7-1 パイプ、チューブの押出成形


押出機とパイプ用ダイ

パイプの押し出しには、一軸機と二軸機が使用されています。硬質PVC(ポリ塩化ビニル)には主に二軸機が使用されますが、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS、ナイロン、軟質PVC(ポリ塩化ビニル)などには主に一軸機が使用されます。

一軸機と二軸機の使い分け

  • 二軸機: 硬質PVC向け。高い押し出し圧力と精度が求められる。

  • 一軸機: PE、PP、ABS、ナイロン、軟質PVCなど向け。比較的低い押し出し圧力で十分な押し出しを実現。

パイプ用ダイ

パイプ用ダイには、主に以下の2つの種類が使用されています。

1. ストレートダイ

  • 適用: 一般的なパイプ成形に使用。

  • 特徴: ストレートな形状で、スパイダーマークが発生する可能性がある。

2. クロスヘッドダイ

  • 適用: オレフィン系樹脂のパイプ用ダイとして主に使用。

  • 特徴: ダイ内部に水冷装置を取りつけることができ、スパイダーマークの発生が少ない。

これにより、パイプの成形においては、素材や要求される仕様に応じて適切な押出機とダイが選択されます。

パイプ成形ライン

パイプ成形ラインでは、サイジングダイによって正規の寸法に冷却固化されたパイプが、引取機で引き取られ、その後切断または巻取りが行われます。以下に、パイプ成形ラインの主な要素と機能について説明します。

冷却水槽

冷却水槽は一般的に水冷式が多く、水温の変化を保ちやすいように、2~4つに槽が区分されています。これにより、適切な冷却が行われ、パイプが寸法通りに固化されます。

引取方式

  1. ゴムロール方式: 数組のゴムロールでパイプを挟んで引き取る。

  2. キャタピラ式コンベヤー方式: 2組のキャタピラ式コンベヤーでパイプを挟んで引き取る。

  3. Vベルト式コンベヤー方式: 3~6組のVベルト式コンベヤーでパイプを挟んで引き取る。

これらの方式は、等速度でパイプを変形させず、一定に引っ張ることが求められます。

引取機

引取機は、パイプを引き取り、その後の処理に進める機械です。異なる径や素材のパイプに対応できるよう、適切な引取機が選択されます。

コイル巻装置

細径の軟質PE(ポリエチレン)パイプや軟質PVC(ポリ塩化ビニル)パイプは、コイルに巻き取ることがあります。コイル巻装置は、巻き取りを効率的に行うための装置です。

定尺切断

硬質PVC(ポリ塩化ビニル)パイプやPP(ポリプロピレン)パイプは通常4mに定尺切断されます。この切断作業は、連続切断と取り出しを同時に行なうのが一般的で、パイプの引取速度と同調して切断が行われます。切断刃物には回転丸鋸刃が一般的に用いられます。

パイプ成形ラインは、これらの要素が連携してスムーズな製造を実現しています。

多層ダイと近年の進歩

多層ダイは、パイプの内外に複数の層を持たせることができるため、異なる特性を持つ樹脂を組み合わせ、パイプの性能や特性を向上させることが可能です。近年、多層ダイにおいて以下の進歩が見られています。

  1. 高機能多層ダイの開発: 従来よりも複雑な構造や高い機能を持つ多層ダイが開発され、より高度な製品の製造が可能になりました。例えば、異なる樹脂層の組み合わせにより、耐熱性、耐薬品性、ガスバリア性などが向上しています。

  2. プロセス制御技術の向上: ダイの設計や製造技術が向上し、微細な肉厚の調整が可能になりました。これにより、異なる樹脂層の均一な厚み管理が実現され、製品の品質が向上しています。

  3. 自動制御技術の導入: 多層ダイの押出ラインにおいて、自動制御技術が導入されています。これにより、製造中のプロセスをリアルタイムでモニタリングし、製品の一貫性や品質を確保することが可能です。

  4. 環境への配慮: 環境への影響を考慮した素材や製造プロセスが導入されています。再生可能な素材の利用や省エネルギーの取り組みが進んでいます。

これらの進歩により、多層ダイを使用したパイプの製造は、より効率的で高品質なものとなり、異なる要件に適した製品を提供することが可能になりました。

厚み計測と偏肉の自動制御

以前は切断後に押し出したパイプの厚み計測を行なっていましたが、最近は押出成形中の冷却水槽(真空サイジング水槽の中)で厚み計測を行なうようになりました。また、パイプの偏肉調節はセンタリングボルトの調節によって行なうのが一般的ですが、最近はすべて自動で調節できるようになってきています。

自動でパイプ全周の肉厚を一定に保つ流れは以下の通りです。

  1. 超音波厚み計によって円周8点を計測

  2. 計測値をコントローラーにフィードバック

  3. 同時に8分割されたノズルヒーターの各温度をコントロール(厚肉部分はヒーター温度を下げ、薄肉の部分は温度を上げる)

  4. 上記により、肉厚を一定に保つ。

また、機械式のダイセンタリング法もあります。サーボモータでボール接手で取り付けられたスリーブの移動を行ない、樹脂の流れ挙動を利用してパイプ周辺に添ってダイの各部分の温度を調節することにより、肉厚制御を行なうものです。


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