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ショパンがしゃべりたかったこと~川口成彦さんのオール・ショパン

みなさんこんにちは。群馬県高崎市のコンサートサロン「アトリエミストラル」のオーナー櫻井です。

11月2日(土)に開催された「サロンに響くプレイエルの詩」川口成彦×オール・ショパンは満席に近いお客様をお迎えし大盛況のうちに終了いたしました。

フライヤー

1.プログラム

4つのマズルカ Op.30
3つの夜想曲 Op.15
ポロネーズ第4番 Op.40-2
バラード第2番 Op.38
(休憩)
ワルツ 第5番 Op.42
練習曲 Op.10-11
練習曲 Op.25-1
練習曲 Op.10-6
即興曲 第1番 Op.29
幻想ポロネーズ Op.61

前半、後半それぞれ一つの曲のようにつなげて弾き、前半には割とシリアスな曲、後半は「ショパンが好きだったサロンの雰囲気を楽しんでいただきたい」との川口さんのお言葉で、明るい雰囲気が多い後半となりました。

2.川口さんのショパンへのアプローチ

まず最初のマズルカの出だしから、その繊細でまろやかな弱音に引き込まれました。なんという表現力!!そしてダイナミクスの幅広さと有言さ、奥が深くかつ多層的で深い音楽的側面を見た気がしました。

川口さんはとても構造的に組み立てられたショパンを演奏されますが、時折、パッションが勝るときがあり(笑)それがなんとも心揺さぶられます。

とてもシンプルで、奇抜なところが全くない演奏は、まるで川口さんが透明人間のようで、実はそこでショパンが弾いているかのような、ショパンの声を私たちは聴いているのか?と思ってしまうほどでした。
ほんの小さなフレーズでも「キュン!」としてしまう瞬間があり、また「そこそんな繊細に弾いちゃう?」というところもあり、あれを聴いたらもう全員ファンになっちゃいますよね(笑)

3.「しゃべる」と「歌う」

私は今回、川口さんと直接お話するのは初めてだったのですが、「初めまして」とご挨拶のあと、短い時間でしたがお話しする中で、その気取らず率直でユーモアのあるお人柄に感銘を受けっぱなしでした。
私が最近目からうろこだった話として「古楽は歌うのではなくしゃべるように演奏する」ということを知ったという話から、話は盛り上がり(笑)実は、ショパンの作品にも「しゃべる」ように演奏するシーンと「歌う」シーンが複雑に絡み合っている、というようなことを話されていました。

私は「しゃべる」ように演奏する、という感覚を知ったのがつい最近だったのですが、それを知ることにより、古楽を含むクラシック音楽の多層性や複雑性、時代の流れや文化などにより理解が深まっていくのを実感しています。

川口さんのこの日のショパンは、やはり何か強く伝えたかったのではないか?誰かにしゃべるように音楽を作っていったのではないか?と感じました。ではそのしゃべりたい内容は一体なんだったのか?何を伝えたくて音楽を作ったのだろうか?と想像するのもまた愉しいひとときでした。

3.プレイエルの低音とロマンチシズム

アトリエミストラルのプレイエルは164センチで、鍵盤は85鍵とグランドピアノとしては非常に小さいです。しかしながら、空間の響きが良いことと、おそらくもともと「良い」個体にあたった(笑)ことと、いままで非常に好ましいピアニストに弾かれたこと、それに伴い年に5~6回の調律(メンテ)を施していることなどから、奇跡的に良い状態を保っています。

川口さんの演奏では、特に低音部の豊かな響きが印象的でした。というよりロマンチシズム溢れるメロディーをより際立たせる低音(左手)の響かせ方が素晴らしかったと思います。

4.雨とショパン

昔の歌のタイトルのようですが(笑)、当日は朝から雨。なんとなく雨だと少しだけ残念のような気持ちになりますが、川口さんのショパンは「雨の日」のための演奏のようにも聞こえました。



最後になりましたが、地方の小さなサロンのオファーを快諾していただき、当日も魅力あふれる演奏をしてくださった川口成彦さんに心からの御礼を申し上げます。また雨にもかかわらずお越しいただいた満席のお客さまにも。ありがとうございました。

追伸
アンコールでは、最近発見されたショパンの「ワルツ」を披露してくださいました。なんと「すいません。もう1回弾いてもいいですか?」と計2回弾いてくださって、お客様大喜び(笑)
川口さん個人的には、感覚的にショパンの作品だと思うとおっしゃっていましたが、さてどうなのでしょうか?

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