19-2 押出成形不良の現象と対策(後編)
サージング (脈動) - Surging
押出成形において、材料の送り出しが円滑でなく、サージ(大波)のように脈動し、製品の形状や寸法の周期的なムラを招くことをサージングといいます。この現象の発生原因は以下の通りです。
負荷によるサージング現象
スクリューの1回転の間の負荷の変動(ペレットの食い込み変動、ホッパ、スクリュー設計などの不適切による)により生ずるもので、スクリューの回転数と相関関係があり、サージングの大きさも一定の形でおこります。ブレーカープレートのない場合も起こりやすい。
押出機のフィードゾーンでの材料の軟化点の不安定に起因するもの
スクリューの設計や、材料の溶融物性、滑性などの不適切性により起こります。
シリンダ(バレル)やダイの温度の調節不良
比較的長いサイクルで起こり、溶融温度が変動し圧力が変化します。特にパウダー成形の場合、ホッパ部のシリンダ(バレル)が過冷却されると起こりやすい。
混練不充分のため、溶融温度や押出圧力が急激に変化する場合。
これらの場合、押出機のヘッド圧を上昇させると改善できます。均一ブレンドとL/D(有効長)の長いスクリュー(L/D28~30)を使用し、適切な温度コントロールが必要です。
プレートアウト (Plate Out)
プレートアウトとは、押出成形でブレーカープレートの中心部からダイにかけて、安定剤、滑剤、着色剤などの一部、またはそれらの酸化、分解、化合などによる生成物が付着する現象を指します。
プレートアウト発生の要因
安定剤、滑剤、着色剤などPVCとの相溶性の少ないものは樹脂から追い出され、金属面に付着する。
一般に極性物質は金属に付着しやすい。すなわち金属石鹸はその一つで、金属表面とは極性端で結びつきやすい。
電気陽性度の強いBaが最も強く、次にCaがプレートアウトを生じやすく、Cd、Znのように陽性度の低いものは、プレートアウトの傾向が少ない。
材料に水分を含んでいるとプレートアウトしやすい。
プレートアウトの解決法
Ba-Zn系の安定剤では、Baの比率を小さくする。
Baの多いCa-Ba系安定剤では、極性の少ないZnを少量添加するとよい。
有機錫系安定剤を少量添加するとよい。
懸濁重合樹脂に乳化重合樹脂をブレンドして使用すると好結果が得られる。
材料をよく乾燥する。
目ヤニ
押出成形加工において、いわゆる"目ヤニ"と称せられる現象があります。シリンダ(バレル)、ダイ内面に樹脂の熱劣化物が目ヤニのように付着し、加工中にダイ出口に流出固着し、製品の表面を傷つけたり、条をつけるなどのやっかいなトラブルを起こすことがあります。
この原因はまだ明らかにされていないが、前述のプレートアウトが大きな原因の一つであると考えられます。さらに金属と樹脂との接触面の境界膜が、加熱により熱劣化して流動性を失い、次第に金属表面に蓄積していくためであるとされています。樹脂圧力をダイ先端部にかけることや材料をよく乾燥させることも1つの解決策であるとされています。
ブルーム (Bloom)、またはブリード (Bleed)
プラスチック製品の表面に、その主成分であるポリマーとは異質の配合物質が浸出してくる現象をブルーム、ブリード、または浸み出しといい、俗には吹くや泣きとも言われています。この現象はプラスチックの表面性改良において非常に嫌われます。例えば、塩化ビニルの場合、相溶性の小さい二次可塑剤を多量に使用したり、軟質配合に有機錫マレートを使用した場合、あるいは脂肪酸アミド系の滑剤を多量に使用した場合はこの傾向が著しいです。
一般にブルームのテスト方法として、混練したシートを60℃の温水中に浸漬して、15~20時間でブルームの現象がなければ問題はないとされています。極端な場合は数時間以内にブルームの現象が現れることがあります。
マイグレーション (Migration)
ゴムや可塑化プラスチックでは、配合された可塑剤、着色剤、老化防止剤、硫黄などが、同一の配合物内または相接する2つの配合物間で高濃度から低濃度へ移動する現象をマイグレーションといいます。一般には移行性とも呼ばれています。プラスチックフィルムを食品包装として使用する場合、配合剤のマイグレーションは衛生上の問題から見て重要です。軟質PVCとポリスチレンの可塑剤の移行は特に知られています。
一般的に、科学的に安定なポリマー(例:ポリエチレンなど)に対しては移行性が少ない傾向がありますが、表面活性の強い物質(配合ゴム、セルロイド)に対しては移行性が強いです。硬質PVCに対しては、重合度が高くなるほど移行性が少なくなります。一方でPVCのコーポリマーに対しては非常によく移行します。また、軟質PVCにおけるDOPと高分子可塑剤の移行性を比較すれば、高分子可塑剤がはるかに移行性が少ないことがあります。