4-1 押出成形機の加熱冷却と駆動機構


シリンダ(バレル)の加熱と冷却の方法

押出成形において、シリンダ(バレル)の適切な温度制御は成形の品質に直結するため、様々な加熱と冷却の方法が利用されています。

電気抵抗加熱通風冷却方式

この方式は、構造がシンプルで取り扱いが便利なため、一般的に広く使用されています。主な特徴は以下の通りです。

  • ヒーターの利用: 鋳込みヒーターやバンドヒーターが使われますが、バンドヒーターは寿命が短い傾向があります。

  • 冷却: シリンダ(バレル)の冷却にはアルミニウムブロックヒーターを外周に配置し、プロワーによって強制空冷する方法が一般的です。

  • 自動温度調節: 温度制御は自動温度調節計によって行われ、シリンダ(バレル)の冷却風量も自動的に調整されます。

油加熱方式

油加熱方式は、加熱された油をポンプでシリンダ(バレル)の周りに循環させる方法です。主な特徴は以下の通りです。

  • 熱伝導性: 高い熱伝導性を持ち、均一な温度制御が可能です。

  • 熱交換器: 別の熱交換器を用いて加熱や冷却が容易です。

  • 内部発熱: 内部発熱の大きい場合にも冷却効果が大きい。

  • 注意点: 油の炭化や油漏れなどの問題があるため、定期的な整備が必要です。

これらの方式はそれぞれメリットとデメリットがあり、使用する樹脂や製品の仕様によって最適な方法を選定することが重要です。

温度の測定と制御

シリンダ(バレル)の温度管理は、押出成形の品質を確保する上で重要です。温度の測定と制御には手動制御方式と自動制御方式があります。

手動制御方式

手動制御方式では、水銀棒状温度計や電気式温度計を使用して温度を測定し、次いでスライダックスで電圧を調整するか、スイッチで入電時間を調整して温度を制御します。ただし、この方式は最近ではほとんど使用されていません。

自動温度制御方式

自動温度制御方式には、オンオフ制御方式と比例制御方式の2つがあります。

オンオフ制御方式

  • 特徴: 初期の自動制御方式であり、感度の高い温度計が必要です。

  • 動作: 設定温度と測定温度の差に応じてヒーターに電力をオンまたはオフで供給して温度制御します。

比例制御方式

  • 特徴: オンオフ制御方式よりも正確な制御が可能です。

  • 動作: 設定温度と測定温度の差に比例した電力量をヒーターに供給して温度制御します。

  • 一般的な設定: シリンダ(バレル)温度は、ホッパ部では材料が軟化しすぎないよう低く、先端に向かって温度を徐々に高く設定することが一般的です。

これらの方式は、押出成形プロセスの要求事項や使用する樹脂によって選択され、自動制御方式の中でも比例制御方式が一般的に採用されています。

軸受(ベアリング)部および潤滑油給油装置

スクリューの先端にかかる圧力は、軸受(ベアリング)に直接作用し、そのため軸受はスクリューを支える重要な部分です。主な構造と潤滑油給油装置について以下に述べます。

軸受構造

軸受部では、スクリューの軸に垂直な力と平行な力(カップリング)を支えるため、通常は2つのラジアル軸受で軸を支え、その中間にスラスト軸受を設置する方式が主流です。

  • 耐用時間と先端圧の関係
    軸受の耐用時間は、押出機の先端圧の3乗に反比例します。先端圧が増加すると、ベアリングの寿命は急激に減少します。

  • 耐用時間と回転数の関係
    軸受の耐用時間は回転数にも反比例します。回転数が増えれば、ベアリングの寿命も短くなります。

潤滑油給油装置

スラスト軸受部における潤滑は特に重要であり、通常は回転ポンプによる強制循環方式が採用されます。

  • 潤滑方式
    低速度のギヤボックスでは、軸受はグリース充填、歯車は油浴方式が一般的です。しかし、スラスト軸受にはグリース充填が難しいため、油浴方式または強制給油方式が選ばれます。

  • 強制循環方式
    スラスト軸受部では強制循環方式が一般的で、回転ポンプによって油を循環させます。これにより、軸受への均等な潤滑が確保されます。

注意事項

  • 油浴方式や強制給油方式の場合、汚れた油を使用しないように注意が必要です。

  • フィルターの掃除と油の定期的な交換が軸受の保護に重要です。

電動機による駆動と変速

押出成形において、スクリューの回転数を広範囲に調整する必要があります。回転数の調整には、無段変速範囲と高荷重下での速度の安定性が重要です。以下に、スクリュー駆動装置として使用される方法について述べます。

速度調整方法

1. 機械的ギヤボックス

機械的ギヤボックスは、主に小型押出機で使用されますが、最近ではほとんど使用されていません。この方法は、機械的なギヤによって回転数を変える方式です。

2. 無段変速モータ

無段変速モータは、無段変速範囲と高い速度の安定性を提供します。以下のモータータイプが使用されています。

  • 3相整流子モータ(ASモータ)

  • 直流分捲モータ(DCモータ)

  • 渦電流継手モータ(VSモータ)

  • インバータ付き誘導電動機(IVモータ)

  • ACサーボモータ

選定の考慮事項

  • 無段変速範囲: 広範囲で回転数を調整できることが重要です。

  • 速度の安定性: 特に高い荷重下での速度の安定性が求められます。

  • コストと精度: 使用用途や製品に応じて、コスト、精度、サイズなどを適切に考慮して選定する必要があります。

  • 最近の傾向: 最新の技術として、高精度で効率的なインバータ付き誘導電動機やACサーボモータが広く使用されています。

これらの要素を考慮して、特定の押出機に最適なスクリュー駆動装置を選定することが重要です。

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