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オーナーの想い その3 響きの均一性について

みなさんこんにちは。群馬県高崎市にある小さいけれどきらりと光るコンサートサロン アトリエミストラルのオーナー櫻井紀子です。

さて前回はピアノをプレイエルにした理由を書きました。

3回目は、響きの均一性についてです。

公共ホールとの違い

アトリエミストラルは私設の、旧銀行を改装した小さなホール(サロン)です。音楽を聴くということでは公共の大中ホールと同じですが、運営の方法、かけられる人員、予算の規模は天と地ほど異なります。
公共ホールは設計の段階から、音響の専門家が関わります。残響はどのくらいにするか、大きく偏りがない(つまりどこで聴いてもあたりはずれのない)響きを担保することを目標に、設計されます。

方や、アトリエミストラルは旧銀行です。音響の専門家はどこにもかかわっていません(苦笑)。たまたまその堅牢な造りや天井の高さなどが作用して、いい響きだったという偶然!

音響の均一性は必要なのか?

そもそも、ホール内の均一な響きというのは必要なものなのでしょうか?それを目指すというのは、「どこで聴いても同じように聞こえるのがベスト」という価値観が見えてきます。果たしてそうなのでしょうか?

一番響きが良いとされるのがS席で、2階席の後ろや、端っこの席は安いB席と相場が決まっています。だから高い席=良い席 つまり 響きもよい、と思ってしまいますよね。

アトリエミストラルの不均一性

実はアトリエミストラルは響きは不均一です。そのうえ、響きの均一性を目指してはいません(←ここ大事)。オーナーとして「不均一さ」つまり「音の濃淡」を楽しんでいただく!という思いがあります。これは公共ホールへの負け惜しみでも、開き直りでもありません。
そもそもこの世の中に「均一」なんてものは存在しないのです。すべてが不均一であり、濃淡があります。
より音をダイレクトに感じたい人は近くにすわればよく、ピアノの指使いを勉強したければ、それが見える位置に座ればよく、まろやかな音を聴きたければ後ろの方が良いでしょう。有名演奏家の場合は、なるべくそのご尊顔を近くで見たいという人もいるでしょう。

アンドレイ・ググニン(2023年9月)

だからアトリエミストラルでは、どこでどういう音を聴くかということがお客様が決めて良いのです。どこで聴けばどういう風に聞こえるということを知りたければ、私に聞いてください。

一番いい席というのは、お客様が何を聴きたいかによって変わってくるのです。

人々はなぜコンサートに行くのか?

を考えた場合、ピアノであれば演奏者の「指の動き」や「体の使い方」「ペダルの踏み方」などを勉強したい人もいるでしょう。また、オーケストラなどでは、なるべく後ろの席で「全体」の響きを楽しみたいという人、「指揮者を近くで見たい」という人、お気に入りの奏者の近くにいたいという人も様々なはず。

座る位置で損か得か、と一喜一憂するのではなく、自分が何を聴きたいのか(見たいのか)で決めれば良いことです。

空間だけでなく楽器も不均一?

そういえば、アトリエミストラルのピアノ(1905年製プレイエル)も均一なモダンピアノに比べると、だいぶ不均一です(苦笑) 低音域、中音域、高音域では異なる響き方をしますし、弾き手によっても全然違います。

ピアニストの中には、「あえて」濃淡をつけるため、ピアノを斜めに置いたりします(調律師も賛成してました・笑)。別の言い方をすれば、施設のホール(サロン)だからこそできることだと思います。

調律風景

日本に多い?均一性主義

いろいろなご意見を伺うたびに、「均一性第一主義」のようなものを無意識に受け入れてしまっているなぁと思うんです。ホールや楽器だけでなく、人と同じであれば安心する、とか、少し変わっている人を排除するとか。

これが日本の特徴ならば、もしかしたら均一性第一主義が培われたのって、日本の教育なのかもしれません。

音楽は芸術です。芸術は個性的であるべきで、均一性を求めるならば、CDでも聴いてりゃいい話です(笑) 他と違うから面白いと心から思えれば本当に楽しめると思います。

そんな想いでコンサートを

という思いも実は含んで、私はコンサートを企画しています。
プレイエルの個性的で不均一な音を楽しみたい人はぜひお越しください(笑)

9/8 小田裕之さんによるベートーヴェン&ショパン


11/2 川口成彦さんによるオール・ショパン

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