怖いもの知らずの子どもだった私は普通にくだらない話をあれこれ喋っていた。
すると、何故だかおじさんが身の上話、それも今抱えている深刻な悩みを話してきたのだ。
人生経験の浅い高校生にたいしたことが言えるわけでもなく、私はずっと黙って聞いていた。

おじさんの表情はサングラスでよくわからなかったけど、
「お前なんかにこんなに話すと思わなかった。ありがとう」と、
ボソッと感謝を告げてきたので、驚いた私は焼き鳥を抱えて逃げるように帰った。
子どもだけじゃなくて大人も悩んだり苦しんだりしてるんだということを間近に感じて、ホッとしたような怖いような、不思議な気持ちになっていた。


二十代の頃、狭い道ですれ違う時に先を譲ってくれたおばあさんと
天気のことなど話していたら、
いつの間にかその人が長年患っている病の話になり、
闘病の経験から得た自分の体との付き合い方、家族との関わりかたなどの話を聞いているうち、感極まって号泣するおばあさんに、もらい号泣したことがあった。

道端なのに。初対面なのに。ということに私が気付いたあたりで、
先方も同じように思ったのだろう、
「こんな道端で長々とごめんなさいね、不思議だけど聞いてもらえてよかったわ」「では、さようなら」と、別れはあっさりしたものだった。
でも、身近な人には話せない、一期一会だからこそ話せることってあるのかもしれないな、と、面白く感じた。

このような出来事をたくさん経験して、
今やその世間話スキル(?)は、私の仕事にも繋がっていたりする。

不器用で目立つ特技もない自分だけど、
たいしたことないような部分でも
特殊能力だと思って考えてみると、意外と人生悪くないな、という話でした。

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