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アトリエミストラルに共鳴板が入りました

みなさんこんにちは。群馬県高崎市にあるコンサートサロン「アトリエミストラル」のオーナー櫻井紀子です。

アトリエミストラルでは今年、小規模事業者持続化補助金の採択を受け、以下の対応を行ってきました。

①エントランスの改装

②共鳴板の作製・設置

③新型コロナウィルス感染拡大防止のための機械装置、消耗品の購入

本日は、②の共鳴板についてお話したいと思います。

共鳴板を設置しました

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全部で4台。自由に移動が可能で材質は木。

共鳴板設置の経緯

アトリエミストラルは元銀行。鉄筋コンクリートの建物自体は非常に堅牢にできており、響きも十分すぎるくらい残響がありました。しかしコンサートを重ねていくうちに、響きすぎることのデメリットもあるという思いに至り、より良い音や響きを実現したい、という思いが強くなってきました。今回の補助金の計画書を作成するにあたり、「木」の共鳴板を設置する可能性を模索、幸い、建築士さん(うちのお客様でもあった)に相談したところ、実現できそうだとわかり作製・設置を発注することになりました。

響きすぎることのデメリットとは

響かないよりは響く方がいい。確かに、演奏者が響かせようと思って力んでしまうリスクは少なくなるし、聴いている方も心地よいから。しかし、より質の良い響きとはどういうものか?、演奏者が満足する響きとは?を考えたとき、響きすぎるのも問題だと思いました。つまり音の輪郭がはっきりせず、自分の出した音がつかめない、まとわりつく音というのもやりにくいに違いない、と思うようになりました。

「木」の魅力

相談した建築士さんによると、アトリエミストラルは「金庫室の扉」や「ネイビー色のクロス」などにより「硬質な印象」があり、それに対し「プレイエルピアノ」や「オルガン」や「アンティークチェスト」が必死に抵抗しているのだとか。つまり硬質なものが勝ってしまっている。

009 トリミング

一方、この空間に木で作った共鳴板を置くことで、余分な響きが吸収され、音がクリアになる。視覚的にも「自然」で「柔らかく」、木の面積が増えることでピアノやオルガンが頑張らなくてもよくなり、印象も変わる。という貴重なご意見を伺い、何度にもわたり将来どうなりたいのか?について意見を交わし(見積をやり直し・笑)、具体的な姿が見えてきました。

設置のポイント

共鳴板設置と合わせて、会場をどう使うか?や舞台を作成するかについても考え、また固定にするか移動できる形にするか?についても、演奏家や調律師、スタッフや友人知人に相談しながら少しずつ決めていきました。

その中でポイントとなったのが「自由度を持たせたままにする」ということでした。

アトリエミストラルは長方形のホールで、真ん中に大黒柱があります。今までのコンサートや発表会では、舞台をいろいろなところに設け、時には曼陀羅のように楽器を配置し、フラットな床や広い会場を自由に使ってきました。

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これは、あらゆるタイプのリードオルガンを曼陀羅風に設置し、演奏者は楽器間を移動し、演奏する。客席もランダムに配置し、後ろからオルガンの音を聴くことも可能としたコンサート。

どちらかの面を舞台として固定し、共鳴板を壁に括り付けてしまう案もあったのですが、これまでのアトリエミストラルのやってきたことを振り返り、今後どうしたいかを考えたときに、「自由度」がある会場を目指すことにしました。舞台については、10センチほどの段差を設けて舞台とわかるようにする案もありましたが、ピアノの脚から床に伝わる響きが変化してしまう可能性があり、また床と響きの関係もまだ不明なため、今回はパス。

設置後の印象

共鳴板を設置後、あるピアノコンサートを開催しました。会場を縦に使い、共鳴板をピアノを取り囲むように配置、長方形の長辺に沿って音が流れるイメージです。

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今まで何度もコンサートに足を運んでくださったお客様も響きが変わったことに気が付かれ、口々に驚きの感想を伝えてくださいました。

調律師さんやスタッフにも好評で、「サロンというよりホールの音に近い」「会場が広く感じる」といった感想でした。

想定外の「視覚的効果」

そして全くの想定外のことが起こりました。南の窓からの陽の光が共鳴板に美しく反射しているではありませんか! そして日が傾くと、スポットライトの光が共鳴板に反射しているのです。

その視覚的な印象は、演奏した吉岡裕子さんによると「森の中でピアノを弾いているみたい」と。調律師さんは「北欧の建物を連想する」と。

私の印象は、ピアノと共鳴板が音だけでなくお互いの存在を「共鳴」しあって、まるで前からそこにあったかのような親和性を感じました。

これはとてもうれしい誤算でした。木のもたらす、人間や楽器との共鳴感を人はしっかり感じることができるのです。まさにこの場所にいなければ感じることができない「体感」そのものです。そこに音楽が加わることで、唯一無二の空間を目指していけるのでは?

後戻りできないこの感覚

共鳴板の作製を依頼したとき、世の中はコロナ禍にあり、コンサートの仕事はことごとく延期や中止に追い込まれ、将来の見通しも難しく、このまま辞めてしまうという選択もあった時期でした。どこにも光の見えない苦しい日々が、南から刺す陽の光のように一気に明るくなりました。

そして不思議なのですが、共鳴板を設置したことで、もう後戻りはできない、進むしか道はない、という「声」を聴いたような気がしました。天の声なのか、私の内なる声なのかはわかりませんが、はっきりと聞こえたのです。

今まで生きてきて何度か「大きな選択」をしました。今回の共鳴板の設置は、その数少ない大きな選択の一つに間違いなく入ると思います。

これからどうなっていくのか?どうしていくのか?を試されるようで、うれしさと同様、覚悟のようなものが芽生えたのでした。

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