映画『彼女がその名を知らない鳥たち』 愛の終着地は己
すごく面白い。
けど、あまり好みじゃない。
THEイヤミス!
◆あらすじ◆
下品で貧相、金も地位もない15歳上の男・陣治と暮らす十和子は、8年前に別れた黒崎のことを忘れられずにいた。
陣治に激しい嫌悪の念を抱きながらも、陣治の稼ぎのみで働きもせずに毎日を送っていた十和子は、黒崎に似た面影を持つ妻子ある水島と関係を持つ。
ある日、十和子は家に訪ねてきた刑事から、黒崎が行方不明であることを告げられる。「十和子が幸せならそれでいい」と、日に何度も十和子に電話をかけ、さらには彼女を尾行するなど、異様なまでの執着を見せる陣治。
黒崎の失踪に陣治が関係しているのではないかとの疑いを持った十和子は、その危険が水島にまでおよぶのではとないかと戦慄する。(引用 映画.com)
◆◆◆◆◆
これはビックリする程、正しい愛が描かれない映画でしたね〜。
そもそも何が正しい愛なのかっていうのもよく解りませんが。
観ていて、主要登場人物全員が自己愛しかないように感じられました。
わかりやすく自己愛の人もいれば、純愛に見えるような自己愛もあり、観ていてずっとイライラしてしまう物語。
ほんと全員自分の事ばかり。
さすが「共感度0%」と謳っているだけあります。
人を想うように見えても、それは自己満足でしかなくて、本当にその人の為になるような無償の愛ってのは1つもない。
一見、十和子(蒼井優)に向けた愛にも見える姉の言動や行動も、自分ら夫婦の問題を2人に重ね合わせた上で出てくる苛立ちをぶつけている行為。
簡単に言うとストレス発散にも見える。
そこに愛はあったのかな。
そして主演の2人、大きなネタバレになっちゃいそうだけど、陣治(阿部サダヲ)も十和子も結局は、犠牲を払い、最終的に永遠を手に入れるという意味では、見え方は違えど同じ事をしているんじゃないかな。
それも突き詰めると自分の為。
永遠。
陣治の最後の決断は愛というより呪縛に近い気がしました。
十和子を真っ当な道に正すようにも見えて、自由を奪ってしまう行為でもある。
十和子の下にいるようでいて、ずーっと上から見ていた陣治。
劇中何度も繰り返される「十和子の為なら何でもできる」ってセリフも後から考えるとゾッとしますね。
もう自己中心的過ぎて、もはや愛はどこに向いてるのか。
十和子を助ける俺最強。な感じ。
っていうような感じで、書き始めたらいくらでも書けそうなくらい散りばめられた自己愛たち。
ずっとモヤモヤ、イライラしながら観てました。
しかしながら、こんな絶妙な愛の形をみせる映画はなかなか新鮮で、すごく面白かったです。
細かいキャラの見せ方も良いし、分かりにくくなりそうなストーリー構成もちゃんと分かりやすくて良かったです。
個人的に1番好きなところは、
「あぁ、タコパンテーか…」
ですかね。笑
ちょくちょく笑いもあったのでモヤモヤしながらも見心地はよかったです。
愛の形は色々ありますが、僕がこの映画を見て感じたのは全て、
人に向けた愛に見せかけた自己愛。
自己愛ももちろん大切だけど、バランスを間違えないように気をつけないとなと思わされた映画でした。
こんだけ長ったらしく自己愛とか書いてきましたが、きっとこれを観て純愛だと感じる人もいるんじゃないかと思います。
それぞれが思う愛の形があるし、人生経験によっても感じ方は違うんじゃないかな。
なかなか人と語りがいのある良い映画だなぁと思いました。
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