19-1 押出成形不良の現象と対策(前編)
成形の進化と押出成形の不良現象
成形技術はその優れた生産性から今後ますます増加する傾向にあります。しかし、押出成形中にはさまざまな不良現象が発生し、これらの問題に迅速に対処し、連続性を保つ必要があります。押出成形の実際では、スクリューの構造、ダイの構造、樹脂の性質、成形温度、圧力、速度、冷却、引取など、様々な条件が製品の品質に大きな影響を与えます。
不良問題の判定と対策
不良問題を解決するためには、それぞれの樹脂における代表的な項目に焦点を当て、適切な判定と対策を講じる必要があります。以下では、主要な樹脂における不良問題について概説します。
スクリューの構造とダイの構造
スクリューとダイの適切な構造設計が重要です。不良が発生した場合、これらの部分を検証し、必要に応じて修正が必要です。
樹脂の性質
使用する樹脂の性質は製品の品質に直接影響します。樹脂の特性を理解し、最適な条件で処理することが必要です。
成形温度、圧力、速度、冷却、引取などの条件
これらの条件は製品の最終品質に影響を与えます。適切な設定とコントロールが必要です。
以上のポイントに留意しながら、不良の判定と対策を行うことで、高品質な成形製品を実現できます。
スパイダーマーク(Spider Mark)
スパイダーは、蜘蛛(くも)を指し、押出成形の文脈では、ダイのマンドレル(金型内部の支持構造)を固定して支持する部品を指します。この部品はパイプやチューブ状フィルムなどのダイに設置され、その形状が蜘蛛に似ていることから「スパイダー」と呼ばれています。スパイダーは、押出成形の際に溶融した成形材料(プラスチック原料)が通過する際に使用されます。
スパイダーマークとは、成形材料がスパイダーを内蔵するダイの内部を通過する際に、その形状の跡が製品に縞状に残る現象を指します。主にインフレーションフィルムやパイプの押出しプロセスにおいて問題になります。
このスパイダーマークの解決策としては、以下の方法があります
1. ダイランドを十分に長く取る方法: ダイランドを適切に設定し、スパイダーの影響を最小限に抑える。
2. マンドレルの一部を含ませる方法: マンドレルの一部をスパイダー内に配置することで、スパイダーマークを防ぐ。
3. プールを作る方法: スパイダーの周囲にプールを形成し、余分な材料を収容する。これによりマークの発生を軽減する。
4. チョーカーリングの取り付け: チョーカーリングをスパイダーに取り付けることで、マテリアルの流れをコントロールし、マークの形成を防ぐ。
これらの対策は、特定の製造プロセスや条件に合わせて適切に選択されるべきです。
フィッシュ・アイ(Fisheye)
フィッシュアイは、フィルムやシート状の製品の一部に生じる小さな球状の突起を指し、その透明性が魚の眼のような特徴を持っていることからこの名前がついています。
フィッシュアイは、PVCだけでなく、ポリエチレンやポリプロピレンなどでも発生する現象であり、その発生原因については様々な説明がなされています。例えば、PVCのフィッシュ・アイの生成原因として以下の点が考えられます:
1. ゴミや繊維屑などの混入: ゴミが核となり、結晶化を引き起こす可能性がある。
2. 異なった高重合度のPVCが混入
3. 細粒PVCと粗粒PVCとの混入
4. 可塑化PVCと生のPVCとの混合
5. 可塑剤の吸収が難しい、緻密な樹脂の混入
6. 混練りの不均一と不充分
7. 押出成形機のアダプター部の温度が低すぎて、局部的に固化した材料が剥げ落ちる
8. 押出成形時の内圧不足 - スクリューの構造が悪い
これらの原因に対する対策が必要です。
偽フィッシュ・アイ、カラス、オイルマーク
偽フィッシュ・アイ、カラス、オイルマークなどの外観不良の原因は、樹脂配合剤、加工方式、加工操作によって異なり、一概に論ずることはできませんが、T-ダイなどでフィルムやシートを成形する際、空気の巻き込み、配合物中の水分、揮発分が最も大きな原因となっています。
偽フィッシュ・アイ
フィルムやシートの中に空気や揮発分が細かく分散し、ちょうどフィッシュ・アイ状に見えるもので、本質的なフィッシュ・アイではありません。
カラス
T-ダイ押出やカレンダーでフィルムやシートを作る場合、引張応力がかかるため、一般に延長伸方向に伸び、烏のくちばし状に先端がとがった形状や、ロール方向に直角に伸びた楕円形の形が発生することがあります。
オイルマーク
配合物中の油性の物質が高温で揮発し、冷却ロールに付着し、これがフィルムやシートに転写され、表面に目に見えない小さな斑点を生じる現象をオイルマークと呼びます。オイルマークは透明で汚点が見えない場合もありますが、印刷や接着時に油性の影響がでて、インクや接着剤の付着が悪くなりやすく、クレームの原因となります。これらの点を考慮して対策を立てる必要があります。
ブロッキング (Blocking)
プラスチックフィルムまたはシート同士が重ね合わさり、長時間接触していると、互いに付着し、簡単にはがれにくくなる現象をブロッキングと呼びます。これは自動高速包装などで大きな障害となります。
ブロッキングが起こる機構については、一般に低いメルティングポイント(m.p)を持つ表面層の存在が原因であるとされています。そのため、できるだけ高温の加工を避けることとともに、加工時の冷却不足も大きな要因となります。
メルトフラクチャー (Melt Fracture)
押出成形において、押出速度を著しく大きくした場合に、成形品の表面に不規則な凹凸や竹の節状、きれいなスパイラル状の流出物が生じる現象をメルトフラクチャーと呼びます。これはダイオリフィスへの流入口で、溶融体の流動状態が乱れることなどにより、流速が不規則になったり、ポリマーの部分的な構造破壊によって引き起こされると考えられています。
メルトフラクチャーの解決策として、ダイ入口は直角を避け、テーパーを付けるか、末広がり部分をもつダイ構造とすることが挙げられます。死角が多い流路はこの現象を引き起こしやすくなるため、これらの対策が重要です。