6-1 ダイ


ダイ設計の基本事項

押出成形用のダイは、シリンダ(バレル)内で混練された樹脂を成形し、所定の形状を作り出す役割を果たします。以下は、ダイ設計における基本事項です。

  1. 成形品の形状に対するダイの設計:

    • 四角い成形品を作りたい場合、四隅よりも中央のほうが樹脂の流れる量が多くなることを考慮する。

    • 異形のダイでは、製品形状に応じてダイの形状を調整する。

  2. 基本方程式の利用:

    • 押出成形においても基本的な方程式が存在するが、製品形状の複雑性、材質の多品種化、生産性向上の要求から、これらの方程式を応用した複雑なダイの形状設計が求められている。

  3. 樹脂の流れに対する配慮:

    • ダイ内での樹脂の流れ方向や流れる量に着目し、製品形状に適したダイの形状を設計する。

    • 樹脂の特性や成形条件に基づいて、均一な流れと成形を促進する。

  4. 製品形状の複雑化への対応:

    • 製品形状が複雑化する中、ダイ設計もそれに対応する必要がある。

    • 複雑な形状や内部構造を持つ製品の場合、それに適したダイの構造を工夫して設計する。

  5. 材質の多品種化への適応:

    • 押出成形に使用される材料が多品種化する中、異なる材料に対応できるダイの設計を行う。

    • 材質ごとの特性や挙動を考慮し、適切なダイの仕様を設計する。

  6. 生産性向上への取り組み:

    • 生産性向上を図るために、ダイ設計においても高効率かつ高品質な成形を実現できるような工夫が必要。

    • 自動化や効率的な冷却など、生産性向上に寄与する要素をダイ設計に組み込む。

これらの基本事項を踏まえ、製品形状や要件に合わせてダイを設計することが押出成形プロセスの効率的かつ正確な実現につながります。

ストレートダイ

ストレートダイは、パイプダイ、異形ダイ、サーキュラーダイなどといった基本的なダイの一つで、主にパイプやチューブの押出成形に使用されます。

特徴

  1. 構造

    • ダイ内には前方が円筒状、後方が円錐状の形をしたマンドレルが配置されている。

    • マンドレルは中心部に位置し、スパイダーによって固定されている。

  2. 調整可能なダイリップ

    • ダイリップは調節ネジによって動かすことができ、マンドレル先端との位置関係を調整可能。

    • ダイリップの位置調整により、成形されるパイプやチューブのサイズを調節できる。

  3. マンドレルとダイリップの交換可能性

    • マンドレル先端とダイリップは取り替え可能であり、異なるサイズのパイプやチューブを同一のダイで押し出すことができる。

問題点

  1. スパイダーマークの発生

    • ストレートダイの特有の問題点として、スパイダーマークの発生が挙げられる。

    • 樹脂がスパイダーの足部分を通過する際、一度分離した樹脂が再び結合することで、スパイダーマーク(筋やヘコミ)が生じることがある。

ストレートダイは基本的な構造を持ちながらも、樹脂の流れに関連する調整や問題への対処が必要となります。スパイダーマークの発生を最小限に抑えつつ、効率的な押出成形を実現するためには、ダイ設計において細かな工夫が求められます。

クロスヘッドダイ

クロスヘッドダイは、シリンダ(バレル)から押し出された材料を、押出機の方向に対して一定の角度をつけて流れを方向転換させてから押し出すダイの一種です。

特徴

  1. 流れの方向転換

    • シリンダ(バレル)からの材料流れが、一定の角度を持たせられて方向転換される。

    • この角度を変えることで、成形品の形状や樹脂の流れに影響を与えることが可能。

問題点

  1. 流動の不均一性

    • クロスヘッドダイの問題点として、流れる方向が曲がることにより、カーブのインコースとアウトコースで距離に違いが生じる。

    • これにより、樹脂量のバラつきが発生し、成形品の品質に影響を与える可能性がある。

  2. バラつきの是正

    • 不均一な流れを是正するために、ダイ内にマニホールドを設けたり、途中に絞りを設けたりする。

    • これにより、樹脂の流れを均一化し、品質の向上を図る。

クロスヘッドダイは、方向転換させることで特定の形状を得ることができますが、その際に生じる不均一な流れに対処する工夫が必要です。ダイの設計や流体力学的なアプローチが求められます。

フラットダイ

フラットダイは、一般的にシートの成形に使用され、材料の種類や厚みによって複数の形式が存在します。主なフラットダイの種類には、フィッシュテールダイ、マニホールドダイ、コートハンガーダイ、スクリューダイがあります。

主なフラットダイの種類

  1. フィッシュテールダイ

    • シートの成形において使用される。

    • 材料の流れを制御して均一な成形を実現する。

  2. マニホールドダイ

    • 材料の流入口を中心に扇形に広げ、端部へ行くにつれて扁平にされる構造。

    • 樹脂の滞留時間を短くし、均一な成形を図る。

  3. コートハンガーダイ

    • マニホールドダイに似た構造で、樹脂溝があり、材料の流入口を中心に広がる形状。

    • 熱安定性の悪い樹脂のシート成形に適しており、滞留時間を短縮する特長がある。

  4. スクリューダイ

    • 特定の形状を得るためのダイ。

    • スクリューの動きによって樹脂を押し出し、成形を行う。

特長

  • 滞留時間の短縮

    • マニホールドダイやコートハンガーダイは樹脂の滞留時間を短くするため、熱安定性の悪い樹脂に適している。

  • 均一な成形

    • フィッシュテールダイやマニホールドダイは、材料の流れを制御して均一な成形を実現する。

フラットダイはシート成形において重要な役割を果たし、材料の特性に合わせて適切なダイが選択されます。

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