8-1 インフレーションフィルムの押出成形
インフレーション用ダイ
インフレーションダイの種類
スパイダー型
スパイダー型のインフレーションダイは、スパイダー状のトーピードが特徴で、主にPVC(ポリ塩化ビニル)やポリオフィレン樹脂などの用途で広く使われています。
スパイラル型
スパイラル型のダイにはトーピードがなく、代わりに外周にスパイラル溝が切ってあります。主にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)などのポリオレフィン樹脂のフィルム押出に使用されます。PVCには向いていませんが、ポリオレフィン樹脂には利点があり、アメリカからの技術導入以来、スパイラル型が一般的になっています。
オッシレーターと多層ダイ
500~1,000mの長尺ボビンに巻き取る際、インフレーションフィルムの偏肉差が1か所に集中し、ラクダのコブ状になることがよくあります。これを防ぐためには、ダイ自体を回転させてフィルムの偏肉差を均等に散らばらせるダイ・オッシレートと呼ばれる生産方式があります。
注意: ダイの樹脂圧がかかる部分を滑らせるため、フロロカーボン樹脂または二硫化モリブデンを含浸させた砲金製のメカニカルシールを使用し、樹脂材料の漏れを防ぐ必要があります。
インフレーション用ダイの構造は、一般的にはダイ内接着法が多く用いられます。2台の押出機からの樹脂が3層ダイに入り、出口近くで3層が合流・接着してダイ外にチューブとして押し出されます。この形式を2種3層ダイと呼びます。
インフレーション押出の実際
インフレーション押出は、一定の直径と厚みを持ったプラスチックチューブを上方または下方に押し出し、扁平状に押しつぶして巻き取る方法です。この方法は、「Tubular Film」法または「Blown film」法とも呼ばれます。
引き取り方法
上方式: アメリカで発達し、日本でも普及しています。
下方式: ヨーロッパで主流であり、水冷式急冷フィルムには特に有用です。
水平式: ドイツの研究所で使われることがあります。
チューブの特性
直径はダイの下部から送り込まれる空気量により、厚みは引き取りロールの速度によって決まります。
チューブは内部空気圧で横方向に延伸し、引き取りロールで縦方向に延伸されます。
フィルムの縦横両方向のバランスを取るには、約3.5倍の膨張率が必要です。
インフレーション装置の構成
冷却リング
安定板または安定コロ
引取ロール
巻取装置
送風機
付帯設備
自動表面処理装置
静電除去装置
折径自動制御装置
厚み自動制御装置
冷凍機を利用した強制冷却装置
オレフィンの結晶化を防ぐ水冷装置
バキュームチャンバー法
ダイ上部にバキュームチャンバーを設け、エアーリングのスリットからチューブの側面に平行に空気を送ることで、チューブの直径を安定にします。
冷却速度が増すという特徴があります。
マンドレル冷却法
厚手の袋の製造において使用され、内面接触冷却または外表面接触冷却を行います。
冷却機から供給される冷媒により内部を冷却する場合もあります。
水膜リング法によるPP(ポリプロピレン)透明フィルムの製造
PP(ポリプロピレン)の結晶性高分子物において、透明度の高いフィルムを製造するためには水膜リング法が利用されます。この方法では、急冷効果を水で得ることができます。
製造方法
下方押出型を使用し、チューブの外面に水を垂れ流して水膜を形成します。
水膜による急冷効果により、PPフィルムの透明性が向上します。
特に透明性が優れ、かつ偏肉が極めて少ないフィルムを高速で製造することが可能です。
特徴
急冷効果により、透明性が向上する。
高速での製造が可能。
偏肉が極めて少ないフィルムが得られる。
注意点
冷却効果を最大限に引き出すために、水流や冷却条件の適切な調整が必要です。
厚み計測と偏肉の自動制御
インフレーション押出の全自動化を実現するために、チューブの厚み計測と偏肉の自動制御が利用されます。
チューブの厚み計測
ロータリー式赤外線厚み計測器を使用し、チューブの厚みを計測します。
赤外線投光器と受光器を使用して、バブル内部の中心から外周まで幅広く検出可能。
偏肉の自動制御
ターンテーブル方式やダイ回転方式では不十分だった偏肉の分散を達成する新しい制御システムが存在。
Pizzoelectric Trans lator法<REI-COFLEX>自動チューブラダイがその一例。
トランスレータボルトが回転式静電容量厚み計測器からの情報に基づいてダイの形状を調整し、均一な厚みのフィルムを生成。
この制御により、従来の厚み変動率±12~14%から±4.5~7.5%に向上。