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もちょのもり

もちょは もりでくらしています
もりにくるまえは
うみのそばで くらしていました

もちょ とか
もちょたろ とか
もっちゃん とか
さんしゅるいくらい なまえがあります
でも ほんとうのなまえは もちょです

うみのそばで ひとりでくらしていたころ
りょうしのおじさんの きげんがよいときは
おさかなを わけてもらいました
ですから もちょは おさかながだいこうぶつです

あるひ もちょは おさかなをはこぶ
トラックのうんてんしゅのおじさんと 
ともだちになりました

トラックのじょしゅせきに おぎょうぎよくすわったら
トラックのうんてんしゅのおじさんが
シートベルトをしてくれます

そしてふたりで たびにでました

おなかがすいたら ふたりで おさかなをたべました
うみをみたり かわをみたり やまをみたり
たまに ふたりで うたをうたったり
そして おさかなをたべて たびをしました

ふたりは じゆうでした

しばらくして ふたりは おさかなを たべつくしてしまいました
トラックのうんてんしゅのおじさんは
おさかなはおいしいけれど もっとうつくしいものをはこぶことが ゆめでしたので 
ちょうどよいとおもいました

もちょは だいこうぶつのおさかなが なくなってしまって
かなしいきもちになりました

もりのまえをとおったとき
もちょは トラックをおりることにしました

「バイバイ たのしかったね」
「バイバイ げんきでね」
といって トラックのうんてんしゅのおじさんと もちょは
わかれました

もちょは また ひとりになりました

もちょは ほんとうは とてもおくびょうなせいかくです
はじめてのもりは おばけがでてきそうなふんいきがします
もちょは おちばのしたにかくれて 
しばらく じっとしていました

みみをすましていると とりさんの うつくしいうたごえが きこえてきました
そうすると かぜでザワザワしていた すこしぶきみなはっぱのおとも 
すてきなおんがくのように きこえました

もちょは ひとばんじゅうじっとしていました
あさになると きらきらと
おひさまのひかりが もりじゅうにふりそそぎ
さわやかなくうきで もりをつつみました

おなかがすいたなあ ぎゅるぎゅるー
めのまえをとおった けむしさんが ぎょっとして ふりかえりました
「おどろかせないでよ」
「まったく びっくりして しんぞうがとまるかとおもったよ」
けむしさんはいいました
「ごめんなさい」
もちょはあやまって おちばの下からでてきました
「おなかがすいているの?」
「うん」

 けむしさんは きのみを わけてくれました
「ありがとう」
もちょは おれいをいって ガリっと きのみをたべました
かたいし おさかなとぜんぜんちがうけど
こうばしくて きのみも あんがいおいしいな、と おもいました

そして もりには たくさんのなかまがいることも しりました
ありさん みみずさん けむしさん ちょうちょさん はちさん
もぐらさん ねずみさん とりさん 
ねこは もちょだけでしたけど 
きせつによって あたらしい ともだちができたり あたらしいことを しることは 
とても たのしいことでした

あるひ なかよしの もぐらさんから
「しょうがっこう」のはなしを ききました
もぐらさんは いつも ちかのトンネルをつかって
もりと もりのとなりの 「しょうがっこう」を 
いったりきたりしています
「しょうがっこう」には たくさんの にんげんのこどもがいて
ひろいにわで たのしそうに あそんでいるそうです

もちょは おさかなを わけてくれた りょうしのおじさんと 
いっしょに たびをした トラックのうんてんしゅの おじさんのことを
おもいだしました
おとなの にんげんの おともだちは いましたが
こどもの おともだちは いません

もぐらさんは いいました
「みんな とてもたのしそうなんだけど、 
いつも ひとりぼっちの おんなのこがいるんだよ
ちょっぴり さみしそうな かおをしているんだ」

むぐらさんの はなしを きいてから
もちょは ひとりぼっちの にんげんの おんなのこのことが
きになってしまいました
はじめて もりに きたとき
もちょは ひとりぼっちで とても さみしかったので
おんなのこの きもちが よくわかるのです

「ぼく ひとりぼっちの おんなのこと おともだちになりたいんだ」
もちょは もぐらさんに いいました
「わかった! ぼくに まかせて!」
もぐらさんは すぐに ちかのトンネルに もぐって
おんなのこの ところへいきました

つぎのつぎのつぎのひ
おんなのこは もりの もちょに あいにきました
あたまに リボンをつけた しずかな おんなのこでした
「はじめまして もちょです」
と、れいぎただしく じこしょうかいを しましたら
「はじめまして」
と、ちいさなこえで はずかしそうに おんなのこが あいさつをしました

それから おんなのこは まいにち
もりの もちょに あいにきました

クリスマスがちかづいてきました
ゆきがふりそうな とてもさむい あるふゆのひ
「うちにおいでよ」
と、おんなのこが いいました
もちょは とても さむがりでしたので たいへん よろこびました

おんなのこの おうちは あたたかくて
おひさまの においがする ふかふかの おふとんがあって
だいこうぶつの おさかなも ごちそうしてくれて
おんなのこの かぞくもいて
なんと ちいさな おんなのこの ねこさんもいて
もちょは しあわせな きもちになりました

もりの なかまたちと おわかれをするのは さみしいけれど
もちょは おんなのこの かぞくに なりました

クリスマスイブです
もちょは はじめてできた かぞくと
おいしい ごちそうを たべて
おんなのこと ちいさな おんなのこのねこさんと 
さんにんで ふかふかの おふとんで ねました

ふと まどのそとを みると
となかいさんと あかいおようふくをきた しろいひげの おじいさんが
ゆかいに そらを かけぬけているような きがしました

おしまい







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