ピックアップインタビュー Vol,18 斎藤輝彦さん(コントラバス)
アトリエミストラルの主催公演に出演する予定の演奏家に、お話を聴く誌上インタビューシリーズ。今まではブログや紙ベースでのご紹介でしたが、今後はnoteでもご紹介していこうと思います。
斎藤輝彦さん(コントラバス)のご紹介
来る5月1日にアトリエミストラルでコンサートを予定している斎藤輝彦さんはコントラバスソリストとして活躍中で、日本におけるフレンチボウの第一人者です。アトリエミストラルでは3回目の登場となります。
斎藤さんの演奏の印象は「歌心あふれる叙情性」と言えると思います。
低音でオーケストラを支える役目、と思われがちなコントラバスですが、ソロで聴くコントラバスは、表現力豊かでまるで「歌曲」を聴いているかのようです。
5月1日のコンサートはこちら
斎藤輝彦インタビュー
-コントラバスの魅力はどんなところでしょうか?
コントラバスの魅力はひとつには多様性です。
オーケストラ、ジャズ、ポピュラー音楽等の低音。これがないと、音楽になりません。 そして、そして高音域はチェロと同じ音域でも音が太く(弦が太いこともあり、また弦の振動の長さが短いので)肉声にとても近い楽器なのです。つまり、歌えるのです。
そして、さらに目でも楽しめます。こんなに左手を大きく動かす楽器はありません。自分で弾いていても、凄いと感じます。 もう一点、フレットがないのです。音程を取れる(但し一生かかっても完璧にはならない)のは宇宙の謎!?です。人間の能力の無限大の可能性を示していると言っても過言ではないでしょう。 ある小さなコンサートで、何故音程が取れるのか?と言う質問を受け、実は指先と指板にミクロのチップが埋め込んであり〜〜と言ったところ、半信半疑ながら信じそうになった方がいました。 もちろん、すぐ冗談だと言いましたが!
―フレンチボウについて教えてください。(特徴やジャーマンとの違いなど)
フレンチはヴァイオリン等と同じ持ち方。上手持ち、上手です。 ジャーマンは下手持ち、下手です。これは冗談ですが(笑)
弦楽器は600年位前に誕生し、その頃は全ていわゆる「下手持ち」でした。200年ほど前に殆ど全ての弦楽器は現在のような持ち方になり、コントラバスも150年位前に、イタリアでこの「新しい」持ち方に変わりました。(しかし、ドイツ等の諸国は相変わらずジャーマン弓の伝統を守り続けています)
何故新しい持ち方に変わったかと言うと、やはり優れているからにほかなりません。 特に音色が良いのが特徴です。 日本では先駆者達がドイツ、チェコ等のジャーマン弓で弾いている国に留学して帰国後広めたのが日本のコントラバスがジャーマン一色になってしまった一番の要因です。 私の場合、幼少の頃にヴァイオリンをやっていましたので、日本では未だ市民権を持たない不遇な持ち方とは知らずに、迷わずこの自然な持ち方のフレンチ弓を選んだ訳です。
―今回のプログラムの聴きどころはどんなところでしょうか?
フルートと一緒に演奏することにより、コントラバスの音色、演奏方法の違いなどがコントラバスソロの時よりもっと良くわかると思います。 また、どの楽器でもそうですが、演奏者の技量が高ければ高い程パフォーマンスの質が上がることは間違いありません。 発音のメカニズム(他の管楽器はリードがあり、金管楽器は唇が振動します。それに対してフルートは音源である振動体がない)のためか音色に個性が出にくいのですが、古川さんの音色はピカ一で、私は彼女のコンサートで演奏前のチューニングで既にその「音」に魅了されたほどです。必聴です。
―お客様へのメッセージをお願いします。
高崎でコントラバスのコンサートは珍しいと思います。ヴァイオリンやピアノのようにソロで聞かせるレベルの奏者日本全体で見ても非常に少ないのが要因です。 コロナ禍はまだ終わっていませんが、クラッシックコンサートは3年越しの研究で、お客さまが全員前を向いて、喋らずに静かに聞いている限り、万が一感染者がいて隣に座っていても、感染の確率は0.001%もないと、実証されています。実際クラッシックコンサートでの感染は報告されていません。 安心してご来場いただければと、思います。
インタビューを終えて
今回のプログラムは、斎藤さんの演奏の魅力の一つ「歌心」を感じることができる選曲となっています。コントラバスソロはもちろん、フルート、ピアノとのアンサンブルも聴きどころの一つとなるでしょう。
アトリエミストラルでは昨年秋に「共鳴板」を導入しました。以前から響きの良い空間でしたが、音がよりクリアになり、以前よりお客様にも演奏家の方にもご好評をいただいております。コントラバスの低音をこの共鳴板がどんな風に響かせてくれるのか、楽しみです。
2022年4月
聴き手:アトリエミストラル 櫻井紀子
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