9-1 シート押出装置


一般的に、フィルムとシートの違いは曖昧であり、文献によっても異なる厚みを基準に定義されています。通常、0.25mmを境に、それ以上を「シート」、それ以下を「フィルム」と区別することが一般的です。

T-ダイ法を使用すると、おおよそ0.02mm~0.25mmのフィルムから0.5mm~10mmの範囲のシートを生産することが可能です。しかし、これらの厚みの違いは、ダイと引取機において大きな機構上の違いをもたらします。

T-ダイ押出とその方法

T-ダイ押出法は、以下の方法に分類されます。

水槽法(フィルム)

水槽法は、T-ダイから押出されたフィルムを水槽中で急冷する方法で、高密度ポリエチレンやポリプロピレンなど結晶化しやすい樹脂の透明フィルムの製造に利用されます。

キャスティング法(フィルム)

キャスティング法は、T-ダイから押出されたフィルムをロール上で急冷する方法で、水槽法と併用され、フィルムの冷却効果を向上させ、延伸距離を短縮するために、ダイ先端とロール面までの距離をできるだけ近づけることが重要です。

T-ダイシート押出法(シート)

T-ダイシート押出法は、押出機、スクリーンチェンジャー、T-ダイ、ポリッシングロール(冷却艶出ロール)、トリミングロール、引取機、切断機、堆積装置などで構成され、厚さ0.25mmから20mほどまでのシートが生産されます。この装置は主にポリスチレン、ポリエチレンなどのシート製造に使用されますが、近年は硬質塩ビ板やABS板なども、伝統的なプレス工程から押出機による製造に移行しています。

T-ダイの製造(マニホールドタイプとコートハンガータイプ)

フィルムやシートの押し出しには、一般的にT-ダイが利用されます。ただし、使用する材料の種類や厚みに応じて、異なる構造のダイが使用されます。主なダイのタイプとしては、マニホールドダイとコートハンガーダイがあります。

マニホールドダイ

マニホールドダイには、樹脂の流れを調整するためのマニホールドがあり、これにチョークバーを組み合わせて全体の樹脂の流れを調節し、最終的にはダイの出口(リップ)で全体の厚みを定める構造があります。

コートハンガーダイ

コートハンガーダイは、例えば硬質塩化ビニル用の900mmのダイの設計例が図2-25に示されています。このタイプでは、調節バーが自由に調整され、流れはこのバーによって修正されます。さらに、ダイリップの前には小さな圧力マニホールドが配置され、ダイリップ前の圧力を均等に保つ工夫がなされています。

T-ダイシートの押出条件

シートはフィルムに比べて押出断面積が大きいため、樹脂温度を均一に維持することが重要です。これには以下の条件が求められます。

  • 均一な樹脂温度維持: シリンダ(バレル)内での樹脂の摩擦熱やシリンダの熱エナジーによる余分な上昇熱を取り除くために、シリンダに水冷ジャケットや送風機を取り付けて冷却を行います。

  • 押出温度条件: 適切な押出温度条件を設定します。

  • 冷却ロールの温度: 冷却ロールの温度も適切に管理します。

T-ダイの多層化技術

T-ダイにおける多層化技術では、複数の押出機から供給された異なる溶融物がダイリップから押出される前に接合され、多層シートやフィルムとして成形されます。このダイ内接着法には、主に以下の二つの方法があります。

フィードブロック法

フィードブロック法は、通常のフラットダイと押出機のアダプターの間にフィードブロックを設ける方法です。このフィードブロックで各押出機からの溶融物の流れが適切な順序や割合で積層され、一つの溶融物として通常のフラットダイに送り込まれます。ダイ内で溶融物の流れは全幅に分配され、ダイリップから多層シートとして押出されます。

多数マニホールド法

多数マニホールド法では、各溶融物が個別のマニホールドに送り込まれ、ダイ全幅に広げられ、ダイリップ直前でこれらが接合されて一つのシートやフィルムとして押出されます。この方法では各層の厚さを正確に調整できる利点があり、ブロック法よりも広い範囲の材料を成形できます。

T-ダイシートの厚み自動制御

近年のシート押出成形では、厚みの自動計測から偏肉の自動制御までが行われるようになっています。厚み計測にはβ線計測、超音波計測、エアーマイクロメーターなどが使用されます。これらの計測結果は全幅でコンピューターにフィードバックされ、シートの各部分の厚み調節が行われます。多数取り付けられたリップ調整ボルトはヒータ加熱と空気冷却によって伸縮させられ、厚み調節が行われます。この装置により、製品厚みの均一性が向上し、材料の節約、スクラップの減少、および生産性の向上が実現されます。


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