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オンライン授業でお笑いを学び、あれこれ考えた話

コロナの影響で子どもが自宅でオンライン授業を受けていた時、横であれこれ考えたことをメモに書いたので、せっかくだから文章にしてみようと思う。


この日の授業のテーマは「表現」。
放送作家をしている先生が講師をする特別授業だ。

我が家は狭い間取りの家なので、
私も仕事をしながら
聞くとはなしにその様子を聞いていた。

先生は挨拶しながら生徒たちの近況を聞き、
漫画やアニメを見ているという答えが多かったのを受けて
どういうストーリーなのか、どこがどう面白かったのか、何が引っかかったのかをしっかり説明させていた。

私は、子どもが話しているのを隣で聞きながら、自分の言葉で説明するのって意外と難しいんだよなー、と思っていた。
普段は子ども同士の会話だと語彙もそんなに要らないし、何がどう引っかかったのかを一々心に留めておく必要性も、細かく人に話す場があるわけでもない。
と、そこまで考えたところで、
そうか、これが表現の入り口か、と気付いた。

この授業、何だか面白そう。

先生はどうやらお笑いの先生でもあるらしく、
漫才のキラーワード、動きの重要さ、
といった話を次々に展開し、

実際に短い漫才の動画を見せた後、
生徒達に感想を聞きつつ
面白さを解体して教えていた。

すごい、zoomって便利!
あと、よく知らないけど
お笑いの養成所ってこんな感じの授業をするのかな?
私は完全に仕事の手を止め、聞き耳を立てることに集中していた。

先生はいろんなお笑い芸人を例に挙げ、
予定調和を壊す笑いのテクニックや
正統派の面白さ、
入り方、テンポ、衣装の大切さなど
次々に興味深い話を繰り出していく。

いや、まず先生の話が面白い。
話題もそうだけど、伝え方が上手いんだろうな。

授業を盗み聞きして満足したので、
休憩がてらコーヒーを淹れていたら
ふと昔のことを思い出した。
まだ若い頃、大学時代の先輩が「職場にめちゃくちゃ面白い女の人が入って来た」という話をしてくれたことがあった。

その『面白い人』は元々お笑い芸人を目指していたが、その道をやめて先輩の職場に入って来たらしく、とにかく話のテンポが良くて相槌が天才的に上手いのだという。

私たちの時代はものすごい就職難だった。
おまけに、当時女芸人も今ほどテレビで見ることはなかった。
そんな中で、最終学歴がお笑い養成所という女性が、お堅い職場でやっていけるのかと不安視するお偉いさんもいたそうだ。
だけど、実際彼女は驚異のコミュ力ですぐに周囲と打ち解け、毎日爆笑をかっさらっているのだそう。

「芸人の道挫折したって言うけど、あの人はどんな世界に行ってもやっていけると思う。芸は身を助けるってこういうことかと思った」
と言う先輩の話を聞きながら、
じゃぁプロでお笑いやっていけてる人ってどんだけすごいんだ、と少しゾッとしつつ、その人の自己表現力の高さを羨ましく思っていた若い頃の私。


時を戻して、現在の私もやっぱり
自己表現力とかコミュニケーション能力の高さって、すごい武器だろうなとは思っている。
けど、(あの頃よりちょっと年を取った)今の私が
その『面白い人』のエピソードで1番かっこいいと思う部分は、
好きなものに、将来どうなるかもわからないものに向かって、その時一生懸命打ち込んだという経験があるところ。
そして、それが報われなくても、その経験を持って次の人生を歩める強さを持っているところ。

授業が終わってお腹がすいたと言う子どもにご飯を食べさせながら、何でも良いから好きなように生きていってね!と力強く語りかけると、わかったー、このおかずもっとある?と言われた。熱量のギャップ。痺れるわ。

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