12-1 1軸延伸と2軸延伸技術(収縮チューブを含む)
延伸の原理
延伸とは、熱可塑性プラスチックを軟化温度と溶融温度の間で縦または横方向に延伸し、分子に配向性を付与し、冷却によってこの配向性を定着させる技術です。この配向技術は延伸技術とも呼ばれます。
原理の説明
初期状態: 分子は完全に無配向性です。
1軸延伸: 分子が一方向に引き伸ばされ、引張り方向に対して平行に配向性が生じます。
2軸延伸: 1軸延伸されたものを直角方向にさらに延伸し、2軸配向が完成します。両方向への延伸率はそれぞれ3倍であり、したがって延伸フィルムは原シートに比べて厚さが1/9、面積が9倍になります。
延伸シートを加熱すると、寸法的には原シートにほぼ近い形状まで復元されます。この技術を利用して、1軸延伸ではスプリットヤーンやモノフィラメントなどが、2軸延伸では2軸延伸フィルムや熱収縮フィルム・チューブが製造されています。
1軸延伸とスプリットヤーン
1軸延伸では、ほとんどの製品がフィルムの1軸延伸によるスリットヤーン(フラットヤーン)およびスプリットヤーンの製造です。これには湿式(熱媒槽方式)、乾式(熱ロール方式、輻射加熱方式、熱風循環方式、および加熱板方式)があり、ロール間の周速差によって延伸倍率が決まります。フィルムの幅が狭いときは、比較的簡易な装置で延伸ができますが、1軸延伸では延伸方向に開裂しやすくなります。
PPのスプリットヤーン製造プロセス
製膜: インフレーションまたはT-ダイ法で厚さ30~100μのフィルムを成形します。
スリット: テープ状にフィルムをスリットします。
1軸延伸: ニップロール間で8倍前後に強制延伸します。
スプリット: 針やブラシで刺激して不連続にスプリットします。
巻取り: 単糸が編目状につながったスプリットヤーンを巻取ります。
このスプリットヤーンは燃糸強度、低伸度、風合い、光沢が特長で、ロープ、漁網、重袋、またはカーペット基布などに利用されます。新しい用途として、スプリットヤーンをタテ・ヨコに展開して重ね合わせ、紙、プラスチックフィルムとラミネートした高強度の複合材も市販されています。
モノフィラメントの製造装置
ロープや防虫網などの素材として使用されるモノフィラメントは、以下の製造装置を使用しています。
押出機: 溶融したプラスチックは円形ダイから細いひも状に押し出され、垂直に降下して冷却槽に入ります。
ゴデッド・ロール: フィラメントはここで束ねられ、一定速度でダイから引き出されます。
オリエンテーション・ロール: ゴデット・ロールとの周速の差で、6~10倍程度に延伸され、オリエンテーションが与えられます。
熱処理(アンニーリング): 収縮を防ぐために、延伸温度よりも2-3℃高い温度で熱処理が行われます。
巻取り: 最後に、ボビンに1本ずつ個別に巻き取られます。
この際、延伸は熱風炉または温水槽内で行われる方法があります。
2軸延伸フィルムの製造装置
2軸延伸フィルムの製造法には、逐次延伸法と同時延伸法があり、同時延伸法はフラット法とチューブラ法に分かれます。以下に代表的な方法について説明します。
逐次2軸延伸テンタ法
この方式は、クリップによる把持機構が必要で、大型な装置が必要ですが、クリップ把持によって強制的に延伸されるため、高い延伸応力がかかる樹脂でも比較的容易に延伸でき、汎用性があります。生産性向上のための広幅、高速化が進めやすい特長があります。
フラット式同時2軸延伸法
この方法は縦方向にクリップ間隔が広がるため、延伸フィルムの両端に近い部分での配向の不均一を生じることが避けがたい欠点があります。ただし、縦・横の配向のバランスが取りやすく、強度的に優れた品質のフィルムが得られるという利点があります。
チューブラ式同時2軸延伸法
この方式には静圧型と流動圧型があり、一般には静圧型が多く採用されています。チューブラ式延伸法は、フラット型同時延伸と同様の利点を有しますが、チューブの安定化に問題があり、これがフィルムの厚薄精度および高速化を制約する大きな要因となっています。